62.楓華との公開面前こども作りで妊娠を期待するミルの性知識は終わってる
それから道場に銀髪女性クロスと金髪幼女リールの2人が来て、最初は自己紹介を兼ねた挨拶が交わされた。
そしてミルが指導役だと教えたとき、まだ幼いから甘く見られるかもしれないと楓華は心配していた。
なにせクロス達はミルの実力どころか性格すら知らないから、まず見た目で判断するのは当然だ。
きっとミル自身も我が強いとは言え、あからさまな年齢差を気にする事だろう。
だが、なぜかクロス達は一切の疑問すら覚えず、むしろ自然なくらい快く受け入れる。
しかもミルの言葉に対し、真面目な心意気が伝わってくる返事までしていた。
これほど従順で熱心な態度に楓華はちょっとした意外性を感じてしまい、言い回しに気を付けながら確認した。
「喫茶店ではアタイが教えるって言っちゃったけど、それについてのツッコミは無いんだね?」
この問いかけに対する答えは、普通ならば楓華に関する言葉をかけることだろう。
しかし、クロスは楓華の思考を隅々まで見透かし、ミルに関する答えを口にした。
「どの世界においても、年齢や容姿は実力の指標になりませんよ。例えば、私と居るこの子……。リールが世界で1番の強者だとしても不思議な話ではありませんから」
「ん?もしかして心を読んだ?しっかし、極端な例え話をするね」
「本当に単なる例え話で済めば私も気が楽なんですが……。それより私が伝えたいのは、ミル様を侮ることはありません。実力の優劣が重要視されるのは実戦のみです」
「そっか。それならクロスとミルちゃんに失礼したね。アタイの方こそ侮ってごめん」
「安心してください。この場に、当然の心配に対して気に障ったと怒る人はいません。それより事前に確認しておきたいのですが、こちらの建物は頑丈なのでしょうか?」
「道場のこと?それについては又聞きで申し訳無いけど、巨大隕石が直撃しても無傷らしいよ」
楓華が答えた直後、クロスは誰にも察知できない勢いで震脚した。
それによって雷鳴とは比べ物にならない爆発音が建物内に響いたあと、居合わせていた人達は彼女が床を踏みつけた事に遅れて気が付く。
光りより早く、微かに残っている余韻だけでも破滅を感じさせる恐ろしさ。
そして、これまで感じたことがない衝撃の感覚に楓華は少し唖然とした。
「うっわ、あぁびっくりしたぁ。いきなり何?試したの?」
「驚かせてすみません。惑星が滅ぶくらいの威力で足踏みしました。どうやらエネルギー吸収、または相殺が起きる仕組みになっているみたいですね」
「いやいや。どこまで本気で言っているのか分からないけど、さりげなく星を滅ぼそうとしないでよ」
「大丈夫ですよ。滅ぶ前に全て元通りにしますから。それでは体験レッスンを始めて下さい。よろしくお願い致しますね、ミル様。そしてフウカ様」
改めて挨拶するクロスに合わせ、リールは今の出来事を気にせず「よろしくお願いしまぁす!」と元気よく大声をあげた。
2人とも能天気で悪人では無いのだが、やはり掴みきれない性格に危険性を感じてしまう。
それに合わせて、ただひたすら謎に要注意人物という気配が、前にヒバナから聞いた高位存在に該当する気がした。
それからミルと楓華が一方的に緊張感を持つ体験レッスンが始められる。
慣れない指導というのもあるが、直前に惑星破壊クラスの攻撃をされていたら警戒するのも仕方ない。
しかし実際に警戒していたのは1分足らずでの事であり、いざ稽古が始まった直後には怪しい気配が漂っていた。
「あっ、ぁん……。フウカお姉様、そうそう上手です。もっと強くしてもいいですよぉ。遠慮なく、ミルの体を好きに扱って良いですから。ふっ、あはっ」
ミルは蕩けた目つきを浮かべながら、おねだりするように甘い声で囁く。
これに楓華は動揺を覚えつつ、お互いの体を密着させながら弄った。
するとミルは彼女に触れられる度、より色気ある声を漏らし、艶っぽい表情になる。
どうやら小さな体の内側から湧く衝動と快感が抑えきれないようだ。
それからミルは華奢な身体が目立つ姿勢となる仰向けにさせられた後、股をゆっくりと広げながら床へ押し倒される。
こうして準備が整い、楓華は行動を起こす前に訊く。
「ミルちゃん、始めるからね?」
「はぁはぁ……。うん。ちょっと怖い気もするけど、フウカお姉様のことを信じているから……。ミルの全部を委ねるよ」
「それじゃあ、全身の力を抜いて。もし痛くなったら止めるから」
楓華はミルの抵抗が弱くなった瞬間を見極め、より奥深く慎重に体を押し込んだ。
同時にミルの眉間に小さなシワが浮き上がるので、反射的に強張ったことが一目で分かる。
まだ汗ばみはしてない。
だが、ミルからは浅く荒い呼吸とフェロモンの匂いが発せられていて、強い刺激による緊張状態へ陥っていることが五感から伝わってきた。
「ミルちゃん、どう?痛くない?」
「フウカお姉様ってば、すっごぉ……。んん~、あひぃ……!」
「我慢しきれずに喘ぐなんて、カワイイね」
「だって、幸せで気持ちいもん。あぅ……もうこれ、絶対に赤ちゃんができちゃうよぉ」
本能の赴くままにミルは喋る。
しかし、その言葉を聞いた途端に楓華は気まずい表情へ変わった。
「はっ?いや~、2人1組の柔軟運動で赤ちゃんはできないんじゃないかなぁ」
楓華はミルの思考が異常になっていると思いつつ、なるべく強く突き放さない言い方で教えてあげた。
実際、彼女はミルの柔らかい間接を伸ばす手助けをしているだけだ。
ミルの過敏な反応を除けば、誰が見ても至って健康的で健全な準備運動。
それなのにミルは続けて大胆な発言を繰り返す。
「でもね、女の子同士で子どもを作る場合、仲良くしたら妊娠するんだよ?だからミルは毎晩フウカお姉様と子作りしていて、最後はキスしてママになるの」
「お、おぉ……。まさかいつも添い寝してくるのって、そういう目的だったの?初めて明かされた衝撃の事実すぎるなぁ」
「ねぇミル、ちゃんと妊娠できたかな?お腹が熱く満たされているから、沢山の愛情が届いているよね?フウカお姉様が頑張ってくれたおかげで、新しい命がお腹に宿ったよね?」
もはや流れに付いてくことが難しい会話になっていても、楓華は気合いで調子を合わせよとする。
しかし彼女が答える前に、ミルは恍惚とした表情のまま喋り倒した。
「うぅ……。ミルが毎日ケアしている大切なところも、もうドロドロになっちゃった。フウカお姉様の口で綺麗にして欲しいよぉ。女の子にとって大事な所をフウカお姉様に……ねぇお願ぁい?」
「斬新なキスの求め方だね。本当に口の周りがヨダレだらけだよ」
「だって幸せ過ぎて、全身に力が入らないだもん。だけどね、もう溢れてきそうなくらい注がれても、ミルってば欲しがっちゃうのぉ。ドキドキが止まらなくて、ずっと我慢できないもん」
「あっはは、ミルちゃんは欲張りだ」
「うん欲張り!だから、いっぱいまだまだちょうだい。ミルは何をされても嬉しいから、ね!満足するまで、ほら早く~!」
唐突に始まるミルの全力ワガママに、楓華はなんと返せば正気に戻るのか必死に考えた。
一方で2人を手本として見ていたクロスは静かに眺め、どのように声を掛けてあげるべきか熟考していた。
これまで遭遇してきた危機的状況より、比べ物にならないほど判断が難しい。
そしてリールの方は恥ずかしそうに「きゃあ~!」と言いながらも楽しんで観賞しており、クロスに声をかける。
「アレ折檻だ!大好きな宇宙ドラマでやってた!リール、本物を初めて見た!感動する!」
「あながち間違いでは無いかもしれませんね。それにしても種族存続のために発情するとは言え、時と場所を選ばない種族は隙だらけで大変そうですね。同情します」
「同情……。おぉ、道場だけに?」
「クフッ……!あぁリール。それ、どこで覚えました?けっこう好きですよ」
「宇宙ドラマ!あと前にリールがクロスにサプライズキッスしたのも、宇宙ドラマでやってた!」
「なるほど、そうでしたか。どうやら駆け引きとユーモアを養えるようですね。次は私も一緒に宇宙ドラマを見て勉強します」
「やったー!リール、鑑賞会だぁい好き!」
何でも大好きなリールと、実はどんなお笑いネタにも弱いクロス。
そんな2人だから気が合い、仲良く会話が盛り上がってしまう。
対してミルと楓華も別の意味で大盛り上がりしてしまい、本格的な稽古が始まるのは更に数十分も後のことだった。




