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47.足湯を楽しむ姉妹と借金地獄に見舞われる楓華

強化ゴーレムを退(しりぞ)けてから数時間後のこと。

楓華と3姉妹、更に鬼娘モモを含めた4人は足湯を利用して談笑を楽しんでいた。

その足湯の土台と浴槽は宝石類の鉱物や天然大理石を使用して作られているため、(きら)びやかな雰囲気が満ちた見た目になっている。

また、既に温泉の循環システムは問題なく稼働しており、足湯を楽しむなら充分な環境が整っていた。

そうして夕焼けで(あかね)色に燃えるヴィム火山を眺めてリラックスする中、ふとヒバナは大きな溜め息を吐いた。


「はあぁ~……、今日も本当に大変な1日でした。地震と戦闘。某にはどれも一生不慣れな出来事です」


ヒバナは緊張感を求められる場面に対して人一倍(ひといちばい)苦手意識が強いので、他の人より疲労が多く(つの)ったのだろう。

楓華はそんな彼女の様子を見て、(いた)わるように褒め(たた)えた。


「お疲れ様、ヒバナちゃん。でも、ヴィム姉と一緒に頑張ったおかげで家は守られたんでしょ?これは武勇伝になるくらい凄い話だよ」


「それとは別に地震対策をしていなかったことが原因で、喫茶店の方は被害を受けてしまって休業になりそうですけどね……。それにヴィムお姉ちゃんと某が使っていた道具は壊れました」


「そっか。まぁ武器って消耗が激しいから都度メンテナンスしないとね。ただ壊れたとしても、モモちゃんなら簡単に修理できるんじゃない?」


楓華が話を振ると、モモは足湯でも端末機器を熱心に操作しながら答えた。


「修理依頼は受け付けますが、有料ですよ」


「え~ケチだなぁ」


「無償で修理を求める方がケチですよ。とは言え、親しい仲なのは事実ですから特別価格にしてあげます」


「やった!やっぱりモモちゃんは話が分かるねぇ~。ところでさ、そうなると火山と温泉についてはお代を請求しないんだ?」


「何を言っているのですか?話題に出さなかっただけで、もちろん費用請求しますよ。これだけ大仕事の依頼に応えたからには、完全無料なわけが無いじゃないですか」


「えっ冗談じゃない系?それってマジ寄りにマジな話?」


「はい、真面目で本気の話です」


モモは至って当然のように話すものの、楓華は目を最大限に見開くほど衝撃を受けていた。

実力で安易に解決できない問題が更に増えてしまった以上、おそらく楓華にとって史上最大の危機だ。

その一方でミルは自分の太ももを揉み(ほぐ)しつつ、足湯の効能を体感していた。


「ミルってば、ちゃんとした足湯を利用するのは初めての体験なんだよね。思っていたより全身が心地よく温まるものだねぇ。もう、お肌がスベスベになっちゃうよぉ~」


安堵の溜め息が混じったミルの何気ない感想。

ちょうど肩を並べて座っていたヴィムは少女の独り言が耳に入り、小さく笑った。


「あらあら、ミルったら年寄り臭いことを言うのね」


「むむっ、美容と健康は年齢に関わらず気にかけるものでしょ!特にミルは姉妹の中で誰よりも乙女心を大切にしているもん!」


「ふふっ、そうね。それにミルは体を張ったから、アフターケアを念入りに行う必要があるわ」


「そうそう、ヴィムお姉ちゃんの言う通り!頑張った自分のために体を大切にしないとね!」


「それじゃあ、頑張った妹のために私がマッサージしてあげるわ。ささやかなご褒美よ。ほら、手をモミモミするから両手を出して」


「えっと……こう?」


ミルが頼りない動作で両手を差し出すと、ヴィムは妹の小さな手を揉み(ほぐ)し始めた。

少女の手は意外にも柔らかく、きめ細やかな肌だ。

山を破壊するほどの怪力を持ち、更に凄まじい修練を積んできたとは思えないくらい年相応の女の子らしい。

むしろ普段からケアしていることが分かるほど綺麗の一言に尽き、ヴィムは丹念に揉み続けながら感心した。


「仕事で水洗いするから私も気を遣っている方なのだけれど、それでもミルの手は一流の美しさね。つい溜め息が漏れるほど芸術的だわ」


「それって褒めてるつもりなの?揉みながら言われると変態さんっぽく聞こえるよ」


「つまりド変態さんになってしまうくらい、ミルのスベスベお肌な手には魅力が溢れているわけね」


「何一つ弁明になってないどころか、余計に悪化して聞こえるよ。っと……、ヴィムお姉ちゃんのマッサージは相変わらず気持ちいいね」


「ふふっ、当然よ。私がメイドだった頃、伊達(だて)にツボ押しマッサージ仙女と呼ばれていたわけじゃないわ」


「おぉー仙女!ヴィムお姉ちゃんってば、マッサージで伝説の女と呼ばれるなんて凄い!」


ミルは足湯とマッサージでいつもより気分が朗らかになっており、心の底から能天気に感嘆の声をあげた。

しかもヴィムも本気で自慢のつもりで言ったらしく、分かりやすくご満悦な表情だ。

こうして皆が心身ともに休息の一時を楽しんでいるとき、大地の精霊と名乗った褐色肌の小さな妖精が飛んできた。


「どうダ。我ら一族の心血と技術が注ぎ込まれた究極の癒し湯ハ?」


この問いかけに、足湯を堪能している一同が「最高~!」と声を揃えて答える。

すると彼女たちの喜んだ反応に充実感を覚えたようで、大地の精霊は湧き上がる高揚感を無理に抑えながら言った。


「いやはや、やはりそうだろうナ。なにせエレメントナノマシン自体に高い美容効果と治癒能力が備わっている上、湯の効能まで引き上げられていル。まさに万能薬にも(まさ)る恵みの湯だろウ」


ざっくりとした説明だが、この足湯にはナノマシンが混入しており、そのおかげで万人が満足できる温泉になっているわけだ。

そうとなれば村の観光名所になることは間違いなく、モモが早々と手回しを済ませていた。


「さて、今しがたネットワークを通じた宣伝をしておきました。SNS関連、動画、村の公式サイトの立ち上げ。私が調査した詳細のデータも掲載したので、これで注目を浴びるきっかけは作られました」


「我ら一族も総力を()げて口コミを広げてやろウ。観光して称賛する者が増えるほど、我らの存在価値と力が認められるわけだからナ。それとあの人工ミルクとやら、我らの免疫力を向上せていタ」


「適応力を得たきっかけになったのは嬉しい誤算ですね。これならば力が衰えた精霊も回復し、ゴーレムの姿を借りずとも自由に外を出歩けるでしょう」


「我らが温泉を管理するだけで、豊かな地質の火山と人工ミルクを利用できる。まったく素晴らしい友好関係を築けたものだナ。これこそ……嬉しい誤算ダ」


大地の精霊は、ようやく心を許した態度で笑ってくれた。

実は一通りの騒動が終えた後、すぐにお互いメリットある約束を結べたのは楓華が説得した結果だ。

優れた力を持ちながらも彼女の慈しむ姿勢に相手は感銘を受け、考えを大きく改めてくれた。

こうして村の安寧と発展に大きく貢献した楓華だが、今はモモからの費用請求をどう支払おうかと、難しい顔で熱心に頭を悩ませている最中だった。

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