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46.一筋縄ではいかない強大な敵。それでも楓華の底力はまだまだ深い

ナノマシンの暴走により再び出現し、劇的に強化されたゴーレム。

楓華は早急に解決しようと瓶から精霊を解放しながら声をかけた。


「ねぇスキルでコントロールできないの?」


「やってみるが、あまり期待しない方が良イ。なぜなら我のスキルを受けつける存在から別物に変貌しているからナ」


「うわっ、そういう算段で攻撃したアタイのせいになるじゃん。あぁ、もういいよ。なんとかして全力で打ち倒すから」


楓華は軽い準備運動のように手足を振ったり伸ばした後、真剣な表情で再度戦闘に(のぞ)んだ。

立て続けの戦闘で体は既に温まっている。

だからコンディションは限りなく最高の状態であって、これまで以上の力と速度で巨大ゴーレムへ単身突撃した。


「てやっ!」


瞬く間に接近した楓華は鋭く跳躍し、猛烈な勢いの拳を敵の体に叩き込んだ。

だが、ゴーレムの体が信じられないほど頑強で重い。

凄まじい打撃音が響くだけで、さっきまで容易に破壊していた威力が通用していない。


「なにこれ。変化し過ぎて超硬合金みたいになってない?ありえない変わりないようなんだけど……うわっ!?」


超硬合金と化した巨大ゴーレムはダメージを受け無くても楓華のことは脅威だと認識したらしく、素早い反応で彼女を蹴り飛ばしていた。

それによって楓華の体は空高く飛ばされ、この状況は危険だと察知する。


「やばい。ナノマシンって言うだけあって細胞1つ1つが自立して行動している。しかも活性化しているから反応速度が桁違いになっているし」


今の攻防だけで楓華は自分なりに解析を進め、戦い方を組み直そうとした。

しかし、今のゴーレムは考える余裕すら与えてくれない。

なぜか敵は重い巨体であるにも関わらず柔らかく浮遊し、まるで翼があるかのように空を飛んで来ていた。


「へっ?」


自分が知るスキルの概念が早くも覆されているように思えて、もはや驚きより疑問しか出てこない。

そんな気持ちで思考が止まりかけた矢先、相手は明らかに体の構造を駆使して楓華に打撃を放ってきた。


「やばっ!」


もちろん彼女は防ごうとするが、あまりにも全体の大きさが違いすぎる。

そのせいで無抵抗のまま直撃したと変わり無く、当たった瞬間には地面が抉れるほどの勢いで叩きつけられた。

それでも楓華は無傷であって、相手の更なる成長に戸惑っていた。


「くっそ~、武術まで学習しているじゃん。まったく本当に優秀だね。って、今度は何さ」


楓華は土埃が巻き起こる中で立ち上がると、空を浮遊し続けているゴーレムは片腕を上へ突き伸ばす。

既に大きさが把握できないほど巨体のゴーレムが腕を上げれば、それは大気園にまで手が届くことだろう。

そして最大の問題は新たな攻撃手段で、どう見ても真っ赤に燃えあがる隕石が楓華に向かって落下してきていることだった。


「えっ、引き寄せてね?マジでどういう進化を遂げたら、こうなるのさ。こんな一瞬であれこれ能力を身に付けてインフレしないで欲しいな」


そんな感想が出てしまうのも仕方ないが、呑気に話している場合では無い。

そのことを分かっている彼女は辺りを見渡し、偶然にも近くに落ちていた薙刀を拾い上げた。

これはミルが使っていた武器で、掴まった際に弾き飛ばされたものだ。


「アタイ、実はアレンジが得意なんだよね。時雨(しぐれ)式ミル流武術・スパッと崩牙(ほうが)!」


楓華は回転を加えた斬撃を振るう。

彼女がまともに武器を使用するのは、この異世界でこれが初めてだ。

だから彼女自身もどれくらいの威力が発生するのか知らなかったわけだが、良くも悪くも本人の想像を軽々と上回った。


まだ距離が離れている隕石どころか上空に留まっている巨大ゴーレムを一刀両断し、挙句の果てには一番近いとされている他の惑星が揺れるほど。

それほど絶大な攻撃を受けたゴーレムはバランスを崩しかけたが、瞬時に結合して再生する。


「ありゃりゃ。復活する速度も格段に上がっているね」


楓華は喋りながら更に狙いを精密に定め、より効果的な攻撃を編み出そうとする。

対してゴーレムは破壊された隕石の破片を引き寄せ、別の形状を造り出していた。

その造り出した物の見た目は槍であり、楓華の攻撃から武器の扱いを学習した事は一目瞭然だ。


「おー。さすがにエネルギーは無限ってわけじゃないはずなのに、どんどん強くなるね。そんな可能性がある物を台無しにするなんて、アタイの心が痛むよ」


楓華が悠長に独り言を漏らしていると、ゴーレムは大きく構えて岩の槍を全力で投擲(とうてき)した。

敵の狙いは当然抵抗を続ける彼女だ。

関係が無い遠方の雲まで振り払い、隕石より深刻な被害を与えることは確実の極悪な投擲攻撃。

それに対して楓華は意外な反撃を行う。


「申し訳無いけど、武術ってのは攻撃だけじゃないんだよね」


楓華は岩の槍が自身に触れかける直前、薙刀を流麗かつ柔らかく振るった。

すると岩の槍の軌道が()れるどころか、先端が完全に方向転換して巨大ゴーレムの方へ向かっていた。

勢いを利用し、綺麗に受け流すことで打ち返しきるという曲芸だ。


「反撃や防御技も武術の醍醐味(だいごみ)でしょ。それにアタイって、ミルちゃんに究極の武が扱えるって見栄を張っているからさ。これくらいはできないと」


ちょっと得意気に楓華が語る一方、岩の槍はゴーレムに直撃していた。

ただダメージが浅いのか、体の崩壊は微塵も起きてない。

しかし、それすらも楓華の計算通りでゴーレムの体は槍に押され続けていた。


「ちなみに私の力も上乗せしたから、そのまま宇宙観光を楽しんで行ってよ。温泉の後においしい食事。それから運動して綺麗な場所を観光って最高の旅行になるね。えへへっ」


案外、楓華は最初から大きな脅威だと捉えていなかったのか、すぐに楽し気に笑う。

瞬時に戦い方を変えて敵を無力化する様は、単に彼女の戦闘能力が高いだけでは無いという表れなのだろう。

そして肝心のゴーレムは文字通り星となって宇宙へ飛んでいく。

何よりも今は本能プログラムに突き動されるだけの存在だ。

そのため目の前に居ない楓華たちの排除や危険な場所への帰還など、わざわざ危険を冒す行為は実行されないのだった。

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