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45.ナノマシンが暴走して世界がヤバい

「さてと……」


「あっ、フウカさん」


ほぼ瞬間移動と変わらない速度で楓華がモモの隣に到着するが、もはや少女は驚かないくらい慣れきっていた。

それより肝心の犯人を問い詰める必要があって、楓華は瓶内に押し込まれた妖精から事の真相を訊こうとする。


「戦ったりしていたけど、一応初めましてになるよね。かわいい女の子の妖精さん」


「くっ、妖精とは何ダ!我は大地の帝王、そして大地を(つかさど)る精霊ダ!己の常識で我を女と呼ぶのは勝手だが、そこだけは譲れン!」


ぎこちない口調に加え、やや舌足らずな声で相手は威張り散らした。

いよいよ抵抗の手段が失われているのに、(いま)だ敵対心を剥き出しにして威勢がいいのは感心できる。

対して楓華は呆れたり見下したりはせず、なるべく相手の意図を汲み取って話し方を合わせた。


「それじゃあ大地の守護神である精霊さん。どうして攻撃を仕掛けて来たの?」


「被害を受けて反撃するのは当然!そして民を守るのは王の責務ダ!」


「うんうん」


「そもそも同族の精霊たちは、こちらの世界に来てから衰弱していル。なれば、我は王として同族が存続できる領土を獲得しなければならなイ!」


「つまりアタイ達と同じく異世界転移に巻き込まれた口だね。そして地中で耐え忍んで生活をしていた所をアタイが邪魔しちゃった。それに頼れる存在が居ないから、自分達の力で生存競争に勝つしかないって判断かな」


楓華は憶測を言いながらモモに目配せする。

その仕草にモモは気が付き、自分が目撃したモノを報告した。


「私の機器で調査したところ、視認不可のエネルギーを食糧にしている特殊な種族体系でした。地中には(あり)の巣に似た空間が多く散見されましたが、合理性が欠けた構造の住処で生物学的な定義に当てはまらない存在と言えます」


「独自の文明と進化が築かれていたわけだね」


「はい。私からすれば非常に興味深い文明ですよ。独自技術のナノマシンを培養し、それを活用して自分が生きられる環境に改善する。これらを実現させた技術力の高さにも驚きますが、それより知能の高さに驚かされました!」


そう語るモモの目は心なしか輝いており、かなり早口気味になっていた。

これに楓華は察するものがあって呟く。


「モモちゃんの研究オタク魂が燃え始めているね。とりあえず話を戻して、ねぇ大地の精霊さん」


「なんダ」


「もう既に言った事だけど、こちらから危害を加えるつもりは無いよ。もし被害が出ていたなら誠心誠意を込めて謝る。でも、元々は不慮の事故だったと理解して欲しいんだ」


「ふん。そこまで言うなら許してやらなくも無いナ」


「おっ、少しは冷静に話を聞く気になってくれた?」


「改めて考えると、対話が可能なら交渉の余地があるという事ダ。ただし、お互い信用できないことには変わりなイ。それならば、もっと審議を重ねて慎重に事を進めてだナ……」


「あー、ごめん。そういう話し合いは色々と無理かな。別にアタイは人類代表ってわけじゃないし。とにかく落ち着いて欲しいってのが一番の頼み事だからさ」


「むっ。なんだ、この軽薄な女ハ。どこまで本気で言っているのか読みきれんナ」


大地の帝王を自称していた精霊は、楓華のあまりにも自由奔放な性格に戸惑いを覚え始めた。

きっと真面目に生きてきた上の立場の者ほど、彼女の思考を掴みきれなくて困惑することは避けられないだろう。

しかも、異様に能力が高いから楓華の一言一言を軽視するわけにはいかないという点が厄介だ。

そのため精霊が受け答え方に悩むとき、急にヴィム火山が爆発音を発して噴火する。


「なんダ?」


「えっなになに何事なの?」


その場で話し合っていた3人は驚き、火山の方へ一斉に視線を向ける。

すると、どういうわけか巨大ゴーレムが歪な姿ながらも再び立ち上がり出していた。

これには楓華が真っ先に驚愕して声を荒げる。


「ちょちょっちょっと!もしかしてアタイ、気に障ることを言った!?それなら謝るから、これ以上の争いはマジで不毛だから止めようよ!ほら、瓶から出してあげるからさ!」


「いいや、我は何もしてなイ」


「はぁ!?嘘でしょ!じゃあ、どうしてまたゴーレムが復活しているの!?」


「もしやエレメントナノマシンにバグが発生して、暴走しているのかもしれんナ。当然エラー対策された物ではあるが、この一連の戦闘は明らかに想定を超えたものダ。そしてあれらはデータリンクしているため、バグが連鎖的に広がっタ」


「説明は求めたけど、そんな冷静に解説しないでよ!」


まるでコントのように言葉を掛け合う2人の隣で、すぐにモモは端末を操作して異常の原因究明を進めていた。

そして少女が結果を出すのは早く、ものの数秒足らずで報告してきた。


「今しがた計算しましたが、どうやら人工ミルクが栄養豊富だったのが災いを起こしたようです。あのナノマシンにとって過剰のエネルギー源となってしまい、制御しきれないほ爆発的に増殖して本能プログラムが稼働しています」


「なに本能プログラムって。そんな話、さっきまで一度も無かったでしょ」


「非常時防衛のことで、実行内容は存在が絶えないための繁殖ですね。そして何度も危機に直面したので、より多く繫殖しようと活発化し、膨大なエネルギーを取り込む必要があると判断しているようです」


「つまり?」


「無差別の浸食ですかね」


モモが答えを出した直後、巨大ゴーレムは人工ミルク全てを吸い上げることで強靭な身体を得ていた。

ただ大きくなるだけでは生き残れないと考え、進化を遂げるのは理にかなっている。

普通ならば称賛すべき技術力と生命の神秘だが、今回ばかりは傍迷惑な話だ。

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