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43.助けに来るのはいつだってマイヒーロー

ミルは集中力を保ちながら、再び声をかけた。


「もうおしまいかな?それなら謝って欲しいな」


大地の帝王からすれば、自分より幼い者から投げかけられ続ける挑発。

よって敵は安易に怒りを(つの)らせ、感情任せに強気で言い返した。


「愚か者めガ!その幼き(よわい)から不敬しか知らず、ここまで心身が(けが)れているとはナ!なんとも嘆かわしイ!」


「自分のことを棚に上げて偏見の押し付け。ミルより凄いワガママだね。フウカお姉様だったら暴言を気にかけない寛容さで接してくれるけど、ミルは違うよ。ちゃんとみんなに謝るまで容赦しない」


「アッハハハハハ!謝るのはそちらの方ダ!ただし、謝ったところで我は恐れを知らない愚者を許さないがナ!罪には罰が必要なのダ!」


「ふぅん。まだ優位のつもりなんて、もしかして復活できるからって油断してる?そこまで自慢できるほど万能な力じゃないでしょ」


ミルは相手を屈服させる必要が分かった途端、冷たい表情に戻る。

そして自分の手元に魔法陣を浮かび上がらせ、より高度な技を放とうとしていた。


「中位魔法・世絶えの虚ろ火(ホロウアウト)。そしてミル流武術・転々(てんてん)ドングリ」


「なっ、魔法とスキルの複合ッ……!?」


ミルは武術系統スキルのみならず、魔法術まで卓越していた。

その類稀(たぐいまれ)な才能によって魔法で技を強化することが可能であり、これこそが彼女の真骨頂だ。

少女の炎を纏った鋭い斬撃は物理的な破壊に留まらず、融解と消滅の両効果も発揮して敵の頭を一刀両断する。

結果的に再生するにしても元々あった物質の量が減少しているという状況へ至らせ、相手に復活の限界があることを思い知らせるのだった。


「どうかな、まだ会話できる?」


「がっ……あがが……」


「うわぁ、やりすぎちゃったかな?まぁこの武器って神殺しができる代物らしいから。いくら全身が岩の塊だとしても抵抗できなくなるのは仕方ないよ」


決着がついたと思ったミルは地面に降り立ち、もはや原型を留めてない相手を見て構えを解いた。

何度も復活した敵相手に勝利したと判断するのは、まだ早計かもしれない。

とは言え、無惨な相手の姿を見れば勝敗は明らかだ。

そんなとき、大地の帝王は(いびつ)にほそく笑んだ。


「フハハッ、やはり矮小な生き物は傲慢で愚かだナ」


「まだやる気?って、きゃあ……!?」


ミルは、並大抵の人間なら潰れている力で全身を鷲掴みにされる。

その掴んできた正体は地面から生えてきた岩石の手であり、まるで大地そのものが敵の一部になってしまっている状態だった。

しかも鷲掴みされた拍子に薙刀は弾き飛ばされ、ミルの手元から武器が失われた。


それから流砂に成り果てていたはずの物はあっという間に再結合し、今度は単なる巨人では無く、翼と尻尾を生やした正真正銘の怪物が再誕する。

またサイズも一回り大きくなっているので、おそらく2体の巨人が1つの生命体へ合体したのだろう。

この事態はミルにとって予測不可能であり、何より強烈な違和感を覚えた。


「おっ、おかしくない?ミルの攻撃、武器の効力。どれか1つでも通じれば行動できないはずだよ……!」


「普通の生命体であれば、その通りかもしれんナ。しかし、ご覧の通り我は特殊な存在ダ」


「ミルより弱いのに特殊って絶対ハッタリ……。あっ、もしかして自由自在に変化できるのは……うぐぐぐぅ~」


ミルが喋っている途中、大地の帝王は締め上げる力を強めて握り潰そうとするので苦悶の表情を浮かべた。

当然ミルは抵抗するものの、彼女の並外れた力は高い身体能力を活かす武術の動作あってこそだ。

だから反撃の姿勢を整えられないまま単純な力押し勝負になってしまうと、さすがに力負けしてしまう。

筋骨が(きし)み、間もなく圧殺される。

そう予感したミルが発した声は、痛みによる悲鳴では無かった。


「フウカお姉様ぁ……!」


それは窮地に陥り、救いを求める呼びかけ。

だが、敵はそんな当然の行動を嘲笑(あざわら)った。


「フウカとは、我が叩き潰した小娘のことカ!アッハハハハハ!みすぼらしいナ!死の間際で死者の名をだすとハ!情けない、みっともない、愚鈍で冴えない発想ダ!悪足掻きにもならン!」


敵の心無い罵倒は村に届くほど騒々しい。

だが、突如その大声を遮るように激しい揺れが起きた。

同時に騒々しい掘削音が大地の下から迫り上がってきていた。


「今度は何ダ?我が大地を揺るがす愚か者が他にも居るというのカ」


大地の帝王は、つい数十秒前のミル同様に勝利を確信して油断していた。

それどころか自分を無敵だと思い込み、絶対的な強者だと自信まで抱いていた。

そんな慢心を打ち砕くが如く、楓華が大地に穴を開けて飛び出して来るだった。

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