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25.めっちゃ広いプールで姉妹と遊ぶ

仕事の打ち上げ会場は、(いま)だ稼働し続けている遊園地に選ばれた。

また今回は昨日の宴より参加人数が圧倒的に多い。

仕事仲間が数百人、犯罪組織に捕まっていた数えきれないほど大勢の人達、更に村人たちまで加わっているのでお祭り騒ぎだ。

そのため成功と解放の祝杯は、笑いや歌に包まれた盛大な賑わいとなる。


その一方、楓華たち4人グループは遊園地内を巡り遊んでいた。

メリーゴーランド、空中ブランコ、バイキング、コーヒーカップなど様々なアトラクションを満喫し、今日1日の騒動を忘れてしまうくらい遊び尽くす。

そうして彼女らが行きついた先は超巨大な温水プールであり、それぞれ水着を着用してゆったりとした時間を過ごしていた。

ただ楓華は相変わらず絶好調であって、温水プールを泳ぐサメに騎乗しながらペンライトを振り回している。


「いぇ~い!いやぁ、サメを()したアンドロイドの乗り物って発想は良いねぇ!おまけに空も飛ぶし、愉快で爽快だ!この迫力はアタイ好みだよ!」


楓華は派手な水飛沫をあげながら、プール全域を満遍(まんべん)なく泳ぎ渡ろうとしていた。

しかし、それは広さ的に不可能だと知っているからヒバナが大声で呼びかける。


「ふ、フウカ氏!あまり遠くへ行ったら駄目ですよ!ここのプールは、面積だけで4億平方キロメートルあると書いてありましたから!これは小惑星1つ分ですよ!?」


「そっか、すっげぇなあ!説明されてもイメージつかないけど、ここって広いんだな~!」


「あぁ……あんなことを言いながらフウカ氏がどんどん遠くへ行ってしまう。もし端から端まで往復するとなれば、移動距離が倍の8億平方キロメートルとなってしまうのに……」


ヒバナは浮き輪を使って穏やかな水面に浮いている状態なので、いくら楓華の行く先が心配でも追いかける気にはなれない。

そんな心配性を(こじ)らせた彼女の様子を見て、(きわ)どい水着姿の長女ヴィムが声をかけた。


「フウカちゃんなら大丈夫よ。これだけ広大な空間を圧縮技術で構築しているなら、各要所ごとにワープ装置くらい備えているはずよ。まして遊園地の娯楽施設なんだから」


「遊園地の1アトラクションどころか、ここだけで立派なリゾート地になりますけどね……。これほど巨大な遊泳プールは他に無いですって」


「使われている技術と言い、たしかに富豪やVIP向けの設備よね。設定パネルを使えばプール環境を自由自在に変えられるもの。これ、その気になれば宇宙空間にできちゃうわよ」


「凄いですけど、そのせいでフウカ氏がクジラやサメの群れ出してきて某はドキドキですよ。ところでミルは……?」


ヒバナは底が浅い場所に立ちながら周りを見渡した。

するとミルは水面にプールマットを浮かせて、その上で心地良さそうに居眠りしている最中だった。

しかもプールにお気に入りのぬいぐるみを持ち込んでいるから、もはや自宅で(くつろ)ぎ気分だ。

それは遊んでいる姿というより、明らかに休んでいる状態でヒバナは独り言を呟いた。


「ミルが幸せそうに熟睡しています……」


「まぁ当然よね。普通の人より並外れた能力を持っていても、ミルはれっきとした子どもだもの。もう夜だし、何より朝から忙しかったから誰でも眠たくなるわ」


「疲れているのは分かりますが、よくあの状態で寝ていられますね。某だったら溺れるんじゃないかと不安になりますよ」


「ヒバナはホント心配性ね。しかも自分とは無関係でも過剰に心配しちゃうほど繊細。ただ……その割には彼女のことを素直に受け入れているみたいね。普段の貴女ならフウカちゃんを警戒しているところよ?」


ふとヴィムは真面目な声色で問いかける。

楓華の活躍を直接見届けられ無かったとしても、彼女が出した成果と跡地の状況で実力をより正確に実感したはずだ。

そして楓華が比類なき力を持った人物だと知った今、いつもならヒバナは恐怖感を抱いても不思議では無かった。

しかし彼女は淀みなく、むしろ落ち着いた口ぶりで答えた。


「ヴィムお姉ちゃんの言う通り、フウカ氏の力を改めて知ったときは動揺しました。衝突が避けられない敵だったとは言え、戦う事や倒すことに躊躇(ためら)いが無かったみたいですから」


「そうね。あの決断力、あと相手の勢力に怯まず最後までやり通す意思は凄まじいわ。もうそれは私たち素人では一生理解できないレベルと言えるくらいにね」


「でも、同時にフウカ氏のみんなのために頑張ろうとする気持ちは本物だったと思います。彼女が1人で暴れ回ったのは、よくよく考えれば村のためでしょうから。敵からの注目を一身に浴びるほど、周りは被害を受けずに済みます」


「ふぅん、フウカちゃんはそこまで考えていたのかしらね?」


「もし某の勝手な推測だったとしても、結果的にそうなっていたから良いんです。何であれフウカ氏は円満解決へ導いてくれたわけですから、感謝の言葉しかありません」


「ごもっともね。そしてヒバナは、どう転んでも好意的な解釈をしちゃうくらいフウカちゃんのことが好きなのね。うふふっ」


「うぇっ!?なぁ、なんでそうなるのですかぁ~!?もうヴィムお姉ちゃんのバカ!某はフウカ氏のことは……えっと、新しい姉妹で弟子で……あと親友だと思っていますよ!えいっ!」


図星だったのか、ヒバナは恥ずかしそうに顔を赤らめながらプールの水をヴィムに掛ける。

それにヴィムが素早く反撃すると、すぐにお互い水を掛け合う子どもっぽいコミュニケーションが始まった。

そうして2人が遊ぶ様子を知らない間に目覚めたミルが横目で見ており、小さな溜め息を吐いた。


「お姉ちゃんたちは元気だなぁ」


「えー、遊びたいならミルちゃんも混ざれば?」


「いや、ミルは今こうして波に漂うのが一番楽し……って、フウカお姉様ってば、いつの間に戻ってきたの?」


ミルが視線の向きを変えると、そこには頭にタコをつけた楓華が立っていた。

厳密には生きているタコが吸い付いているので、襲われている最中と言っていいのかもしれない。

どちらにしろミルからすれば異様な姿として映った。

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