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23.それぞれの勇を示し戦意を挫く

楓華は緊張感という感覚を捨ててしまっているのか、敵地へ突撃している状況下でもマイペースに村発展のアイディアを思案する。

そんなとき、彼女の顔にレーザーポインターが照射された。


「ん?」


異変に気が付いた直後、周辺の地形を変える威力の爆発が巻き起こる。

爆発の範囲も決して狭くないので、誰もが彼女を迎撃したと思うことだろう。

だが楓華は乗り物を捨てて、近くの損壊した建物の影へ高速移動していた。

そこから彼女は静かに周りを見渡し、改めて地図情報を確認しながら状況整理する。


「大量の偵察ドローンが飛ばされているね。つまりモニターで見られているってわけだ。そして、まだ指揮命令が機能しているなら司令部を叩くのが一番かな。頭を捕まえれば、いくら無法者でも行動不能になるってね」


楓華は地図に簡単なマッピングを記入しつつ、司令部の場所を直接的な方法で割り出そうとする。

それは彼女の優れた耳だ。


「よし、それっぽい声が聞こえた。だいぶ奥の方だね。隠密は面倒だから、このまま強行突破して屈服させてやろうじゃないか」


そこから楓華の行動はあらゆる道理と戦術が一切通用しないほど、完全に常識外れだった。

たった一歩建物から出て姿を晒した直後には自動機関銃や固定砲台が作動して攻撃してくるのに、彼女はあっさりと回避と投擲による反撃を同時実行していた。


「まだミルちゃんの武術の方が危険なくらいだよ」


彼女は敵地を身1つで駆け抜け、次から次へと襲い掛かる脅威を突破する。

無人兵器、生物兵器、重装備した戦闘員、戦車や戦闘機。

それら全ての障害を1人で退け、完膚(かんぷ)なきまでに撃破する。

この時点で並外れた怪物ということは敵に伝っていることだろう。

事実、司令部となっている大部屋では敵の戦闘員がモニターを見ながら悲鳴をあげていた。


「おい!馬鹿げた奴がいるぞ!魔神対策の兵器まで真正面から破壊してやがる!もうどれだけの数が機能停止した!?」


「それだけじゃない!見ろ!算出された戦闘データが変動を続けている!戦闘が長引くほど対象人物の能力が飛躍的に()ね上がっているぞ!どんな体力……いいや、本当に生き物か!?」


「なぜ女1人でこうなっている!?しかも上空の戦艦から続々と増援だ!支援射撃される前に撃ち落とせ!」


敵基地は楓華の突撃で甚大な被害を受けながらも、宇宙戦艦の撃退を実行しようとする。

しかし戦艦の主である提督は歴戦の猛者だ。

既に防衛機能を作動させており、撃ってくる砲撃やレーザー光線を超強力な磁気バリアで遮断していた。

だが、四方から一方的に攻撃されてばかりではバリアが持たないことを提督の爺さんは知っている。


「おい、3姉妹ども。ここに敵が乗り込んで来る可能性がある。だから急いで船から降りろ。このまま非戦闘員に居座れても邪魔だ」


わざと厳しく言う事で姉妹を追い出そうとする。

当然ヴィムやヒバナは戸惑うが、ミルだけは冷静に頷いた。


「うん、分かった。提督じいちゃん、あとで打ち上げしようね」


「あっ?おめぇまで俺をじいちゃん呼びするのか。年寄りには敬意を持てよ」


「だって提督じいちゃんは、ミルたちのもう1人のおじいちゃんだから。そうでしょ?」


「ったく、嬉しくねーな。こんなワガママ孫娘どもなんてよ。あの老いぼれも報われねぇ。ほら、緊急脱出装置があるから、さっさとそれを使って地上へ降りろ」


「じゃあ、またね」


「おう。またな」


少し呆気無い言葉を交わした後、3姉妹は提督に案内された脱出装置を使う。

ただ脱出装置とは名ばかりの球体ポッドであって、その中へ3姉妹が乗り込むとポッドは戦艦から吐き捨てるよう発射した。

そこまで無造作だと心地いい脱出とはならず、ほぼ自由落下で降下して着地の際は強い衝撃を受けることになる。

そして地面へ落ちた後はミルが足蹴りでポッドの扉を破壊し、冗談を口にする。


「ふぅ。フウカお姉様が好きそうな体験型アトラクションだったね。体の節々が痛いよ」


そう独り言を喋る少女の遥か頭上では、絶え間ない砲撃を受けて墜落する宇宙戦艦の姿があった。

それは最後まで操作されており、村に不時着しないよう意識していることが誰の目から見ても明らかだった。

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