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22.村に遊園地と軍事基地が生えました

予想外の形で村へ戻された姉妹たち。

この事態に巻き込まれた者は大勢いて、混沌とした光景に誰もが戸惑いを隠せなかった。


「おいおい、マジか?一体何が起きたらこうなるんだよ。メチャクチャじゃねぇか」


驚愕と混乱が入り混じった態度で呟くのは、戦艦から村全体を見下ろす提督の爺さんだった。

彼の宇宙戦艦にはヴィムとヒバナを含めた乗務員が既に退避済みで、ひとまず安全な状態だ。

だが、彼らは戦艦ごと大規模な転移に巻き込まれて村の上空を漂っている。


同時に村の隣には、数十秒前までハンティング先となっていた遊園地が存在している。

その上、シェルターの外壁が崩壊した巨大軍事基地が隣接していた。

幸運にも転移による二次被害は村で発生してないが、もはや変わり果てた状態と言える景観だ。


しかも犯罪者やら無法者の大勢が紛れ込んでいるので、どう足掻(あが)いても収拾がつかない状況だ。

まさしく窮地に陥る一歩手前で、更なる混乱が起きるのは時間の問題だろう。

それほど手に負えない状況にも関わらず、楓華が平然とした態度でミルを抱えながら宇宙戦艦へ帰還してくるのだった。


「よっ、と。これはただいまと言えばいいのかな?」


「なに呑気なことを言ってやがる。まさか、これはおめぇの仕業なのか?」


「よく分かったね。原因そのものは相手の方だけど、9割くらいはアタイのせいかも。それで不躾で悪いんだけど、この事態解決に協力してくれる?」


「それは構わないが……ったく、厄介なお嬢ちゃんと知り合っちまったもんだな。こうもトラブルメーカーとは、あの銀髪女や店長みたいで姉妹が心配になるぜ」


提督の爺さんは事態を把握しきれずとも、何を優先するべきか理解していた。

そのため場を仕切り、今回の仲間たちに威勢いい掛け声をかける。


「おいバカ野郎ども!今回ハンティングするべき標的は混乱している!想定以上に腐った獲物だが、これだけ大きな仕事を片づけられれば報酬も破格だ!人生最大の仕事だと思って、死ぬつもりで気合を入れろぉ!!」


「うおぉおおおおおぉおおおおおお!!!」


一斉に活気づき、全員がやる気に満ち溢れて叫ぶ。

この勢いだけに身を任せた雰囲気に一般人のヴィムは付いていけず、冷静に呟いた。


「もう何もかもが凄いわね。ゲリラ戦は危険すぎるし、ここまで規模が大きい戦闘だと私が出る幕が無いわ」


この意見にヒバナも同意し、仕方なく頷いた。


「ミルも疲れ切っていますし、某たちは村の防衛に務めましょう。多分というか、絶対に村の人たちも驚いていますから」


「そうね。いきなり村の隣に遊園地と基地が生えてきたら、誰でも夢を見ているのかと疑っちゃうわ。……ところでフウカちゃんは?」


姉妹同士で介抱しているとき、ついさっきまでミルを気遣っていたはずの楓華が見当たらないことに気が付く。

また大勢が出動している最中なので、まさかという予感をヒバナは抱くのだった。


「もしかしてフウカ氏、彼らと一緒に行ったのでは……?」


「ミルを私たちに任せて行くなんて、この思いきりの良さは彼女らしいわ」


ヴィムは彼女の独断専行に驚くことはなく、むしろ素直に納得する思いだ。

一方、その楓華は誰よりも一足早く地上へ降りて、単独行動している真っ最中だ。

彼女は高速で駆け巡るジェットコースターの上で平然と仁王立(におうだ)ちしており、端末で地図情報を修正しながら再度マーカーをつけていた。


「ほとんどが犯罪組織の作業員って感じで、戦闘員らしき姿は少ないね。その代わり戦闘兵器と怪物が膨大っと」


楓華はこの世界における知識が不足しているが、それでも自身の観察と推察だけで多くの出来事を理解し始めていた。

正真正銘、情報解析に優れている証だ。

もしかしたら村に転移させたのも、先のことを狙った行動なのかもしれない。


「さぁ、ちょっとずつ感覚を取り戻してきた所だし、姉妹に恐い思いをさせたことを100倍返しにしてやろうじゃないか。これ機に、悪事を働いたことをたっぷり後悔すると良いさ」


それから楓華は走行中のジェットコースターから飛び降りた直後、遊園地のアトラクションであるゴーカートの乗用車へ乗り込む。

また即座にアクセル全開で発進させ、単身で敵基地へ突撃しようとする。

その走行速度は時速120kmで小さな上り坂で飛んでしまうほど。

充分に速いが、彼女が正面突破する様は知らない人からみれば特攻と変わりない。

それなのに楓華は余計なことばかり考えて呟くのだった。


「そういえば村にドライブコースを作るのもありじゃん。姉妹とドライブデートなんて最高だし。あと遊園地を村の観光名所として再利用して、お化け屋敷の外観は良いからメイド喫茶に改装するとか……。いや、喫茶店はヴィム姉のがあるか」


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