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17.ハンティング開始!まずは遊園地を楽しむことが先決!

「きゃっほおぉおぉぉぉおおおぉおおお!!ジェットコースター最高おおおぉおおおおおお!」


楓華は豪快な駆動音を鳴らすコースターに乗って、猛烈な風を浴びながら興奮の雄叫びをあげた。

彼女の隣と後ろの席には3姉妹も乗っているのだが、長女ヴィムと次女ヒバナは引きつった悲鳴をあげるだけだ。

末っ子ミルは楓華同様に興奮の声をあげているものの、どことなく驚きが少ない様子だった。

そして激しいアトラクション体験を終えた後、まず先にダウンしたのはヒバナだ。


「うぅ……。某、乗っている時に天国が見えました。なぜ炎の輪を(くぐ)ったり、マグマに包まれたトンネルに突撃したんですか。安全性の考慮が足りな過ぎますよ……」


「ヒバナ。ほら、水を飲みなさい」


「はぁはぁ……はぁ、ありがとうヴィムお姉ちゃん……」


ヒバナがヴィムに介護される(かたわ)ら、楓華の方はすっかりご満悦のテンションで浮かれていた。


「いやぁ~最高だったね!まさか雲の高さまで昇って、そこから地中まで真っ逆さまにダイブするなんてさ!心なしか、失った記憶がフラッシュバックした気がするよ!」


「フウカお姉様ってば、けっこう壮絶な体験をしているんだね」


「いやいや、実際にあった事かどうか分からないからね?それより次のアトラクションへ行こうよ!ほら、あれとか良いじゃん!ロケットで宇宙まで飛び立って、隕石へ激突寸前にワープで回避するって書いてある!本当かな!?」


「凄いね。走馬灯を楽しめそう」


「あっ、でも疲れたヒバナに合わせた方が良いかも。一旦落ち着いて、ボートで滝の激流を登りきるアトラクションとかね!」


「うんうん、どれも楽しそうだねー」


楓華は誰よりも子どもっぽく張り切っているだけではなく、完全に舞い上がっていた。

それは当然かもしれない。

こうして姉妹と思いっきり遊べる機会なんて、この先あまり無いかもしれないからだ。

しかし、今回は獲物狩り(ハンティング)というアルバイトで来ている上、もっと言えば当初の目的は村の食糧不足問題の解決だ。

何より身の危険性に関わるため、しっかり者としてミルが言った。


「ねぇフウカお姉様。いっぱい遊ぶのも良いけど、真面目に仕事しないと報酬がもらえないよ。そうなったら一緒に生活できないからね?」


「じゃあ仕事した後に遊ぼっか。ジェットコースターに乗っているとき、怪物が潜んでいそうな場所があったしさ」


「へぇ、遊びながら偵察していたんだ」


「偵察するためにジェットコースターに乗る。これは基本だってアタイは記憶しているね」


「それ本当?まさか記憶が無いことを利用して、思い付きだけで言っている?普通に考えて、偵察でこっちが目立ったら意味が無いと思うけど」


「あははっ、見透かされたか。さすがミルちゃん。……っと、ほらヒバナちゃん。置いていたエネルギー銃を忘れたらダメだよ」


ジェットコースター乗る前に置いた荷物を楓華が取り、それをヒバナへ手渡す。

しかし肝心のヒバナは疲弊気味で、重そうに長銃を受け取った直後には杖代わりにしてしまっていた。


「ふ、フウカ氏……。少し休憩しませんかぁ?万全な状態じゃないと仕事を完遂できませんよぉ」


「一理あるね。体は大事な資本。ってことで、アタイが飲み物と軽食を買って来るよ」


「えっと大丈夫です?」


「自動化された売店だからアタイでも買えるよ。見たところ、危険性も無さそうだしね」


「某が心配しているのは食べても安全なのか、という意味もあったのですけど……。でも、お願いします。この不安な気持ちを少しでも紛らわしたいですから」


「緊張しているんだね。まぁまぁ任せて。すぐに戻って来るから!その後はメリーゴーランドに乗ろうねー!」


笑顔で言いながら楓華はスキップして園内の売店へ向かって行く。

そして彼女が買い物をしている間、ミルは配布された小型の端末を取り出して眼前にメニュー画面を表示させた。

その内容一覧は提督が見せたものと酷似しており、宇宙戦艦とデータリンクしていることが分かる。

それに気が付いてヴィムが質問を投げかけるのだった。


「ミル、何をしているの?」


「ん、フウカお姉様が本当に偵察していたみたいだから。地図にマーカーを付けているし、提督や他の人たちにも情報を発信しているね」


「やることはやっているのね。ああ見えて効率が良い子だわ」


「そうだね。あとこれも大事かな。ヴィムお姉ちゃんとヒバナお姉ちゃん」


ミルは話している途中、ゆっくりとした口パクで『見て』と付け加える。

それによってヴィムとヒバナが表示されている画面を覗き込んだとき、非常に長文のメッセージが書かれていた。

送信者は楓華となっており、内容は事務連絡のようなもの。

だが、ミルが操作すると一部の文字列が変動する。

つまり暗号だ。

それを読み解いたとき、本当の内容はこうなっていた。


『敵はこちらの動きを全て監視している。ほとんどの情報が(つつ)抜けとなっており、マーカーを付けたポイントには罠がある。お化け屋敷から異常な周波数を確認したので調査せよ』


このメッセージを読んだ瞬間、ついヒバナは周りを見渡して監視の目を探そうとしてしまう。

それをヴィムが頭を掴むことで強引に制止するなり、即座に関係無い話題を口にした。


「そういえばヒバナはどんなアトラクションが好きなのかしら?いつも1人で行っているわけだから、やっぱりお気に入りの系統があるのでしょう?」


「あ、あははは……。そうですね。某はいつも1人用フリーパスで……うぅ……」


「ちょっと、なんで落ち込むのよ!その経験を活かして、是非とも私たちを引っ張って欲しいと言いたいの!とにかく絶叫マシンは苦手なのよね?」


「いえ、苦手ですけど好きですよ。怖いもの見たさというか、避けようのない恐怖が迫ると何とも言えない高揚感を覚えます」


「あら……、そういう趣味があったのね。初めて知ったわ」


ヴィムが真面目な様子で言い出してしまうので、これにヒバナは慌てて訂正の言葉を入れる。


「え?いやいや、言っておきますけど、あくまでアトラクションの話ですからね?アトラクションは楽しむことが目的で安全性も確保されているわけですから、それ以外の場合は全く別物ですよ?」


「どうかしらね。それじゃあ、例えばお化け屋敷はどう?」


「お化け屋敷ですか……。運営の拘りを感じられるので、そういうセンスを見るのはけっこう好きかなぁ」


「オタクっぽい見方だわ」


「普段は1人で遊んでいるわけですからね……。某だって誰かと一緒に行って、ギャアアアアアーと女の子っぽく叫んで楽しみたいですよ!」


「それなら今日は仲良し姉妹で盛大に叫びましょう。ほら行くわよ」


「あれ、フウカ氏は?買いに行っちゃったままですよ?」


「私から連絡しておくわ。だから3人で行きましょう」


そう言ってヴィムは端末を使い、楓華にメッセージを送る。

その後、すぐさま3人揃ってお化け屋敷へ向かい始めた。

ただ彼女らが向かった先のお化け屋敷は、文字通り正真正銘の屋敷だ。

装飾自体はお化け屋敷らしいだろう。

しかし高級ホテルかと見間違うほど立派であり、名ばかりの建物では無いことは一目で分かるのだった。

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