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138/147

138.村の守り神は宣託を伝え、フウカ達は不思議な夢空間へ招かれる

本会場でコンテストの閉会式が行われた後、楓華達5人は別室へ案内されて通路を歩いている最中だった。

そして先導しているのはコンテストで何度も関わった鳥人女性のスタッフであり、彼女は今回の出来事を通して喋り出した。


「これから騒がしくなるため、移動しながら皆に感謝の意を伝えよう。コンテストが成功したのは(なんじ)らのおかげだ。久方ぶりに愉快な心地になれた上、本来なら関わり無き者達が競う姿を見れたのは記念すべき出来事となった。ありがとう」


「そりゃあ良かった。まっ、アタイも楽しかったぜ。特に屋台で売られていた飯はおいしかった」


「ははっ、主催者に伝える感想とは思えんな。それで我から各々に伝えたいことがる。まずはモモ。汝は創造神の魔女セブンス・セレファイアから『好機』の加護を受けた身だ。これからも己の能力で好機を見出し、苦難を乗り越えてくれ」


彼女の会話から全く聞き覚えが無い名前が唐突に出てくる。

しかし、モモは誰の名前なのか知っている上に魔女とは無関係では無いらしく、苦々しい表情を浮かべていた。


「うぇ……。あの店長さん、私に加護とか気色悪いものを与えていたんんですか」


「無力な者が1人で生き抜くとなれば、加護の(たぐい)は必要不可欠だぞ。次にミル。生き方を見つけて猛進するのは素晴らしいが、もっと自身を伸び伸びとさせて生きると良い。親しい関係に固執して囚われれば、再び自身の首を絞めるぞ」


またもや意味深そうに鳥人女性は語る。

するとミル自身の過去に関わる話だったようで、彼女は少し生意気な返事をした。


「ミルってば、もう何が起きて平気だよ。だって昔の自分より成長しているし、ミルを心配して支えてくれる家族が居るもぉん」


「ふむ、その通りだな。だが汝の場合、更なる成長と人生の気付きを得るためにラフな友人関係も構築した方が良い。例えばだが、学友やサークル仲間だな。次にヒバナだ」


ヒバナは名前を呼ばれただけで体を萎縮させてしまう。

また表情も強張っているので、ミルに続いて説教じみた言葉を掛けられるのだと身構えたのだろう。

だが、意外にも彼女が発した言葉は驚くほど優しいものだ。


「汝の幸せは、この先まだまだ沢山ある。だから悪夢に(さいな)まれても、どれだけ無性に悲しくなっても安心しろ。汝は自身が思っているより他者から必要とされ、常に期待されている。そして、この世界は汝の不幸と不安を抱擁してくれる」


「えっと……ありがとうございます。どうお答えすればいいのか分かりませんが、皆さんと楽しく生きますね」


「あぁ、心身の安寧を享受しろ。そのための村だ。それで次にヴィムだが」


これまでの流れからしてヴィムに話題が移るのは自然だ。

しかし、名前を出された当人は話を遮る意図で厳しく言い放った。


「私には特別なことを教えなくても大丈夫よ。100%有用なアドバイスであっても、私は自分の夢と生き方を大切にしたいわ。それに無駄な遠回りも思い出にしたいの」


「ふふっ、模索を望むのは良い心構えだ。元より汝は相手を導く側だからな。最良の結果を得られずとも、その器量であれば満足する生き方が必ず成せる」


結局、独り言らしいことを言われてしまうが、自分の生き方が認められる分には悪い気はしない。

そのためヴィムは少しだけ誇らしい気持ちになりながらも、道を見誤らないよう今一度心掛ける。

それから僅かな沈黙が数秒間ほど流れた後、楓華は不思議そうな声を漏らした。


「ありゃ……?おっかしいな。アタイには何も言うことが無いワケ?」


「汝は我の言葉を気に掛けないどころか、聞いても(またた)く間に忘れるだろう」


「えぇー?だからってアタイだけ仲間外れかよ~。ちぇっ、寂しくなっちゃうなぁ」


「我が道を行く精神である癖に、こうも構って欲しいと強請(ねだ)るか。では、あえて言うならば大勢が関わっている場で思いつきの行動は控えろ。神社での無礼講は大目に見たが、あの優勝スピーチは一体なんだ?コンテストを飾る華だったのだぞ」


「げっ……。これって怒られ説教パターンじゃん。やっぱ、さっきの発言は無しで!そもそもアタイは完璧美少女だから、あれこれ教える事なくて当然だよな!いやぁ、アタイとした事が失敬しちゃったなぁ!うわっはっはっはぁ~!」


ずいぶんと強引かつ下手な誤魔化し方だ。

ただし、鳥人女性は彼女の大声をわざわざ押しのけてまで説教するつもりは無い。

だから執拗に追求しないどころか、嘲笑じみた気が抜ける吐息をこぼした。


「ふっ、ただ歩くだけでも賑やかになれるのは羨ましい才能だ。これからも多くの出逢いを果たせ時雨楓華。さて……、そろそろ着くぞ。我らが用意した式典だ」


彼女は通路中にあった変哲も無い扉を開けるなり、一拍も間を置かずに先の空間へ入ってしまう。

それは楓華達を意図的に置いて行くような急ぎ方であったため、心の準備をする時間が無いまま慌てて付いて行く始末だ。

それにより彼女達は室内をあまり確認せず入室したわけだが、いざ足を踏み入れた瞬間に広がる状況には驚く他なかった。


「おぉ?変な感じがするけど綺麗な所じゃん」


彼女達全員が入った直後に扉は消えるが、重要なのは全方位に広がっている幻想的な光景だ。

足元の大地には多種多様な花が一面を覆い尽くすほど咲き誇っており、どれもほんのりと光り帯びていた。

そして南方の空には巨大な満月が浮かんでいる。

煌びやかな月光が降り注ぐ様は心に感動を与える上、花々が水面のようにチラチラと明かりを反射させている様は一生の思い出になるだろう。


更に北側では沈む直前の夕陽が頭を出していて、熱い色をした夕焼けの空がひたすら美しかった。

どこか物静かで一日の終わりを連想させる寂しさがあるはずなのに、強烈な情熱を感じさせるのは太陽に宿る強大な影響力なのか。

その光景にも息を呑むほど魅了され、太陽が完全に沈むまで目を離したくない衝動に駆られた。


それから耳を澄ませば、遠方から動物の声や川が流れる音が聞こえてくる。

(かす)かに滝の流水音も混じっているので、おそらく少し移動すれば滝つぼが見られるはず。

しかし、聴覚が優れている楓華は音の発生源に違和感を抱き、1人で先走って行ってしまう。


「あっ、フウカ氏!?さっき注意されたばかりなのに、また思いつきで暴走して……」


衝動に駆られた楓華をヒバナは呼び止めようとしたが、その頃には遥か遠くへ離れてしまっていた。

そして楓華が向かった先は、大地の境界線だ。

つまり彼女達が招かれた場所が大陸ならば、海と接する部分に当たる。

だが、楓華が立っている場所は断崖絶壁であり、一歩先は世界を見下ろす光景になっていた。


「は……はは……。こりゃあ宇宙より凄いや」


いつも賑やかに騒ぐ楓華ですら、あまりの絶景を前に啞然と笑うしかなかった。

彼女が立つ大地の下には無限の空間が広がっていた。

そして無数の島と大陸、更に(きらめ)く星々が悠然と漂っており、滝の水は終わりなき深淵へ流れ落ちている。

また高低差に関係無く大小の雲が流れており、渡り鳥の群れが平然と飛行して島々の空域を通り過ぎていた。


凡人からすれば、どれだけ観察しても一切理解できない空間だ。

だが、世界全体の法則に縛られていないのは無知者からしても明らかだった。

あらゆる(ことわり)の制限から解放されながらも調和が整えられており、全身を穏やかに包み込んでくれる大気。

これらの感覚と体験に彼女は覚えがあった。


「気分良い時に見る夢の世界だな」


楓華は自分自身が納得できる答えを呟いた後、大自然と宇宙を堪能するように深呼吸する。

そのリラックス状態へ入る最中、ふと聞いたことがある女性の声が彼女に語り掛けてきた。


「もしもーし、こんにちは~!」


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