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135/147

135.時間終了です。閉会式で順位発表が始まるものの雲行きが怪しくなる?

しばらくして、惑星全体に重厚な鐘の音が鳴り響いた。

その打ち鳴らした金属音は特殊空間や施設構造、更に付与された効力などに阻害されず、地底から宇宙まで明瞭な音のまま届く。

そして鐘の音は競争終了の合図となっていて、ついに制限時間終了を迎えたのだと全参加者は知った。

中には呑気すぎて「お昼ごはんの合図ですかね?」と思い込む天然な女の子も居たが、各地に散らばった参加者は運営の力によって本会場へ強制転移された。

もちろん例外は無く、リタイアした選手も含めて(ただ)ちに本会場ホールに集合させられる。


大勢の参加者は最初から綺麗に整列させられており、疲労回復に加えて身だしなみ等も瞬間かつ自動的に整えられた。

このおかげで全員が即座にリラックスできるわけだが、楓華だけが少し不満そうに愚痴をこぼした。


「これ、運営の力で回復させられているよな?あーあ。アタイはやりきった後の疲労感も思い出にしたい派なんだけどなー」


これを聞いたモモは、全く反対の感想を持っているので言い返した。


「フウカさんはアスリートみたいな達成感を大事にしているのですね。私的には、この後の帰宅や研究を考えると嬉しい処置ですよ」


「でもさ、苦難を分かち合うのは絆を強めるだろ?あとヘロヘロで無抵抗になったモモちゃんを抱きしめて、じっくりと感触を堪能できるじゃん!」


「セクハラする方が重要事項みたいな言い方しないで下さい。ただ、頑張ったご褒美として抱えさせてあげなくも無いですよ?」


「マジで!?超絶ラッキー!じゃあ、そのまま布団へ連行してモモちゃんを初抱き枕にする!もう姉妹全員は抱き枕にしたことあるし、これで念願のコンプリート達成だ!」


「フウカさんは元気が有り余ると、お構い無しの変態さんになりますよね……。これなら確かに回復は余計なお世話かもしれません……」


モモは完全回復した直後なのに早くも疲れた顔へ変わってしまう。

大げさな反応かもしれないが、体力全快どころか絶好調になっている楓華相手と考えたら誰でも同じ感覚に陥るだろう。

そんな緊張感を忘れて目先の会話を楽しむ中、本会場ホールに設置されている超大型モニターに白ネズミ少女が映し出された。

だが、なぜかモニターには黄金の粉で落書きが施されており、更に黄金の粉は映像に合わせて面白おかしく動き回る傍迷惑な仕様になっていた。


「あえぇ~?これってリールちゃんの悪戯だよね~☆せっかくの登場だからビシッとカッコ良く決めたかったのにぃ。でもでも、キラキラなフィルターみたいでキュートかも♪」


運営スタッフの少女は画面越しの出来事を正確に察知する上、あっさりと順応して1つの演出として扱い始めた。

事実、流動する黄金の粉は数字や文字、画面フレームなど自由自在に形を変えて操られていた。

それから少女は別の運営スタッフから合図を送られたらしく、周りから急かされた振る舞いで本題へ移る。


「こっほん☆それでは皆様、長らくお疲れ様でした~♪トラブル含め、お楽しみ頂けたのなら幸いですぅ~!それじゃあ早速だけど、このまま棒立ちさせるのは忍びないから順位発表へ移るよ~☆ちなみに名前を呼ばれた人の顔がモニターに映るから、上手くポーズを決めてねぇ♪」


唐突な無茶ぶりに聞こえるが、今回企画された試練の方がよほど理不尽でアクシデントの巣窟(そうくつ)だった。

だから上位へ入った者は不意の要求に慣れきっているので、「いつもの事か……」くらいの軽い認識で済まされていた。

そうして参加者がすっかり順応した態度を示す一方、運営は早々と発表を始めた。


「それじゃあ、まずは10位から!第10位は~ハイリゲ選手です☆そしてポイントは……あれぇ?」


思わぬ事態に見舞われたのか、最初の順位発表から言い淀み視線が泳ぐ。

その間にハイリゲと呼ばれた人物の顔がモニターに映り、運営の要求通りポーズを決めていた。

だが、入賞した割には筋肉を誇示するポーズを懸命に取っているため、楓華からすればコンテストの趣旨である『お嫁さん』らしさは感じられなかった。


「良い筋肉だけど文明の違いを感じるなぁ」


宇宙は広いから、そういう価値観が一般的な文明もあるのだと楓華は思った。

ただ、その人の恰好は世紀末感が放たれている上、迫真顔で狂人じみた雄叫びをあげているため違和感が強い。

そんな感想を抱いている間に困惑していた運営スタッフも落ち着き、10位の総計ポイントをようやく告げた。


「ハイリゲ選手の最終所持ポイントは302点♪なんだか凄く少ない気がするけど、おめでと~☆」


このポイントを聞いたとき、観客と選手の一部でザワつきが起きた。

そして動揺するのは楓華達も同じであり、特に長女ヴィムは途中経過の話を細かいところまで覚えていたから酷く焦った。


「おかしいわ。まだ制限時間がたっぷり残っているとき、運営の1人が10位以上は2000ポイントを上回っていると教えてくれたのよ。それがどうして300ポイント台にまで落ちるのよ」


この記憶は正しいため、どう考えても結果の不自然さが目立った。

しかし楓華は思い当たる節が無くとも予想がつき、それらしい考えを伝えた。


「アタイ達も決闘ルールで大きなポイント変動が起きたしな。誰か同じことでもしたんじゃないか?」


「それはありえるけれども……。私達があれだけ協力して成果を出したことを思ったら、ちょっと悔しい気分だわ」


「落ち着きなよ。アタイ達が10位以上なのは確定だし、勝手に嫌悪するのは気が早いって。さすがに追い抜かれないだろ」


実は終了間際に運営が全プレイヤーの所持ポイントを秘匿状態にしたため、誰一人自身のポイントを明確に把握できていない。

だが、楓華達は簡単に見積もっても3000ポイント以上はあると考えている。

これは元々の所持ポイント+宝探しクエストで獲得したポイント+決闘ルールでクロスの全ポイントが分配された数値だ。


ただしミルに関しては途中から所持ポイントが無い上、手持ちポイントがマイナスになる超過使用を連続で実行していた。

ポイントを蓄えず過剰に使用した理由は、情報収集や便利アイテムの獲得のためだ。

それらは仲間で共有できるものであり、彼女はポイントが0になった後はチーム貢献に努めることを目的に自己犠牲を選んだ。

よってミルの順位は最下位クラスだろう。


とにかく楓華グループの中で一番所持ポイントが多いのは、緊急クエストで宝を多く入手した楓華のはずだ。

それらの情報整理が彼女達の間で行われる中、運営の順位発表は順調に続けられていた。

そして大台の順位へ差し掛かったとき、先にモモとヒバナの名前が呼ばれる。


「次はなんと奇跡の同点!モモ選手とヒバナ選手が6位だよ☆ポイントは2680点!おめでと~♪」


発表されたので、これまでの工程通り超大型モニターには2人の顔が同時に映し出された。

しかしモモは無表情のピースだけで対応を終わらせ、ヒバナは緊張のあまり顔を真っ赤にしながら慌てふためている。

そんな地味で威厳に欠けた反応をしている間に、映像はスタッフの方へ戻ってしまった。

どちらも嬉しさが伝わってこないアクションで終わってしまったのは楓華からすれば意外だったので、ひとまず盛り上げる形で2人を大きく讃えた。


「2人とも良かったじゃん!しかも2680ポイントって相当頑張った証だろ~!」


少し安っぽい褒め方に聞こえるが、楓華は2人の成果を心から素晴らしいものだと認めている。

実際のところ、閉会式で大々的に発表される順位に入れただけで充分な結果だろう。

それにも関わらず、なぜかモモの目つきは少し冷めていた。

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