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133.チームワークで魅せる愛情!届けエッチな想い!

ミルは脱衣する事によって自身の白く柔らかな肌を舞台上で披露した。

また彼女は1つ1つの脱ぎ方自体に全神経を注いでおり、芸術品を制作している職人同等の集中力が感じられた。

まるで衣類を脱ぐ動作そのものに魅力があると錯覚させるような、芸術的パフォーマンスに等しい。

そして露わになる年齢相応の肌と四肢、それら体型を強調する布面積が狭い下着。


同時に一定の魅惑が放たれるのみならず、全身を余すことなく鍛え上げているだけあってボディビルダーが()せるブレない芯の力強さが発揮されていた。

更にフィギュアスケートが魅せる端麗で卓越した美しさ、ポールダンスが魅せる妖艶なストリップと細かな仕草で織りなすアピールが詰め込まれている。

まさに余すことなく魅力が(みなぎ)っているという状態であり、あらゆる種族間や固定化した価値観を越えて魅了してしまうだろう。

この不思議現象の影響は審査員達にも色濃く出ていて、白ネズミ少女の視線はミルから外せなくなるほど奪われていた。


「あっれぇ、なんでだろ♪私って、こういうタイプに全く興味が無いイケオジ好きなのに心がザワザワしちゃう~☆」


たったワンアクションかつ短時間で強い印象を与えられるのは、単純な魅力のみならずトリックを仕掛けているからだ。

きっとミルは何らかのスキルを駆使している。

元より彼女の得意分野は武術であるため、自身の動作に関連した演舞等に限らず、相手の意識や注意を誘導する技に秀でているのは当然だ。

そして彼女は他に(まと)っていた衣類も次々と脱ぎ捨てていき、ビキニ姿にネコ耳&尻尾という際どいながらもマニアックな恰好へ様変わりした。


似合っていると言えば確実に似合っているのだが、素直に褒めるのが遠慮したくなる系統で下心をくすぐる可愛さだ。

更に、やはりミルは幼いから子猫に近い可愛らしさが雰囲気に出ている。

そのため美貌が優れた大人の女性と比べたら見劣りする部分はあり、尖った魅惑は感じられなかった。

だが、彼女はそれら不足した魅惑の要素を瞬時に補う(すべ)を持っている。


「にゃっは~ん」


掛け声に関しては誰が聞いても幼稚であるものの、ミルは胸や腰、尻や脚など体の曲線が目立つ部分を大胆に強調するポーズを取った。

もちろん、幼い子どもが大人の表面上を真似しているような背伸び感は拭えないが、彼女なりに精一杯な気持ちは伝わってくる。

それにより楓華は白熱した姿勢でミルの努力を讃えた。


「いいよいいよミルちゃあ~ん。すごくエッチだよぉ~!もう色情を煽られ過ぎて、アタイ失神しちゃいそうだよ~!おじさん、記念に動画撮影でもしちゃおっカナ!?」


「あのフウカ氏?どことなくオジさん臭い喋り方になっていますよ……」


(はや)し立ては必要不可欠だからな。アタイの時も観客を盛り上げて良い感じになったワケだし、ここは無理してでも熱狂させないと!」


「えぇ……!?意外に計算高い狙いがあったのですね。で、では某も微力ながら加勢します。えっと……うぅんと、ミルのえっ……えっちぃな所を見てみひゃい!です!」


ヒバナは楓華の口車に乗ってノリを合わせようとしたが、激しい羞恥心が(まさ)ったせいで呂律が回っていなかった。

しかも顔を真っ赤にしたまま俯き、両腕を必死に振り回している。

その隣で楓華は流れを一気に引き寄せようと、ヴィムとモモの2人にも協力を要請した。


「ほらほら、ヴィム姉とモモちゃんも盛り上げて!これぞチームワークでしょ!」


「いきなりストリップショーする妹に声援を送るのは気が引けるわ。でも、勝つためなら私だって……ミル!もっと胸を張りなさい!前屈みになって!それだと私の100分の1にも満たない、まな板の胸よ!もっと豊満に!」


ヴィムの応援は的外れな野次に寄ってしまっているが、安易に肯定する言葉より素直で会場の活気は僅かに増している。

この奇天烈な状況にモモは戸惑い、巻き込まれたくないから他人のフリでもしようかと考え始めてしまった。


「なんですか、これ……。さっきまでの真面目な会話が全部無駄になっているじゃないですか。それにどんな手段でも勝つという心意気が、これほど精神的負担になるものなんですか。しかも、暴走を抑止するはずだったフウカさんが一番暴走を促進させていますし……」


すぐ行き当たりばったりに行動されるせいで、やはり即座に状況を受け入れて納得するのは難しい。

だが、結束して協力することは悪い話で無いとモモは分かっていた。

また、楓華から応援を催促する期待の眼差しを送られてしまい、少女は迷いながらも自身の良心に従うことになる。

そのため気分は(いま)だ乗り切れてないものの、モモは周りに同調して自分が思いつく限りの言葉を送った。


「うぅ~どうにでもなれ、ですよ!みぃ、ミル師匠の体は最高傑作ですよ~!尻にドローンが張り付いている!みたいな?なんだかこう……長い年月をかけて改良を重ねたアンドロイドと同じ造形美があります!」


「いいよモモちゃん!その調子でもっと言ってあげて!」


「ミル師匠の技は天下一!丹念なスキンケアによりロボットのツヤみたく輝いています!あぅ~……!もう私は何を言っているの?どうかロゼラムお姉ちゃんは見ていませんように!全部フウカさんのせい!何もかもフウカさんのせいですからぁ!」


モモはコンテストの最中に再会した姉の顔を思い浮かべ、自我と葛藤するように表情を引きつらせた。

そして彼女達が送る声援は、はっきり言えば的外れな内容ばかりで酷いバラつきが目立つ。

それでも応援したい一心なのは本物であり、勝利を目指した凄まじい熱量は場を温めるのに充分だった。

そのおかげでミル自身のテンションも上がっていき、より勢いを増して盛り上げようとした。


「みんながミルを応援してくれている……!よし、今こそ期待に応えないと!ポイントを超過使用!おっきな触手~!」


ミルが思いつきでポイントを使用すると、舞台の下から長い触手が生え出した。

普通なら人間をエサ扱いして触手の手玉に取られそうなところだが、ミルの場合は逆だ。

少女は華麗な足取りと身のこなしで触手の挙動を思うがままにコントロールし、見ている者を飽きさせない変則的な画を意図的に創り出した。

それは1人では到底不可能な姿勢だったり、触手に振り回されながら慣性に身を任せて躍るという荒業だ。


「さぁみんな!ドンドンいっくよ~!ミル流武術・クマさんズの行進パレード第2章ネコちゃんバージョン!更に中級魔法・世絶えの虚ろ火(ホロウアウト)!」


ついにミルは武術と魔術の両面で舞台上を派手に彩る。

戦闘状態でも無いのに鋭くて見応えある動きは惚れ惚れするものである上、ミルは自分が得意とする武術を前面に押し出していた。


工夫を()らしながらもストレートに魅せる性的な可愛いらしさ。

実戦で培った数々の技術と舞台に合わせた新しい技の見せ方。

天才的な身体のしなやかさと持ち前の可憐さで披露するポーズ。

どの一芸も、更にどの観点から評価しても間違いなく一流だ。

その様子を大人しく眺めていたクロスは途中から表情を(やわ)らげ、面白おかしそうにしながらも静かに笑った。


「ックフフフ。ずいぶんと賑やかで、本当にやかましいですね。彼女達らしいです」


この棘が感じられる言葉に対し、発表を夢中に見ていたはずのリールは問いかけた。


「クロス?それって悪口?」


「感心しているんですよ。彼女……、ミル様は私の手合わせの時もそうでしたが、応援された時に120%の力を発揮します。これはミル様の才能あってこそですが、やはり相手の力を引き出せるフウカ様が侮れないということでしょうね」


もしかしたら楓華は、意図的に性教育を中途半端にすることでミルの行動をコントロールしていたのかもしれない。

ミルの性格を完璧に知る彼女ならば不思議な話では無いし、どのような行動を取るのか彼女なら把握しているだろうとクロスは考えた。

そもそも楓華は最初から個人技で勝利するつもりは無かったはずだ。

なぜなら彼女は自身が発表する前に「アタイ達(・・・・)は絶対に勝つから大丈夫」と仲間を意識していたので、少なからずチーム一丸となって勝利しようとしていた。

当然、これはクロスの勝手な深読みであり全て憶測だ。

ただ楓華が早い段階から展開を計算していた予感を漠然と抱き、クロスは観念した声色で呟いた。


「大局を俯瞰(ふかん)する力は私が明確に劣りますね。フウカ様の先を見据える力。それから、かつて私がリールに助けられたように1人で先行しない姿勢は今後の勉強にさせて頂きます」


彼女はそう言いながら、指笛で会場を賑やかにする楓華の方へ視線を移すのだった。

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