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転生先と両親

「可愛いーー!ほんとなんでこんなに可愛いのーー♪」

「だから言っただろう、君に似ればきっと可愛い子が生まれるって。」

「この子は私が死んでも守るから!あなたと3人で、素敵な家族に。」

満面の笑みと幸せトークを目の前で繰り広げる2人は俺の両親だった。

ーーそうか、俺は生まれ変わったんだ。でもなんで...。

前世の記憶はある、でもどうして俺は今ここにいるんだ。ーー

まだ言葉にできないこの身体ではほとんど自由が効かなかった。

それから俺が俺であった時の何倍も長い時間をこの2人と共に過ごすことになった。

ーー赤ちゃんってこんなに不自由で退屈なのか。ーー

「みっちゃんー♪どうしたのかな?お腹空いたのかなー?ミルクでちゅかー?」

泣くことでしか大人に伝えることが出来なかった。1日中ずっとこの母親と過ごし、夜に帰る父親と母親、広過ぎる家をぼんやり眺めては長過ぎる時間を、ただただ少しずつ自由になるこの身体と共に過ごしていった。

そして俺が3歳になろうとしていた頃、両親の関係はすっかり冷え切っていた。

「だからって!私ももう限界よ!ずっと家事と子育てで休みもなくて....あなたには休みや仕事の時間で自由に動ける日があるでしょう!」

母がまた父に向かって泣き叫んでいる。

「俺だって仕事の付き合いだから仕方ないんだ。いい加減理解してくれよ。お前の精神がそんなんじゃ子供にも良く無いだろう。」

またかといった表情の父は母と目を合わすこともなく、いそいそと寝室に逃げて行った。

「もう無理.....私だって。人間だから...。」

泣き崩れる姿に俺はただかける言葉もなく母に抱きついた。

「泣かないで。ママごめんなさい。僕がいるから...。」

今の俺にかけられる言葉はこれが精一杯だった。頭ではもっと気の利く言葉が出るはずなのに、口にできる限界は3歳にも満たない文章だけだった。

「....。あんたのせいで....。」

思い切り腕を振り払われ、母はそのまま別の部屋へと入っていった。

最近こんなやりとりがしょっちゅうだ。

母も次第に俺との関わりが少なくなっていき、父は帰ってこない日が増えていった。

ーー前の俺の両親は、喧嘩なんて数えるほどだったな。沙織とも喧嘩なんてほとんどしなかったけど、亜夢がずっと笑顔だったのは沙織が育児を頑張ってくれていたからなのか...。ーー

それから俺は母の負担にならないよう、出来るだけ精一杯の努力をした。

それでも母の状態は悪くなる一方だった。

それもそのはずだ。精一杯の努力もこの身体では上手くご飯は食べられず、トイレも失敗してしまう。

取りたいものも、着替えも、なにもかもが未熟過ぎる結果しか生まなかった。

そしてついに俺の住む場所は別の家になってしまうのだった。


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