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夢みたいだけど、夢じゃない。  作者: 緋色こあ
前学期~模索と結論~
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6.佐和田梨乃



私は人から見れば“狂ってる”んだって。




最愛の人に捨て台詞のように言われた時から、もっとおかしくなった気がするけど。


なんだか、恋とか愛とかって本当に心の病だと思う。


残ったのは異様な虚無感と、苦しさと、憎しみ。




それでもやっと一歩踏み出せるから、今日はお祝いしなきゃね。


二の腕に深く傷を入れれば赤い血と鉄くさい匂いが充満して心地いい。



いつもより1シート多い安定剤と酒を口へと放り込む。

もう過去に囚われるのはそろそろ飽きた。新しい方がいいから、そろそろまた依存して溺れたいわ。






















6.佐和田梨乃














転校当日。




「佐和田梨乃です。隣町から越してきました。部活は以前までテニス部に入っていました。宜しくお願いします。」



笑顔で当たり障りのない挨拶をすれば大きな拍手を送られて、またにこりと微笑んでみせた。

ザッと見渡せばわりと綺麗な子や可愛い子が多そうで嬉しくなる。

昼休みまでの時間様々な子と話したりして教室内を観察していたけれど、その中で一人飾らない彼女に惹かれた。






彼女の名前は今西友里菜。





田中咲と仲が良い様だ。時折見せる気だるそうな表情は不思議と色っぽく見えて、あくびをした後の潤んだ瞳が可愛くてじっと見ていたい。まず何より好きな顔のタイプ。人目見た時からもっと知りたいと思った。

随分と落ち着いているのに、皆の輪に入ればノリ良く話す声が聞こえて、見ているだけでも口元が緩む気がした。





「あの、良かったらお昼一緒にして良いかな?」



三人で一悶着して落ち着いた所を見計らい、両手に自身の弁当箱を持って、少し遠慮しながらも微笑んでみせる。



「マジで!?やったー!もちろんだよっ」



咲がニコニコと席を一つ詰めてくれて、わたしはお礼を言って座った。

すると友里菜が咲と一美を交互に指差して声を掛けてきて。



「こんな変態の集まりと一緒に居てくれるなんて、いいの?」



上目遣いで反応を見ようとする友里菜をじっと見つめる。

当たり前じゃない、同じ変態の私はあなたに近づきにきたんだから。


にこっと笑って、もちろん!と答えた。









そうして、私は友里菜との距離を徐々に詰めていった。






話してみれば本当に自分好みの人。

気も使えて、毒を吐くくせに友人思いで優しくて。

普段は大人っぽい表情しか見せないのに、一美や咲にからかわれると出す無邪気な笑顔。

そのギャップが良くて、この人の全てを知りたくなった。



どんどん触れたくなって、気づけば咲達に冗談として扱われるよう誘発し、触れる事に成功。

その度にふわりと香る甘いのにすっとした爽やかなものはまるで友里菜の人柄のようだった。




『ねぇ、友里菜って好きな子居ないの?』


『うーん、何せ出会いも無いから全くできないよ』
















「――――――嘘でしょ」





居ないって、そんな出会いが無いからできないって言ってたじゃない。




その言葉に安心してしまっていた自分が馬鹿みたいだった。

彼女は好きな人が居たけど言えなかっただけ、相手が男じゃないから。








その光景が信じられなくて、人々が行きかう流れから立ち止まってガラス越しに友里菜を見つめていた。





友里菜が私達の前では見せない女の顔をして笑っていたから。


その人が好きなんでしょ?友里菜。




随分と久しぶりにショックを受けたように感じたが、友里菜の好きな人にも驚愕した。

同じ高校で、私の中では随分と有名な女。

まさかこんな所でも繋がるなんて、運命みたいね。





「その女だけは、止めるべきだわ」





女が私に気づいてじっと私を見つめてくる。

きっと信じられないのね、同じ高校に入学してきたのがまさか私だなんて。



その様子に気づいた友里菜も、女の見つめる先を追って視線を此方に向けてきた。

はっとして直ぐに身を翻し、建物の中へと慌しく姿を眩ませる。

建物の中を上へと向かいながら、私は少々手荒な作戦を実行しなければと焦り始めた。








**







一緒に飲みに行こうと押せば、何だかんだ言いつつも最後は潔く乗ってくれる。

友里菜の初めて見る私服は新鮮で、胸元が開いたカットソーは女性らしさを引き立てる。




お酒はそこそこ飲めると聞いていたので、早く酔ってほしくて彼女がトイレに立つ度に砕いた薬を酒に混ぜた。

酔っ払ってうっすらと頬が紅潮し瞳と唇が麗しげに振るえる姿はたまらなかった。






さりげなく、あの女の事を聞いた。




「あぁ、先輩はバイト一緒なんだよね。入った頃から良くしてくれて、めっちゃ面白い人なんだ」


「綺麗な顔してるのに服装はボーイッシュだし、性格も女っぽくはないかなぁ」





淡々と話始める彼女の話を聞いていた。

あの時の強烈な確信は間違っていたのだろうか。




だけど、最後の一言だけ。

想いが言葉に乗って溢れ出していた。







“そんな先輩が、私は好きなんだけどね”






その声に彼女の本音を見た。






「・・・・・・ね、今日お家泊まりに行ってもいいかな?」




家に上がりこんで、慎重にゆっくりと伝わるように、彼女へと伝えていく。





「・・・ねぇ、私が見せられない様な事してたらどう思う?」



「じゃぁ、私が女の子とそういう事してても平気?」







『そっか。私はまだ経験ないから判らないけど、恋愛に男も女も関係ないからね』




まだ、って?それはあの女とこれから経験したいの?

あの女が友里菜の初めての女になっちゃうの?



やめて、私にして欲しい





「ねぇ・・・私じゃ駄目?私だったら、あの人に出来ないような幸せあげられる、友里菜のこと、恋愛の“すき”だから」





驚きに目を瞠って此方を見上げてくる友里菜は可愛くて、思わず口元が緩む。

いけない、普段はきちんと笑顔を作っているのにこんな表情を見られたら嫌われちゃうかな?

でももう良いよね、今はアナタが欲しくて仕方ないの。

大分薬も飲ませたから、明日になれば記憶が飛んじゃってるかもしれないけれど。




頬を撫ぜていた手を顎へと掛けて、彼女の柔らかい唇へキスを落とす。

漸く現状に我に返った友里菜は身体を捩るが、薄く開いた口内へと舌を侵入させて舌を絡めとればすぐさま大人しくなる。


その反応に歓喜してより貪るように口内を犯していく。



可愛い、苦しそうに息を詰めて手を回し、私に縋ってくる友里菜は今は私のもの。

友里菜の身体は熱くて私が融けてしまいそう。




「っは・・・梨乃」



「ねぇ、私の事きらい?」



「そんなわけ・・・でもあたしの好きは」



「こういう事じゃない?じゃぁ」






首筋に舌を這わせて耳朶を甘噛みすれば、ぴくりと震える身体。

押し返す力はそろそろ尽きたようで後は私にされるがまま。



「こういう好きにしてあげる」



耳元で低く告げれば涙目になった友里菜が求めるように私を見てきた。

傍からすればこの瞳は求めてなんかいないかも知れないけど、私にはそう感じるの。

この感覚が本当に堪らなく好き。



露になった肩にキスをしてから噛み付いた。










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