第三話②
実家に到着すると、車から降りて一度大きく伸びをした。今日はなんだか道が混んでいていつもよりも時間がかかった。ここのところ忙しかったせいか、疲れも抜け切れていないようだ。若い時はへっちゃらだった気もするが、40も半ばを越えてくるとすっきり目覚めることもなくなっていく。
荷物を取り出すと、車の鍵を閉めて実家の門を開けた。そして、期待を込めてポストの中を覗いてみたのだが、
「なにも、なしか。」
肩透かしを食らったような気分だが、ポストの中には何も入っていなかった。しかし、何も入っていなかったということは、少なくとも送った手紙たちは先方に届いているはずだ。だが、今までの返信のペースを考えてみると、1ヶ月月近く過ぎているのに返信がないのはいささか疑問もあった。今回は自分の手紙だけでなく、兄夫婦家族と一緒にみんなの手紙を入れた。もしも相手が全員に返信を書いているのなら、時間がかかっているのかもしれない。
そんなことを考えながら、私は実家の片付けに取り掛かった。手紙が来ていない以上、ここでやることはひたすら片付けることだけだった。
その後も、何度か実家の片付けをしに、兄と入れ替わりで実家を訪ねたが、母を名乗る手紙の返事が届くことはなかった。そうこうしているうちに季節はすっかり秋になり、半そででは肌寒く、ジャケットを羽織るようになり、山々では紅葉が木々を染めていった。
「ふぅ。」
その日の夜、自宅のリビングでコーヒーを飲んでいると、
「そんなに気になるなら、横浜の住所に行ってみたらどう?」
そう提案してきたのは妻の美雪だった。
「ため息つくほど気になっているんなら、それが一番手っ取り早いでしょ?」
無意識にため息を吐いていたらしい。美雪が呆れ顔でコーヒーのお代わりを注いでくれた。確かにそうだ。最後の手紙を送ってから3ヶ月が過ぎたはずだ。確かに、今までのレスポンスを考えれば何かがおかしい。そうしてみようかと思ったら、美雪も休みを合わせて付き合ってくれるようだ。
「だって、私も気になるもの。」
そんなわけで、次の週末が休みだったために、美雪と一緒に横浜の住所へ出向いてみることにした。小回りが利くように、電車で都心を抜けて、横浜の郊外にある住宅地を目指した。横浜と言えば、中華街やみなとみらいのイメージが強いが、横浜から横須賀のある三浦半島に向けて、だいぶ起伏の激しい地域だ。私や兄の住んでいる地域は東京からすると内陸に当たるため、圧倒的に平地が多い。駅から目的地のある住宅街に出るまでも、けっこうな坂を上り下りした。
住宅地の一角。先日、真涼ちゃんに言われてみたGouglemapで見たとおりの屋敷がそこにはあった。表札にも『川上』と書かれている。念のため、ポストの脇に表示されている住所を調べると、間違いなく手紙の住所になっていた。
いざ現地の前まで来ると、なんだか年甲斐もなく緊張してきてしまった。勢いでここまで来てしまったが、何をどこからどう説明すればいいものか。
どうしようか悩んでいる横から、美雪がインターホンを鳴らした。
「お、おい。」
「悩んだってしょうがないでしょ? ここまで来たんだから腹をくくりなさいな。」
こういう時、元陸上部出身の美雪はとても思い切りがいい。慎重な私に比べ、時に大胆な行動に出る。インターホンを鳴らされてしまった以上、言われたとおり腹をくくるしかない。私は深呼吸して背筋を正した。
続く
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