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第二話⑤

 手紙を書き終えると、私はいつもよりも大きめの封筒を取り出し、みんなが書いた手紙を入れた。みんな何を書いたのか、恥ずかしいのか見せあうようなことはなかった。封を終えると、まずまずの厚みと重みになったので、念のため切手を2枚張ることにした。


「これでよしっと。」

「お父さん。章信とキャッチボールしてきていい?」


 ここから歩いて2.3分のところに、大きな運動公園がある。子供のころはそこでよく遊んだものだ。最近は、ボール遊びやラジコン、自転車の乗り入れさえ禁じている広い公園があるが、いったい何をして遊ばせる公園なのか疑問に思ってしまうところも多い。しかし、ここの運動公園は広いので、周りに気を付ければキャッチボールをしていても怒られることはない。


「小さい子がいたら気を付けるんだぞ。」

「はーい。」


 二人は物置からグローブとボールを持ち出すと、楽しそうに公園へ駆けて行った。あのグローブは昔、兄や父と一緒にキャッチボールをした古いグローブだ。


「さてと、俺たちは片付けやっちゃおうか。」


 兄の提案で、残った私たちは家財の片付けに取り掛かるのだった。


 その日の晩、私は久し振りの実家の布団になかなか寝付けずにいた。夕飯は予定通りプレートを引っ張り出して焼肉パーティを行った。兄と一緒になっての食事など久しぶりだったため、しこたま飲み食いしてしまった。兄はそこまで酒に強いわけではないが、勧め上手なせいもあって、ついついたくさん飲んでしまったのだ。先に寝落ちしたのは私だったが、ほんの30分ほどだったらしい。起きた時には美咲と真涼ちゃんがお風呂からあがってきたところだった。


 ほどなく就寝になったが、さっき寝てしまったからか、酔いがさめたからか、寝ては覚めてを繰り返した。時計に目をやると午前二時。もうみんなすっかり寝てしまっている。隣で寝息を立てている海斗は、ずいぶん章信君に鍛えられたのだろう。ぐっすり寝ていた。美咲は真涼ちゃんと寝るんだと、別室で休んでいる。兄と愛さんは一階で休んでいる。


「寝れないの?」


 美雪が声をかけてきた。


「ごめん。起こしちゃった?」

「ううん。ちょっと飲みすぎちゃった。なかなか眠れなくて。」

「僕もなんだよね。」


 二人して暗がりの天井を見上げた。エアコンをかけているが、それでも何となく寝苦しい。あまり強くかけるとだるくなるし夏バテするので、いつも弱めにしているが今夜は特に寝苦しかった。


「美雪、あの手紙のことどう思う?」

「ふふ。よっぽど気になっているのね。」

「そりゃそうだよ。死んだはずのお母さんから手紙が来るなんて、普通に考えなくてもあり得ないことじゃないか。」


 再び静寂が室内を包んだ。時折、外から虫の鳴き声が聞こえてくる。今年はセミも少ない。秋になるのは早いのかもしれない。しばらく沈黙が続いたが、何か思うところがあったのか、美雪が口を開いた。


「愛さんの提案で、みんなで手紙を書いたじゃない? 今度の手紙の反応を見てから、次のことを考えればいいんじゃないの?」

「次のこと。例えば?」

「少なくとも、お母さんの名前で横浜の住所に手紙が届いているのなら、行ってみてもいいかもしれないわね。」


 どうしてそんな単純なことに気が付かなかったのだろう。言われてみればその通りだ。いくら手紙を送ったからといって、普通ならあて先不明で戻ってくるはずだ。その住所に届くということは、少なからず受け取った人がいるということだ。そして、その受取人が返信をしたためてくれているに違いない。でも、どうして?


「あなたはなんでも難しく考えすぎよ。もっと単純に考えて、この状況を楽しまなくちゃ。」

「楽しむ?」

「だって、亡くなったお義母さんから手紙が届くなんて素敵じゃない。でも、そんなことありえないんだから、誰かが書いているはずでしょ? それが誰なのか、考えるだけでもワクワクしない?」

「お前さんはポジティヴだよな。」


 美雪の言う通りで、普通に考えれば母のふりをして書いている人物がいると考えるのが妥当なところだ。母と同じ筆跡と、家族しか知らない事柄を書かれていたために、すっかり不可思議な出来事として惑わされてしまっていた。普通に考えれば、いくらでも現実的なことを推測できる。



「どうやら、僕は自分で思っているよりメルヘンチックらしいな。」

「かわいくていいじゃない。」


 くすくすと笑う美雪に苦笑いで返すと、私は身を起こして立ち上がった。


「どうしたの?」

「眠れないからさ。散歩がてらみんなの手紙をポストに投函してくるよ。」

「ふふ。不審者だって捕まらないようにね。」


 美雪はそういうと、海斗が寝返りを打ってタオルケットを蹴飛ばしたのでかけなおしてやるのだった。


 幸い、Tシャツに短パンという姿だったので、そのまま実家に置いてあったサンダルをつっかけて外へ出た。今夜は少し風があるようだが、深夜でもまだ昼間の熱気が残ってしまっている。私は鍵をかけると、手紙を投函するためにポストへ歩いた。


続く

ここまで読んでくださりありがとうございます。

m(__)m


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