第二話④
私は待ち切れずに、その場で中の手紙を取り出した。横書きの便箋には、前と同じように母の字で手紙が書かれていた。
『たぁくんへ
また手紙をありがとう。手紙なんてあまり書いたこと
なかったたぁくんが、こうやって何度も書いてくれるこ
とがうれしいです。
今、雨の音を聞きながら手紙を書いています。今年の
夏も厳しい暑さが続きますね。お身体は大丈夫でしょう
か。どうしても年を取ると、エアコンは身体に悪いと思
いますが、ついつい甘えてしまいますね。幼いあなた達
と過ごした日々は、ここまで暑くなかったと思うのだけ
れど、年々、やっぱり暑くなっているのかしらね。
今日みたいに雨の日は暑さもしのげるので、今日はエ
アコンではなく、リビングで外の風を入れながら、雨の
奏でるいろいろな音を聞いて楽しんでいます。雨の音が
楽しいということを、子供たちにも教えてあげてくださ
いね。もう、すっかり大きくなったでしょう。
熱中症に気を付けながら、身体に気を付けてください。
私もできることならあなた達に会いたいです。
母より』
他愛もない内容だ。本当に母と手紙のやり取りをしているようだ。この不思議な感覚だけは何とも形容しがたいと思った。いかんせん、体験したことのないことだ。
「手紙、届いてた?」
「うん。また、お母さんからだった。」
気になって外に出てきた美雪に、私は今しがた開封したばかりの手紙を渡した。死んだはずの母親から届いた2通の手紙。仏間に戻ると、その2枚をテーブルに広げ、兄ともども腕を組んで考え込んでしまった。
「まったく不思議だな。」
「雨の音の話は身内じゃないと知らないし、何と言っていいか。。。」
その時、愛さんが面白い提案をしてきた。
「ねぇ。今度はみんなでお手紙書いてみたらどうでしょう。」
意外なことに、美雪も兄もその提案に乗ってきた。
「そうだな。面白いかもな。」
「私も、お義母さんに伝えたいことがたくさんあるわ。」
それから、母の残してくれた便せん達を思い思いに取り出し、みんなで手紙を書くことになった。いきなりこんな枚数が届いたら驚くだろうか。いや、お母さんならきっと喜んでくれるだろう。
「お父さん。絵を描いてもいいかな?」
「ああ。喜ぶんじゃないか。」
美咲はどこから取り出したのか色鉛筆のセットを持ち出してきた。なんか見覚えがあると思ったら、ケースには「3年2組10番 北章忠」と書かれている。そうだ、小学校のころに買ってもらった24色の色鉛筆セットだ。こんなのまだ残ってたんだな。
「お父さんの写真が入ってたよ。」
と、笑いながら美咲が差し出してきたのは、高校時代の私の証明写真だった。多分、アルバイトの面接に使う履歴書用のものだ。
「どれどれ。見せて見せて。」
「へぇ。章忠君、今より全然細いじゃない。別人みたい。」
嫁二人が笑っているので、私は気恥ずかしくなり、ひったくるように美咲から証明写真を奪い取った。かつて見慣れた顔がそこにあったが、我ながら細かったと思ってしまう。
「まったく。なんでこんなもん残しておくんだか。」
私は苦笑いしながら証明写真をカバンの中にしまった。実家の片づけをしていると、時折、よくぞこんなものを残しておいたくれたと呆れる物が出てくることが多い。二階のかつての兄の部屋を整理していた時に、高校時時代に兄が愛さんにあてたラブレターが出てきた時は、笑いながらそっと兄の卒業アルバムの中に入れておいた。しっかり、中身の熱い内容を読んで笑ったのは内緒だった。
続く
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