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愛する水野さんへ

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愛する水野さんへ。あなたに伝えたいことはいつだって、溢れるほど僕の心のなかで渦巻いているのに、こうやっていざ形にしようとすると、蜃気楼のよう に形を失ってしまいます。僕はあなたに自分の気持ちを伝えたいだけなのに、どんな言葉も並べてしまうと陳腐に思えてしまって、何度も何度も描き直しては、 ただ、時間だけを浪費しています。いつだって、何をしていたって、心のなかに浮かびます。あなたのその艶やかな黒髪、潤んで輝くダークブラウンの瞳。全ての悲しみを溶かすような、春の木漏れ日のようなその笑顔。僕はあなたを遠くから見ることが精一杯で、それでもあなたのことをもっと知りたくて、だから僕は、溢れ出るこの思いを、この一通の便箋に託そうと思ったのです――


-----------------------------


「――では先輩。弁解をどうぞ」

「コロシテクダサイ。ヒトオモイニコロシテクダサイ」

「日付から考えるに、先輩が高校生の時ですか」

「ハイソウデス」

「先輩の家の中に残っているってことは、出して送り返されたか、そもそも送ることが出来なかったか。まあ後者でしょうね」

「オッシャルトオリデス」


  毎度いつものように俺の家に訪ねてきた中村さん。今日は何やら掃除道具をご持参のご様子。


「先輩の家は人の住める環境ではありません」となんとも無礼なことを言って、なにやら勝手に掃除をしはじめた。別にごみごみした環境が好きだからゴミゴミした生活をしているわけでもないので、拒絶もしないで適当に手伝いながら大掃除をしていたらこれである。


思い出が詰まって腐臭を放つメモリアルダンボールの中から、中村さんが発掘してしまったのは、俺が高校時代に好きだった女の子に当てたラブレターだった。今すぐここで死ぬか、5年前の自分を抹殺するか、2つに1つだった。


「水野さん愛されてますね。どんな人だったんですか?」

「高嶺の花だよ。クラスの中でひときわ目立ってた。いつだってクラスの中心で、笑顔を絶やさないで、誰にだって別け隔てなく付き合って、いつだってかっこ良くお洒落に制服を着こなして、勉強もできて、それでいてカレーのじゃがいもは外道みたいなバカ話で盛り上がったりもできて、眩しかった」

「気持ちは伝えたんですか?」

「伝えたら俺のこと嫌いになるんじゃないかって、それだけが怖くて、卒業まで何も言えなかった。卒業式、勇気を振り絞って水野さんに会いに行った。でも先客がいて、目の前で水野さんは幸せになった。両思いだったらしい」

「……」

「こんな手紙、まだ残ってたんだな。全く。5年も経ってるってのに。急に全部思い出しちまった。なんでこんなもの残してたんだろうな」


 俺が手紙を引き裂こうとしたところを、中村さんの手が引き止めた。驚いて中村さんの顔を見ると、中村さん自身も驚いている様子だった。自分がなんでこんなことをしているのか、わからないといったような表情で。


「なんだよ。こんなものここで破ったほうがいいだろ」


 中村さんは、首を横に振る。その表情はどこかさみしげで、いつもの中村さんらしくなかった。


「やぶっちゃ、ダメです」

「なんで」

「ダメなんですよ」

「だからなんで」

「だって先輩、こんなに一生懸命で心のこもった文章じゃないですか。先輩の魂がこもった文章じゃないですか。からかったことは謝ります。勝手に読んだことも謝ります。だからこの文章はやぶっちゃダメです。ちゃんと残して置かないと」


中村さんはなんでこんなに必至になっているのか。たかが高校時代のこっ恥ずかしい恋文だ。それがなんだっていうんだ。今すぐ破いて、記憶から永遠に消し去って、水野さんのことだって、忘れて。それで。涙がこぼれた。ああ、俺は水野さんのことが好きだったんだ。


5年も前のあの気持ちが、まるで今目の前に現れたようで、視界が歪んで、頬を涙が伝った。中村さんが、抱きしめてくれた。中村さんのブラウスとカーディガンに俺の涙と鼻水が混ざった汚いものがべったり付いて、謝らないとと思っても、涙も嗚咽も止まらなかった。

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