異世界転生? それとも夢??
あああー、よく寝たわ。
いつもと違って、結構、朝遅い時間に目が覚めたことに気が付いた。
うわ、やばい。早く学校にいなかくちゃっ。
短大を出た後、調理学校に再入学してはや数年。もう少しで卒業というこの時期に、いただいた調理学校アシスタントという美味しいお仕事。アシスタント職が評価されれば、この学校で雇ってもらうこと前提のアルバイトなのだ。
今日も、シェフたちが出勤してくる前に、早めに出勤して、準備しておくことが沢山あるのだ。
調理学校アシスタントの朝は早いのだ。
がばっと飛び起き、慌てて半身を起こした瞬間、ふと感じた違和感。目の前に広がるのは、狭いワンルームマンションのベッドではなく、洞窟(ほら穴ともいう)の入口とその先に広がる森。
あれれ?
もしかして、まだ夢の中かな。
だとしたら、ラッキーだ。時間は気になるものの、まだもう少し惰眠をむさぼろう。
そう思って、洞窟の床にしいてあった藁のようなものに、なけなしの毛布を頭からかぶって寝ようとしたら、なんだか毛布が引っ張られる感覚が。
くっそ、私の睡眠を邪魔する奴は誰だ。
すこし顰蹙のこもった目で見れば、そこにいたのは、なんと大き目の銀ぎつね。
「え? きつね?」
寝起きではっきりしないぼんやりした目で狐を見ると、その狐はなんだか起こったような顔をして、私の頬を鼻でつんつんしてくる。
どうやら寝るな、と言いたいらしい。
誰かが見ていたら、今の私の目は、キラキラと輝いているだろう。だって、目の前に、ふんわり、もふもふのもっふぁーっとしたきつねがいるんだよ。
大切なことだからもう一回言おう。
もふもふの狐が目の前にいます!
子供の頃からもふもふ好き。毛のあるものなら、毛虫以外なら大好きというほど、もふもふマニアな私。
当然、することはたった一つな訳で!
がばっとモフモフに抱き着くと、狐は嫌そうな顔をしつつも、逃げるそぶりはなし。
ということは、もふってよろしいのですね。
そうであれば、とここぞとばかりに狐のふわふわを抱きしめ、頬を摺り寄せ、その感触を楽しんでいると、また変か感覚を感じて、その手を止める。
このきつね、なんだか大きくないですか?
パッと目、ゴールデンレトリバーくらいの大きさに見えるのに、私が抱き着くと、まるで超巨大なくまさんのぬいぐるみサイズみたいに感じる。
んん? んんん?
おかしいなと思い、自分の手を見ると、モミジのようなちっこい手が目に入る。
「あれえ?」
ふと口から出た言葉は、まるで幼児のようなあどけない声で。
少しの違和感がますます大きく、ますます不可解になって、思わず立ち上がると……。
視線の高さが一メートルにも満たない。
慌てて自分の体を見ると、20歳の女の子の体ではなく、そこにあったのは、お腹ポッコリの幼児体系。
まあ、夢だからね。しょうがないか。
そう思いつつも、夢とはまるで違う現実感ありすぎの状況にさらなる不安を感じる。
……ちょっと洞窟の外を見てみようかな。
とてとてと拙い足取りで洞窟の入口まで出て、そーっと外を覗くと見たことがない草花が茂ってました。
もしかして、異世界?? 異世界なのっ?!
それでも、まだ自分が夢を見ている可能性もあると慌てて思い出して、頬をパンパンと叩く。
ほら、夢なら早く冷めないと。
今日も朝から調理学校の授業があるんだよん。早く行って、席を取らないと。後ろの席だと、先生の手元が見えなくなるんだよん。
早く目が覚めろと、自分の頬を叩いたり、つねったりしている自分を、銀ぎつねは呆れた目で眺めていたのだった。
(続く)




