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7 地味女の熱い夜

今回、恥ずかしながらの回なので、

小さいお姉さんは、避けましょう。

「ビアンカ〜〜

疲れました!

今、帰りました!」


エイブ様は、馬車から、転げるように降りて、ひょろひょろと私に近づきました。


あら、本当に仕事だったのですね。

目の下にクマができています。


エイブ様は、両手を広げて、私を包みました。

森の香りと、胸元のジャボがくすぐったい。そして、吐息が髪に。


ううーん、やっぱり

……好き。


「……やっと貴女に会えた」

「お疲れ様でした。

お食事の用意が整っておりますよ」


私は、エイブ様の手をとって、晩餐室に誘いました。

励まし隊は、満足げに、それぞれの仕事を再開します。


晩餐の間、エイブ様は饒舌でした。

主に仕事の事です。


宮務官として出仕して3年。

なかなか細かい上司に叩き込まれているそうです。出自だけでは泳いでいけない部所だから、忖度は一切ないと。


でも、2年ほど辛抱すれば、位は上がって、行く行く爵位を継げば、長官や大臣へ登りたいこと。


そのためにも、今は、任務に邁進しているのだと。


「新婚の私を拘束した分、明日から3日は、お休みが貰えました。

寂しくさせた分、御奉仕しますよ奥様」


エイブ様は、上機嫌。

私も、やさぐれ女をうっちゃって、嬉しく思いました。


……後で考えたら、結婚式の翌日から、昼夜ぶっ続け勤務を公爵家嫡男にさせる上司なんて、有り得ないんですけど、ね。



そして、夜。


寝室は、既に灯りを落とし、フットライトとテーブルのランプ、そして、窓辺にキャンドルをセットして、静かな夜を演出しました。


ガウン姿のエイブ様は、少しお酒を召し上がってらして。

私は、ミルクを頂きました。

隣合って、座って。

エイブ様は、機嫌がよく、ゆったり腰掛けられて、グラスを舐めていました。


「母が来たそうですね。

タウンゼントから聞きました」


あー、タウンゼントさん、きっと皮肉って伝えたでしょうね。

彼は、夫人が大嫌い。多分。


「あ、はい。

イライザさんと一緒に。

今度から、週に3日は、本家に来るように、と。ご教授下さると」


「……洗練された侯爵家で育ったビアンカに、何なのだろうね。

すまないね。

母は、少し感情的だが、悪気はないんだ。少し、付き合ってあげればいいから。

無理を言ってきたら、遠慮なく私に言いなさい。断りを言うから」


ああ。

エイブ様。いい人。


洗練された、という言葉に、私の胸のつかえが取れました。

この人は、ちゃんと、私や実家を重んじて下さる。


そんなふうに感じた私は、知らずに微笑んでいたようです。

すると私に、背中から腕を回したエイブ様が、そっと抱いてまいりました。


……今夜こそ……?


「……今夜の君は、何だか……

ああ、そう、ジャコウの香りがする」


うふふ。

効果てきめん?


私の夜着(今夜は、励まし隊オススメの白のタフタです!)

に、励まし隊が、香を焚き染めてましたね。

ジャコウは、媚薬なんですって♪


(思う存分、押し倒されて、くださいまし!)

なんて、念を押されて。


ドキドキ


思わず、立って腕から逃れようとする私でしたが、エイブ様の腕の強さに、為す術もなく。


お姫様抱っこで、ふかふかのベッドに運ばれましたー!


しどけなく、私の夜着が、はだけます。

前髪は、変わらず目を覆っておりますが、髪はうねって、シーツに泳ぎます。


ガウンをするっと脱いだエイブ様は、横たわる私を見て、かすれ声で、

「凄いな……見事なプロポーションだ。

ドレスの下に、こんな」

と、おっしゃったのです。


「は、はずかし…い」

私は、前を重ねればいいのに、火照った顔を覆ってしまいました。

頭隠してなんとやら。


「……思った通り。

貴女の立ち姿の良さは、この身体のおかげなのですね。

ああ、役得だ。

私だけのものだなんて」


あっ、エイブ様。

夜着の上から、さわさわしないで。


「エイブ様……」

「エイブ、だ」


ちゅ、と、うなじに口付けを落として、エイブ様は、言い直させます。


「今夜は、君に、沢山、名前を呼ばせるからね、ビアンカ」


……恥ずかしい。



寝室の灯りを落とし、エイブ様は、その言葉の通り、私に、沢山、名前を呼ばせました。


時に甘く、

時に余裕なく、

時に悦んで。



エイブ。

ハードなお仕事あがりなのに、どうしてこんなに、体力に溢れてるのっ?


「……

私の、妻は、

昼は、あんなに落ち着いた貞淑な姿なのに、

夜、は、こんなに……

ああ、ビアンカ、君は、素敵だ」


エマ、伯母上。


あんな事やこんな事って、


……素敵なんですねっ!





森の香りに包まれて、ようやく眠りについたのは、明け方で。


働き始めた励まし隊と、タウンゼントが、廊下で、無言のガッツポーズをしていた頃、

私はやっと、『エイブの妻』になった歓びの中で、寝こけておりました。



それから、3日間。


昼間は、お茶を楽しんだり、庭を散歩したり、

夜は……で♡


1日目は、東の国っぽい夜着と香。


2日目は、ちょっとエロチックに、長い花嫁ベールだけの、わ、た、し。


3日目は、

さて、どうしましょ。


わあい伯母上、

楽しいですー。


「美女は3日で、飽きる」

と、おっしゃったアレックス兄様のお言葉を胸に、

あんな事やらこんな事やら、

ムードで、飽きさせまいと努めましたわ。

タダですら、地味女なんですから!


そして、

私とエイブは、すっかり仲良し夫婦となったのです。


別邸は、桃色の空気に包まれておりました。


タウンゼントはニコニコしているし、

励まし隊は、それまで以上に励んでいるし、

エマは、影で嬉し泣きしているし。


思えば、この3日間は、私のロックフォードとしての、最上の3日間でした。


「君が妻で、よかった。

君を娶った私は、幸運だ」


テラスで日向に座り、本を抱えたエイブが、しみじみと、幾度も言って、

私の、もっさり前髪で隠れたアメジストの目に、うっすら涙が滲みました。


お父様。

ビアンカは、女の幸せをいただきました。


この時の私は、1年後の賭けに、既に勝った気分でおりました。

でも

私はこの時、

気づいてないのです。


……いまだ、エイブが

唇にキスしていないこと。



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