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48 地味女 責める攻める!

「では、彼女が、身体でエイブラハムをつなぎ止めていた証拠物件を提示します」


証拠書類①

高級長期滞在型宿泊旅館 (ペントハウス) 契約書 1通

エイブラハムの手紙及びサインの対比による筆跡鑑定書等 1冊


「こちらは、夫がよく泊まっていたペントハウスの契約書です。

高級なところで、彼は月極で借りていたようですね。

通りで、家にお金を入れないはずです」


「……それは、君が何も言わないから」


ほおう。


「嫁いで見れば、別邸は、修繕や改修が必要な住まいでしたわ。

ご両親からも、何も仰らないし、執事に問えば、本家からの支援は承っていませんと」


「馬鹿な!

私は、この結婚にあたり、息子には相応の祝儀を渡したぞ!」

ジジイ、立ち上がりかけました。

ほおう。


「タウンゼントは、何も」

「エイブラハムっ!」


真っ赤に染まったジジイは、夫を一喝。

「一年はっ、お前が難儀しないだけの金を渡したではないか!

何に、まさか」


エイブは、項垂れて、肩が震えています。


「こちらは」

私は無視して続けました。

「ペントハウス借り上げの領収書です。向こう2年は、自由に過ごせるようですわね」


「こ、の、馬鹿者!」

「お静かに」

ダン!と、杖の音。


王妃殿下、楽しそうー。


公爵家サイドは、イライザ以外、激しく動揺。

ジジイは真っ赤。

ババアは真っ白。

エイブ、石。


侯爵家サイド、胡桃。


「つまり夫は、生計は私の資産から持ち出させ、自分の給料と義父からのお金は、自由に散財しているのですわ」


「……公爵家嫡男が、金を持っているのは分かった。

ペントハウスを借り上げたのは、真に嫡男ですか?」


王妃が、一応公爵家に顔を立てました。というより、話を進めたかったんですね。


ウザークは、筆跡鑑定書を呈示。

「サインは、偽名。

筆致は、エイブラハム様のものと、ほぼ一致しました。

偽名は

フラジオ……

フローラさんの、旧姓です」


くうぅ……と、公爵が食いしばって呻きました。

じじい、ちょっと可哀想です。


「公爵家の嫡男。

まことですか?」

王妃が尋ねます。


「え、は……はい。

借りたのは……私です」


エイブラハムは、かいてもいない汗を拭いています。

「初恋の相手を思って……

偽名を書きました」


「そうよ!

エイブは、私たちの純愛をいつも大切にしているんだわ!

結婚しても、心は自由。

エイブの心まで、裁くというの?」

「フローラ……」


男爵は、強ばった頬をヒクヒクさせていました。心は自由だと妻に言われちゃ、たまったもんじゃないですよね。


「初恋、純愛。

そんなものが、私やロズベル男爵様をないがしろにしていい権利は、ございません。

それに、あなたがたの純愛とやらは、このようなものでしょうか」



証拠物件①

写真数枚



「ひっ!」

「……」

「イライザっ!見てはいけません、はしたないっ」


公爵家サイド、あわあわ。


ウザークは、淡々と

「こちらは、そのペントハウスで撮影された写真です。

お二人の状況からも、身も心も、

不倫に走ったと確定されます」

と、述べました。


そして、1枚ずつ説明して差し上げてました。うふっ。


「1枚目。

扉を開けた時のお二人。

しどけない姿でお過ごしだったようです」


「2枚目。

男爵夫人のお姿です。

シーツのドレスがお似合いです」


「3枚目。

ベットの下に、お二人の着衣と下着がありました」


「4枚目」「もうやめて!もう沢山!」


フローラが男爵に叫びます。

「違う!違うの!

あなたっ

私は彼との初恋を大切にしたいだけだったのに、

彼が無理やり!」


アホ夫、黙っていられません。

「何だって?

私達は、相愛。

君はいつも、愛していると抱かれ……あ、あっ!」


あーあ。

認めちゃった。

浮気、認めちゃったー。


アホ夫でも、口が回りすぎたことに気が付きましたね。


「無理やり、の、関係なの?」

「……いいえ」

「そうよ!」


アホ夫は、フローラを恨めしそうに見ています。裏切られてショックなんですね。


「私は」

割り込むことにしました。


「ペントハウスで、こう言われましたわ

(貴女は、お飾りの妻

本当の妻は、私だわ)

と。

そして、結婚式の翌日から、二人は、本当の新婚旅行に一週間も出かけたのです。

新妻の私を置いて。

そして、彼女は、こうも言いました。

(惨めよねえ!顔はお粗末で、家柄だけは良くって

1週間、たっぷり私の匂いが染みた夫に、初めて抱かれた時、どんな気分だった?)と」


ゴキゴキゴキゴキ!

侯爵家サイドから、

連続クルミ割り。


パァーン!と、張った音が響きました。

男爵がフローラを叩き、肩で息をしています。


「離縁だ。

……ビアンカ殿。私は、まだここに居なくてはなりませんかな?」


「申し訳ありませんが」

私は、冷たく答えました。

「まだまだ、貴方と妻には、聞いて頂きたいことがございますわ」


しぶしぶ、男爵は腰を下ろしました。手枷のため、打たれたフローラは、椅子から転げ落ちてしまい、警官が起こしていました。


「公爵家嫡男。

……本当に、妻を置いて旅行へ行ったの?」

王妃殿下が、険しい表情で尋ねます。

そうです。そんな話に乗ったアホ夫が責められるべきなのです。


「……」

「応えよ」


エイブは俯いたまま、

「……本当です」

ガターン!


今度はエイブの椅子を義父が蹴り倒しました。もんどりうって、転げるアホ夫。


「馬鹿者!」

「止めて、貴方」

「お父様っ、怖いっ」


いやあ、その程度で済ませて貰っちゃ困るわねえ。


「ビアンカさん!」


公爵は、バン!と卓に両手を付いて、深々と頭を下げました。

頭頂の薄い頭が見えるほど。


「も、も、申し訳ない!

私は、侯爵家からのあんたが、困らないよう相応の事は、息子にしたつもりだった!

息子はてっきり、あんたに夢中だとばかり」


「夫とお義父様がなさった艶話の事ですか?

私とエイブの、閨の話、だったのでしょ?

そうでしたわね。

そして、酒の肴に、大タウンゼントに漏らして。

愚かな娘が、聞き耳立てていたとも知らず」


私は、追求の手を緩めません。


「……イライザが」

「違う…わっ…」


「いえ、そうです。

おかげで、そちらの娘は、学校でお友達に、お義父様が語った私とエイブラハムの閨の話を吹聴したのですわ。

……貴族の令嬢が、何と破廉恥な」

「言ってない!嘘!」


「嘘ではございません」


侯爵家サイドから、エリスが立ち上がりました。

腹の据わった未来の義妹です。


「エリス・リーンでございます。

イライザ嬢が、お友達に、ビアンカ様の噂話をしている場におりました。

余りの内容に、お諫めしましたが、聞く耳持たず

……まあ、その方々は、後日、それぞれの御母堂様から、お叱り頂いたそうです。

おかげで、学内でそのような醜聞は沈みましたわ」



「それで、貴女、お友達が遠くなったと……そうなのね?」

わなわなと、ババアがハンケチを絞ると、

わぁぁっ!

と、イライザは、羞恥に泣きだしました。


ニコリ、と私は感謝を示すと、エリスは着席。

満足げなアラン兄様の口元は、しっかり確認しましたわ。


「それに」


さあ、叩き込みましょう。


「夫の話に、その気になったのか、嫁修行のときに、お義父様は、密室で私の身体を撫で回しましたわ。

本当に、不快でした」

「なっ!」

「ち、違う!」


いやいや、クソジジイ。

やった事の責任はとらなくちゃね!


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