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44 地味女の侍女 夜会に出る

誤字報告ありがとうございました。

粗忽者ですみません





ビアンカ様の侍女 エマでございます。

ビアンカ様が、預かり知らぬ事を代わってご報告致します。


育ちのために、時折お里が知れますが、ご容赦下さい。



……侯爵閣下の事故との報に、ビアンカ様がエイブラハム様と、向かいましたが、我々スタッフは、計画通りに事を進めることにしました。


本来なら、私が付き添うべきなのですが、アラン様が寄越した迎えという事なので、お預けしました。


「お前は、絶対、夜会に出ろ。

今夜を逃すと、また2週間後になる。

エイブラハムとの不倫がバレると、フローラの活動が止まる可能性も、出てくるからな」

イーヴォが、私の判断を後押ししました。


「アンガス様も、多分、事故の対応に行くだろう。

他の捜査員が、誰なのか、俺たちには分からないから、

俺たち独自で、侵入しなくちゃならない。

男用の仮面は、一つ。

俺はいいとして、

お前、あの女を浮気現場から、送っていったんだろ?」

と、アル。


「大事無い。オレって、カメレオンだぜ?どんな男でも、なりきるさ」


そんな、やり取りで、

今夜のエスコートは、イーヴォ。

アルは、現場から逃げる為に、御者に扮する事となりました。


ウザークは……

「私はインドア派だからパス」

と、帰りやがりました。


まあ、足手まといは、御免ですからねえ。


アルは、イライザ嬢を本家に帰しました。

たんまりと宿題と飴を貰って、公爵令嬢は、ルンルンです。

あの飴、麻薬でも入っているのか?と言うくらい、効力があります。

あのアバズレが、小ウサギのように、私たち使用人にまで、

(ごっ機嫌よー♪)

と、去りました。


あのご令嬢の蜜月も、あとわずか。

アルの魔法から、解放される時が、地獄でしょう。


で、夜。

私は、〈エマ磨き隊〉によって、

あんな事やこんな事をされ、

悶絶のうちに


「……すげえ」「化けたぁ」

「エマさん♡」

「やりきりました!」

「悔いなし!」


という、声に迎えられ……


姿見の中には、私とは誰も思わないような、華やかな淑女がおりました。


まあ、悪い気はしません。

ビアンカお嬢様の、変身の快感が、ちょっと分かる気がします。


! は、磨き隊ですが、

♡ は……まさかのタウンゼントさん。


「どう切りとっても、伯爵家クラス以上のご令嬢です。

なんて、美しい……」

と、賛辞を下さいました。


おらおら。アルにイーヴォ。

こういう気の利いたこと、言えってんだ。


で、緑のウィッグのイーヴォが、貴族の不良息子となって、私の手を取ります。

(うひょー役得!いい女!)

と、ウキウキ。


……ま、良いでしょ。

及第点をあげましょ。


普段は、影の役割なので、このチヤホヤ感は、ドキドキしました。


いざ、仮面パーティ、です。


エントランスに着くと、

「ようこそ一夜の夢に

……二名様ですわね」


と、黒のマスクで顔半分を隠した、色ボケ超アバズレ浮気女……

失礼しました。

ビアンカ様の天敵が、居ました。


私が前回のビーニャ嬢の連れだとは、

そして、ビアンカ様と修羅場にいた侍女だとは、分からなかったようです。


誘われるまま、大広間に行こうとすると、

ぐい、

と、腕を取る男が。


思わず、背中から投げようとしましたが、その顔立ちに覚えがあったので、すんでのところで、留まりました。


『え……アンガス様?』

『お前、エマだね。

ビアンカは?どうした』


確かにアンガス様です。

凄い。流石に警視様です。私を見抜くなんて。

あっ、閣下は、ご無事だったのでしょうか。


(アンガス、あんた父親は、いいのか?)

イーヴォが近づいて、耳打ちします。

(父?何の話だ?)


私は困惑とともに、外つ国語で(聞かれちゃ困りますから)

『先程、迎えの馬車が。

閣下が事故に遭われたと。

旦那様とお嬢様が、向かわれて』

と、経緯を説明しました。


アンガス様の表情が、険しくなりました。

『私は、たった今、家から来たのだが。

父はピンピン……まさか』


まさか。


『……アラン様からの知らせだと』

『アランも家にいたぞ!

おい!』


いつもは品の良いアンガス様は、イーヴォの襟首を掴んで

(どんな奴だ、どんな馬車だ、

何処へ向かうと!)

と、小声で責め立てます。


襟首掴まれたイーヴォは、

(わ、分からねえ……

あっという間に、出ていったから)

と、声を絞り出して、

余計にアンガス様は、興奮なさって。


「お止め下さい!

彼が悪いのではありません!」


私はエントランスにいる者達の視線を感じて、わざと大声で言いました。


「クソ!

今日のところは、この女、貸してやるよ!」


さすがイーヴォ。

私の意図を察して、

入口で女を取り合った痴話騒ぎ、を

装いました。


「分かりゃいいんだ。行くぞ」

アンガス様も、乗っかりましたので、

イーヴォは、さっさと一人で中に入りました。


陰謀?

誘拐?

まさか、もう……


いえ!いいえ!

有り得ません!


『動揺するな、胸を張れ』

アンガス様が、耳元で仰りました。

まるで、甘い言葉を囁くようなフリで。


『犯人のあては、あるか?』


ぱっと、頭に浮かんだのは……

『尻軽浮気女……

あの、マダムです』


違いない。

あいつが、嵌めたんだ。

正論で攻めたお嬢様に、復讐する為に!


復讐。

女が女を復讐するとしたら、

どうする?何があいつにできる?

何で、今夜?

今夜


……あ

『あ』


『何?』


照明の合間の薄暗がりで、私とアンガス様は、接吻をするかの距離で、囁きあいました。


『……ひょっとしたら、ここに』

『拉致されたビアンカがここに、放り込まれた可能性が?』


アンガス様の頬が、強ばりました。


今夜

今夜、拉致した理由。

この仮面パーティが、開催されるから。


大広間の隅で、バルコニーで、テラスで、

そして、まだ見ぬ小部屋で、

この館は、どんな隠微なことが繰り広げられていることか。


『……女が女を貶めたいなら、

一番嫌な方法で、汚して仕舞えばいい……そんな……そんな』

『落ち着け!』


アンガス様は、私を抱きしめるフリで、叱咤しました。

足がガクガクしています。


ビアンカお嬢様!ビアンカ様!

ビアンカ様!


『お前は、エマだ!

冷静に対処しろ、できるね?

……息を吐いて

そう』


私は、くらくらするのを何とか押さえ込みました。

そうです

私はあの方の侍女です。


『アンガス様。

お嬢様は、茶色の普段着のドレスです。エイブラハム様も、一緒に拉致されたかと』


『……そうか。

よく聞け。

今日は、外に警官が待機している。主の在宅を確認したら、踏み込んで、全員しょっぴく算段だ。

……私の連れのお前達を除いて』


ガサ入れですか。

だったら!


『一刻も早く!

何かあってからでは、ダメです!』


『大立ち回りで、やけになった輩が妹に何かしたら、それこそ何かあってしまうぞ。

薬をやってる奴らは、予測できん』


『じゃあ、策はおありですか』

『まずは、妹を探せ

妹の身柄の確保。急げ』


私は、こくんと頷きました。


イーヴォは既に、そのスキル全開で、探索しているようです。

私も、アンガス様から離れて、フラフラと男を物色する女のフリで、彷徨いました。


(ビアンカ様、ご無事で!)


私は、手を伸ばす輩、もたれかかろうとする下衆、達をねじ上げ、突き飛ばし、すえた匂いの中、ひたすらお嬢様を探し求めました。






ブックマーク、評価、感謝です!

まだの方がいらっしゃったら……などと、欲張りを言ってみたり、あっ、ありがとうございますっ


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