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42 地味女の姑、凸する

私が臥せっている間に、様々なことが回っていました。


エイブは、出勤せず、今更ながらタウンゼントに、当主としての仕事を習っていたそうです。

私が、あれ程荒れ狂ったのは、大変こたえたそうで。

過ちへの後悔と、加害意識に苛まれて、先ずそこから!だそうで。


缶詰状態で、出納簿とにらめっこし、私の機嫌の凪をひたすら待っているらしいです。

知らんけど(怒)


イライザも、カードにスタンプ押してやろうか、ってな位、きちんとお勉強に来ているそうです。


相変わらず

(いやぁん)(酷い、でも嬉しい)

を連発して、

ただ今中等部一年位には、成長したらしい。

〈宿題〉も、〈自習〉も、こなしているそうで、この頃は、

〈放置プレイ〉の沼にハマったらしいです。


つまり、アルは、課題を出して、本来の任務についているのです。


任務。

つまりは、ビーニャの通訳、兼、エラントでの販路拡大の商談、ですよ。

男爵は、ぼったくり商売で、気をよくしたのか、もう少し、絞り出してやろうと、欲張ってるようです。


イーヴォの調査だと、こいつもクソらしいので、お似合いの夫婦ですよね。


フローラは、夫に告げたのでしょうか?


オペラハウスでの男爵は、トロフィーワイフとしてだけでなく、フローラを可愛がって居たような気がします。

だから、フローラに他の男がいるなんて、本人から告白されるのは、不本意極まりないと、思います。


それとも

歪んだ愛情で、赦してしまうのでしょうか。

そもそも、告白なんて、フローラのはったり、というのが可能性高いですよね。

裏で、あんなアコギなマネをしてるんですから。


マダム。


あれだけ素顔をさらして、良くぞ表に響きませんね。

それだけ、あのパーティが、やばいってことですかね。

エイブとのお花畑より、あっちの方が、夫にバレたら、大変なんじゃないですかね。


ベッドの中で、あれこれと考えている私ですが、心は決まっていました。


そろそろ、週末が近づきます。

一気に、カタをつけてやるわ。

早くベッドから出なくちゃ、と、

思っていたら、


(いけませんっ)(まだご無理です!)

バタバタという音と、励まし隊の声がしました。

と、


「ビアンカさんっ!

やったわね!

これで、アナタも、公爵家の一員よっ」


あー。くそばばあ。


「ごきげんよう、お義母様」

「ごきげんよ!

あー、アナタみたいな野暮ったい人でも、やることはやってるのね!

良かったわぁー」


何でしょう?

私は、くそばばあに喜ばれること、したんでしょうか。


「……あの」

「イライザがね!教えてくれたのよ〜

貴女が、吐いて臥せってるって!

もう、悪阻だなんて、

うふふ!いつ仕込んだのよぉ〜」


は。


つ わ り?


「でもどうかしらねー、病気じゃないんだから、動いた方がいいと、私は思うのよー

そろそろ、本家の嫁修行も、復帰したら、気が紛れていいと思うわ。

体調の変化も、掴めるしね!」


「お、お義母様……」


「エイブに似て、綺麗な男の子がいいわぁ〜

あ、女の子だったら、私が、イライザ並の美人に仕立てあげて見せるわ!」


「お義母、様」


「そうそう、お茶は薄めにね。

ワインも、ダメよ。

悪阻はね、食べつわりと、食べ物受け付けないのと、あるんだけど、

アナタ食べられる?」


「お義母様っ!」


「公にするのは、あとひと月待ちましょうね。

計算が合わないって、世間様に言われると、息子がガツガツしてたみたいじゃない〜♡

ねえ〜」


ねえ〜

じゃ、ねえ!


「とにかく「黙れ、くそばばあ!」


私は、遂に、心の声を暴いてしまいました。


ババア、あんぐり。


「私はつわりじゃありません!

エイブが

夫が、ガツガツして、

他所に女作って、

昼間っから仕事サボって、

旅館にしけこんでいたんで、

浮気現場に踏み込んで、

家に引き連れてきて、

ムカついたから、山ほどケーキ食べて、

食べすぎて吐いて、

ついでに夫の醜態思い出しては、

吐き続けているだけですっ!

腹の中は、すっからかん。

赤ちゃんどころか、ナーンにもありません!

アンタの息子は、

人妻にも種分けてやがるケダモノです!」


ゼーハーゼーハー


ああ、食べてないからか、酸欠からか、目眩がするわ……


ババア、情報過多で、フリーズしてます。


「……妊娠じゃ、ないの?」

「ないですわ」

「浮気?」

「ですね」

「くそばばあ……」

「言い過ぎました」


私は眼鏡をふきふきして、再び能面地味女に戻りました。


「罵って申し訳ありません。

ですが、私の状況をお考えになって、ここからご退出願えませんか、お義母様」


ようやく義母は、正気を取り戻しました。

「……わ、わ、私に出ていけ、と、言うのっ?」

「今の私は、貴女を敬える程の状態ではありませんから」


何よ何よ何よ!

と、義母は爆発。


「よ、嫁の分際で!

前から生意気で、上から目線だったけど、

よくも」


だーかーらー

「お義母様のお相手が務まるほど、回復しておりませんの。

どうぞ、玄関へ

エマ、いる?」

「ここに」


「公爵夫人をご案内して」

「一人で帰れます!

ったく、ぬか喜びさせて!」


勝手に誤解したのは、あーただろ?


「それに」

ふん!と、イライザそっくりの尊大さで、ババアは


「そんなだから、浮気されるのよ。

浮気なんて男の勲章。

そんな小さな事に動揺するなんて、公爵家の嫁が務まるのかしらね!」


うお?

今、さらっと、流しやがったな?


「貴女がつまらないから、あの子は」

「エイブのお相手は、ロズベル男爵夫人ですよ」


「な……」

ババア、ロズベルに反応しました。

「何ですって」


この際だから、ダメ押しましょう。

「お義母様も、ご存知の、

元婚約者

フレジア男爵の娘ですわ」


ババア、真っ青。

黙って、きびすを返しました。


「宜しかったのですか?」

エマが、扉を閉めて、私に訊ねました。

「言ってしまったものは、仕方ないでしょ?

私はエイブに、黙っていると約束した訳ではないし」


ちょっと早かったのよね。

でも、

ババアが今更動いても、大して影響は、ないと思うわ。


「エマ」

「はい」

「今ので、目が覚めたわ。

私は動くわ。

取り敢えず、スープをお願い」


エマは、ちょっと嬉しそうに

「承知しました」


「それと、エマ」

「はい」

「週末は、極上の美女に仕立てて上げるから、マッサージとシェービングをしてきなさい」


う、という喉からの呻きが漏れましたが、

「……承知しました……」

と、エマが下がりました。


階下で、義母がギャーギャー喚く声がします。

エイブを締め上げてるんでしょうね。

やっとれ。


さあ、アルが帰ってきたら、

ビアンカ・スタッフのミーティングよ……





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