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31 地味女 義妹から手をつけることにする

まずは、作戦会議。


メンバーは、ビアンカ・スタッフ。


「もし、このカードの住所でのパーティが、女子学生の事件現場だとすれば」

アルは、今日の出来事を他の三人に説明してから、言いました。


「旦那の女は、それに一枚噛んでる」


「て、ことは、ビアンカの小姑も」

「浮気妻と繋がってるってことね」


私は、ため息をつきました。

「あのカラカラ娘は、一応お嬢様よ。

単身、危ない所に入り込めるわけないわ。

誘った人がいる」


「フローラ……あの女」

エマから、ゴリゴリという音がします。


エマは、クルミを両手に持たされていました。

怒りは茶器よりクルミに、と、イーヴォが持たせたのです。ナイス。


「身分違いと、公爵家に袖にされたのを恨んでるんじゃないか?

公爵夫人の座に座れなかった恨みで、娘を堕とすつもりなんだろ」


イーヴォが、さっきエマが割ったクルミをコリコリ食べて言います。

殻をちゃんと捨てて!


「……旦那が、そのパーティに繋がってる可能性は」

「ない、と、思うわ。

長男である夫は、家族と家柄を大切にしてるし。妹をそんな所に行かせないはずよ」


エイブは、確かに私と価値観は違いますが、常識もあるし、人は良いのです。

ただの、初恋をこじらせた馬鹿なのです。


「……あんたが行くと言ったら、聞かないのは分かっているが……

エマ、いいな。くれぐれもビアンカを危険な目に合わすなよ」

「誰に言ってるのよ」


ゴキ、と、エマの右手から音がしました。イーヴォがいそいそと、代わりのクルミを持たせてます。


「そっちは、イーヴォとエマで対処してもらうか。鉱山の件は」

「進んでるよー」


ウザークがのんびりと参画します。

ざざざ!と、公爵家の書類を凄い速さでめくって、写真のように記憶しています。


「中抜きの行先は突き止めた。

貨物船の往来も、バッチリ。

ただねー国家に関わることだから、暴露の時は、お偉いさんを立ち会わせた方がいいよー」


ウザークは、独立事務所を構える弁護士兼司法書士、兼、税理士です。

ひと目で記憶するその異能のせいで、協働ができないですからね。


「仕事は選んでいるからね。

ビアンカの顧問弁護士として、浮気も不正も、どっちの件も動くよ」


ウザークは、オタクだけど、情は深いんです。


「助かるわ。

じゃ、男爵の方は」

「俺、だな。

多分、ふっかけてくるだろうから、その辺は任せろ」

アルは、ニヤリとSな笑顔でした。


それぞれの役割が決まったので、解散。


何食わぬ顔で、夕刻夫を迎えると、

「急ぎ本家にこいと、呼ばれたんだけど。

君、なんの事か分かるかい?」

と、言われました。


おお、早い仕事ですね、学長。



本家に向かうと、真っ先に、

「貴女!イライザの勉強、面倒見てあげなさい」

と、義母に言われました。


イライザは、泣いた後なのか、目元を赤くしていますが、私を見て、フン!と、そっぽを向きました。


ハテナハテナの、夫は

「何があったのか、ちゃんと話して」

と、至極常識的に返しました。


義母は激高して、

「あの髭じじい!

うちのイライザが、このままでは卒業まかりならん、と、ぬかすのよ!」


と、私の内心と同じお下品な言葉遣いで、叫びました。

学長。ヒゲじじい……うぷぷ


「卒業出来ない?」

夫が妹を見つめて、尋ねます。


義母は、ギャーギャーと、

「そうよ!単位が足りないって!

レポートも試験も、点数が足りないって!

公爵家をバカにしてるわ!」


いやいや、馬鹿にしてるんじゃなくて、馬鹿なんだってば。


「救済措置があっただろう?」


「……レポートを20と、口頭試問5教科で、可を取れば、卒業認定してあげようって

……みんな、普通に、授業を受けてるのに……

レポート仕上げない限り、通学は停めると……」


ボソボソ声のイライザは、しょげています。


「事実上の、停学か……かなり酷い扱いだけど、担任とは話したの?

イライザ、お前、何か思い当たる?」


夫が聞くと、スカスカ娘は、ブンブン頭を振ります。


「……無いわ!

全然、わっかんない!

私、何も、してない!」


悪い遊びして、

お勉強は、何もしてなかったんだろーが。

ふつーに出席して、ふつーに宿題出してりゃ、絶対そんな目に合わせないぞ、学校は。


「いいや。イライザ」


夫は、それなりに妹の本性をご存知でした。


「本当のことを言いなさい」

「……」

「言えるね?」


穏やかなエイブですが、嫡子の威厳は、効果がありました。

イライザは、今度は、はらはら泣きながら、


「……友達、が、ちっとも、一緒にいてくれなくて……ぐすっ

授業が辛くなって……学校から抜け出した日も、あったわ……

試験なんて、何も書けないし。

……宿題は、前は、友達が……写して、くれたり、譲って、くれてたし……」


うわあ。

学校行かずに、街にでも繰り出してたな?

ぼっちになる前は、イジメっ子の圧力で、弱い子を脅して書かせたり、提出前に奪って、自分の名前で出したりしてたんだな?


よくも、退学にならなかったなあ〜

良家とエリートのための学校で!


しかもわそれより極道劣悪なこと、

今回はやらかしてんだけど。


「……イライザ。

真面目に家で、頑張りなさい」


夫は、真顔で告げました。

こういうとこ、真っ当です。


「無理!無理無理無理!」

わあっ、とスカスカ娘は号泣。


義母は背中をよしよししながら、

「人間、得手不得手があるのは、仕方ないじゃない。

ビアンカさんは、学校のお勉強()()は良かったでしょう?

妹の窮地を救ってあげるのは、嫁の務めだと思わない?」


ほう。息子の前だと、口調がやわらぎますね。イヤミは、外しませんが。


それに対し、

「ビアンカだって、暇な訳じゃない。私の妻として、成すべきことが沢山あるんだ」

と、夫は庇ってくれます。いえい。


「大体、イライザ。

お前の性分で、ビアンカに習うなんて、出来ないだろう?

無茶を言って、レポートを書かせるつもりじゃないのかい?」


「……」

図星か。


「それがなんだって言うの?

公爵家の令嬢が、卒業出来ずに中退するなんて醜聞、貴方だって出したく無いでしょ?

これは我が家の危機よ!

今、嫁が役に立たなくて、どうしますか!」


義母が本音で庇いました。


そうかい。

私に20本のレポート書かせて、下駄履かせるつもりだったのですねえ。


「それでは、代理と見抜かれた時、もっと一大事に、なりませんか?」

私が、おそるおそる言うと、


「ちょっと、頭がいいからって、何よ!

あんたは、私の代わりに書けばいいのよ!」

と、噛みつかれました。


「イライザっ!」

穏やかな夫が、声を荒らげました。


「義理の姉に対してなんて言い方だ……母上も、甘やかすから、こんな結果になるんだろう?」


「な、なんで、なんで、そんな女庇うのっ!お兄様は、私の事、大事じゃないのねっ」

「ひとりきりの兄妹に、なんて仕打ちでしょう……

エイブ、貴方、変わってしまったの?」


二人は夫を詰る風を装いつつ、私を睨んできます。

嫁を。


「私はイライザを愛しているよ。

決まってるじゃないか」

「ウソっ!」

「だったら!」


「良いですよ」


私は、はあ、と、割り込みました。


「ようございます。

レポート、代筆致しましょう。

イライザさんと思われるような()()()にして、書いてさしあげましょう」



いつもありがとうございます




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