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11 地味女のお茶会

もう、姑とイライザの凄さは、想像の斜め上でございました。


昨日から、こっちにお泊まりして、嫁の采配を監視する!

と、意気込んでらして。


招待者のチェック

(名誉回復の為のラインナップとは気が付かなかったようです)


茶器のチェック

(タウンゼントと倉庫に死蔵していた年代物を磨きあげ、揃えました)


部屋のチェック

(花が足りない!絵を置け!と喚くのを大タウンゼントを招聘し、

『お見事。往年の公爵別邸の再現にございますな』

と、お墨付きを貰ったら、黙りました)


そして、ドレスのチェックです。


(まあっまあ!ビアンカさん、貴女、そんな地味なドレスなのっ?)

(お母様〜、ビアンカさんがセンス無いことくらい、前から分かってたじゃなあい。

いーんじゃない?地味で)


そんな事を言いながら、またも、この母娘は、私の赤い宝石箱をひっくり返しているのです。

もう、めぼしいものは入れてません。

……でも、餌は、いれましたよ?


(まあっ!綺麗なルビー!

ビアンカさん、この間はこの品、無かったと思うのだけど)


お義母様。

食い付きましたね?


(修理に出して……)

(そうなの。

あら、イライザ、貴女に似合うわねえ〜)


矢張り。


ルビーの腕輪。

金鎖を丁寧に編み込んだ中に、ビションブラットのルビーが、カッティングも美しく点在する品。


(あ、お義母様、あの……)

と、一応キョドるフリをしたら、イライザが食いつきました。


(本当ね!私にピッタリだわあー

お母様が仰ってた、モノが人を選ぶって、この事ね!)


と、大層気に入って、そのまま、晩餐にもつけていて、

(明日の茶会も、これを付けるわ)

と、ぬかしました。


(……えっ、イライザさん、それは!)

と、再びキョドると、

(いいわねえ。

イライザ。貴女の美貌が増すわ。

良家のご夫人が、気にいるかもね)


などと、二人でキャピキャピしていました。


エイブは、触らぬ神は、なんとやら、と、

『私が居ない方が楽だよね。紳士倶楽部に呑みに行くね。明日の夜帰るねっ』

と、逃げていきました。


イライザは、別邸をくまなく散策し、私の寝室まで侵入。

(へえ〜〜

ここがお兄様とアレの。

ふう〜ん)

などと言ってたそうです。けっ。


エマと励まし隊のおかげで、寝室の大事なものなどは、避難させてくれたようですが。


とりあえず。

今日の茶会が滞りなく

そして、思惑どおりに進行するのを願うのみです。


そして、午後。


予報通り、晴れてくれて。

私は、朝から、家人と共に、コンサバトリーに繋がる居室を茶会の会場としました。

庭へのガラス扉も全開にして、庭も、ティーテーブルとパラソルをセット。


やったれ私。


ところが。



「まあまあ、エスメ侯爵夫人〜〜

嫁の顔を立てて下さって!」


「あらっ、ミネア伯爵夫人、ラーゴ侯爵夫人、バットン伯爵夫人!

皆様、娘のお友達の!

いつも、イライザがお世話になっておりますわねえ」


先程から、姑が、うるさい。


この別邸の女主人は、私なんですが。


来客の

「流石ですわ!この空間の使い方!」

「これは、流行りますわね。

部屋とコンサバトリーと庭の一体感。これから夏に向けて、いい誂えですわね」


という賛辞も、

「そうで御座いましょう〜〜

嫁を教育するのは、姑の勤めですからあ〜」

と、良いとこ取り。


誰だよ、植物育てる所にお客なんてえっ!と言ったのは。


別邸のコンサバトリーは、高い丸天井のガラス張り。こんな見事な空間なのに、嫁いで来た時は、物置だったよ。

ここまで修復したのを大タウンゼントが見て、感動してくれてましたよ。



「よくお越し下さいました。

このたび、ロックフォード公爵家の一員となりました、ビアンカにございます。

嫁いで僅かな身でごさいますが、三代前の公爵様が愛した館を眠りから覚めさせる事が、私の努めと思っております。

どうぞ、忌憚のないご意見、御指南宜しくお願い致します。

本日は、ゆったりと、お過ごし下さいませ」


と、ご挨拶しました。


エスメ侯爵夫人が、ニッコリして下さいました。合格、かな。


「こ、この度、我がロックフォードの別邸にようこそお越し下さいました。

世間知らずの嫁の、ふつつかな、もてなしですけれど、長い目でお願い致しますわね〜〜

おーほほほ!」

と、こっちが主じゃ!と、姑が立ち上がってご挨拶しました。

が、


「本日のファーストティーにございます」

と、私が給仕を始めてしまいましたので、皆さん、さほど注目されなかったようです。


タワーのトレイの軽食も、うちの料理長が

厨房改修の御礼!

とばかりに、腕を振るってくれました。勿論、市場でいい食材を求めるようにお願いもしましたけどね。


「あら、このカップ……」

老婦人が、仰いましたので、私は、にっこりと、

「はい。別邸の納戸に眠っておりました逸品です」


婦人は、公爵家から傍系に嫁がれた、ロックフォードの生え抜き、みたいな方です。

嫁いで直ぐに先代夫人が亡くなって、我が物顔している姑には、普段から、苦々しく思われている、私にとっては格好の方です。


「そうですわ……

かつてお爺様が、アズーナ国の陶磁器をお集めになっていらしたわ」


「はい。

アズーナでも、今は再現出来ないという金彩磁器ですわ」


えっ、そんないい品、ここにあったの?

てな、姑の顔。

古いガラクタとでも、思って、見逃してたんだろー。

大タウンゼントは、承知で黙ってたのかも。


老婦人は、うっすら涙ぐみながら、

「……お爺様の思い出に、こんな形で、出会えるとは……

私は半世紀、目にしておりませんでした。ビアンカさん、素晴らしいわ」

「恐縮です」


ザワザワと、皆様、ご自分のカップを眺めたり、お隣と見比べたりしています。

勿論、皆様のも、凄い品ですよ。

流石、公爵家ですよねー。

掘り出し物だらけだったのですよ。

良くぞ、放置しましたね、お義母様♡へっへー。


「……前髪で、目を隠している割に、目利きのいい嫁ですから」


上手いこと言った、と思ったのでしょうが、公爵傍系の老婦人やエスメ侯爵夫人がしらーっと、無視しましたので、どなたも微笑むことすらお出来になりませんでした。


エスメ侯爵夫人は、どうやら、私に好印象のご様子です。

公爵傍系のご夫人は、私をお認めになりましたし。よっしゃ。


形勢不利、と、判じたのでしょう。

イライザが、お取り巻きの母親達に近づいて、ひそっと、声をかけました。


「……ミネア夫人、ラーゴ夫人、バットン夫人も……

ご令嬢から、何か、お伺いなさらなかったかしら?

その……私の義姉の、こと……」


出ましたね。ばーか。


なんで、アンタのお取り巻きの保護者を呼びつけたか、分かってないんですね、耳年増のクソガキ。






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