表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/20

6.5

部員A視点


せっかくの夏休みなのに部活なんて憂鬱だけれど、バスケ部と練習時間が被った日はどことなく浮ついた雰囲気が漂っている。

バスケ部には学校のアイドル的存在が所属していて、隣のコートで練習をしているのを間近で見ることが出来るから。


「乃亜先輩、今日もやばいくらい美人」

「美人だしかっこいいし、バド部に入ってよかった!」


目的が変わっている気がするけれど、私も同感。バスケ部に入ればよかったんじゃ? と思われるかもしれないけれど、乃亜先輩目当てで入った子は練習についていけず辞めているから、バド部で正解だった。


バスケ部の人達と話していた乃亜先輩が何かに気づいてパッと笑顔になり、周りに何か声をかけて走っていった。

駆け寄った先には青木 莉子ちゃんが居て、飛びついてきた乃亜先輩を慣れたように受け止めていた。青木さんは違うクラスで話したことは無いけれど、大人しくて可愛い子だな、という印象がある。


「ね、今の笑顔見た?!」

「見た見た! 青木さんが羨ましいー!」

「あんな笑顔向けられてみたいけど、直視できる気がしないわ」


乃亜先輩が青木さんに構い始めた時には妬みや嫉妬の声もあったけれど、今となっては青木さんと一緒にいる時の乃亜先輩が幸せそうで、バド部の中では乃亜先輩の恋?を応援しようという雰囲気になっている。


「ね、乃亜先輩こっち来るよ?!」


バド部の先輩が乃亜先輩を呼んだらしく、こっちに向かってきていた。聞こえた内容によると、先輩が持ってきたカメラを見にきたみたい。カメラに興味があるのかな??


「せっかくだから写真撮る? 後でスマホに送るからさ」

「いいの? 撮ってー!」

「あ、うちの後輩たちと一緒に撮ってもらってもいいかな?」

「もちろん! 私でよければ喜んで」


乃亜先輩と写真?! と大興奮の私たちに、全員一緒でいいのかな? 個別? と聞いてくれる。もちろん満場一致で個別希望だった。


「あの、肩を抱いて貰ってもいいですか?」


最初の子が遠慮がちに乃亜先輩に聞くと、ノリノリで応じてくれていて、皆が希望のポーズで撮ってもらった。乃亜先輩に抱きしめられた子は自分で希望したのに放心している。

青木さんが近くにいるのにこんなにノリノリで大丈夫なのかな? と気になってバスケ部の方を見ると、直ぐにそらされてしまったけれど青木さんと目が合った気がした。


バド部もバスケ部も練習が始まり、乃亜先輩は戻ってしまった。

バド部が休憩になったタイミングで、バスケ部がシュート練習を始めたので、少しでも近くで見ようと、自然と防球ネットの傍に人だかりができる。

歓声を上げながら見学していると、ボールが転がってきて青木さんが拾いに来た。その後を追いかけるようにもう1つボールが転がってきていて、乃亜先輩もこちらに向かってきている。


「りぃちゃん、後ろにもボールあるから気をつけて」


ボールを拾おうと屈んだ体制のまま、青木さんが顔だけ振り向いて硬直した。気持ちがものすごく分かる!


「……? りぃちゃんどうかした?」


青木さんが硬直しているので、乃亜先輩が不思議そうに首を傾げた。え、可愛いすぎませんか??


「先輩、髪……」

「ん? ああ、前髪が邪魔だからオールバックにしてみたんだけど似合ってるかな?」


汗で濡れた髪をオールバックにして、無邪気に笑う乃亜先輩から目が離せない。さっきまで歓声を上げていた他の子達も釘付けになっている。傍から見ていてこれなら、直接向けられた笑顔はどれだけの破壊力なのか……


青木さんが何か言ったみたいで、乃亜先輩がにやけている。小さくて聞こえなかったけれど、なんて言ったのだろう?


「「「っ?!」」」


次の瞬間、悲鳴を上げなかったのが奇跡だと思う。驚きすぎて声も出なかったと言うべき?


乃亜先輩が青木さんを抱き寄せ、耳元で何か囁いた後で慌てて離れようとした。青木さんが咄嗟に乃亜先輩のシャツを掴んでしまったようで、2人で硬直している。

青木さんが真っ赤になって視線をさまよわせていると、バスケ部の先輩から戻ってくるようにと声がかかり、これ幸いと走っていった。


「はー、もうりぃちゃんが好きすぎてつらい。可愛い。……ん?」


青木さんが走り去ると、乃亜先輩は顔をおさえてしゃがみこんだけれど、少しして青木さんが拾い忘れていったボールに気づいた。それからボールの先のネット際で見つめる私たちを見て、照れくさそうに笑ってしーっというジェスチャーをした。


「今の聞こえちゃった? 内緒ね?」


私を含め全力で頷くと、乃亜先輩はボールを2つ拾って戻って行った。


「ねえ?! やばくない?!」

「なに今の?! なにあれ?!やばいんですけど!!」

「凄いもの見ちゃった……」

「ドラマのワンシーンか何か??」

「今日練習をサボらなかった自分を褒めたい……」


顔を見合わせあい、堰を切ったように話し出した。みんな語彙力が崩壊している。


「これはもう応援するしかないよね?」

「だね。2人でいる時の乃亜先輩を知らない人は認めないかもしれないけど、1回でも見れば分かるよ」

「もういっそ部活以外でもイチャイチャしてくれたらいいのに」

「あ、2人で文化祭のライブに出るって知ってる?」

「え、知らない! どこ情報?!」


しばらく盛り上がって練習どころではなくなって先輩に怒られてしまったけれど、乃亜先輩を応援しよう、ということで団結力が強まったから良しとしたいところ……

乃亜先輩の笑顔を見るためにも、青木さんと上手く行けばいいな、と思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ