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「さ、歌うぞー!」


部屋に入るなり、乃亜先輩がテンション高く言った。カラオケで一番最初に歌うのは抵抗があるから、乃亜先輩が率先して歌ってくれそうで安心する。最初って緊張するのは私だけ?

ちなみに、響華と来る時は大抵響華からスタートする。


どんな曲を選ぶのかな、と思っていると、私も大好きなアイドルグループの曲が流れ始めた。乃亜先輩も好きなんだ、とちょっと嬉しくなった。


乃亜先輩の歌はとても上手くて、聞き惚れてしまう。

声もいいけれど、歌い方がとても好みで、ずっと聞いていたくなる。


「凄い! 乃亜先輩上手すぎです!!」


歌い終わって私が絶賛すると、乃亜先輩は一瞬驚いたようだったけれど、照れたように笑った。その笑顔に胸を撃ち抜かれたかと思った。


その後に藍先輩が歌い、響華も歌い終わって自分の番が回ってきた。響華が上手いのは知っていたけれど、藍先輩も上手だった。


何とか歌い切ったけれど、さっきの乃亜先輩の笑顔がチラついて歌に集中しきれなかった。なんでこんなに乃亜先輩が気になるんだろう……


「この曲歌える人~? 」


また乃亜先輩の番になって、次に表示された曲もさっきと同じアイドルグループのハモり曲だった。

大好きな曲のひとつで、カラオケに来ると私もよく歌っている。


「あ、莉子が歌えますよ」


今の状態で乃亜先輩と一緒に歌うなんて心臓が持たないから黙っていよう、と思っていたら私が歌えることを知っている響華が答えてしまった。


「莉子ちゃん歌えるんだ! 私もこの曲好きだから乃亜と歌ってみて?」


藍先輩にも言われ、マイクを渡されて逃げ道がなくなった……


「りぃちゃんと歌えるなんて嬉しい! 私がハモるね」


曲が流れ、覚悟を決めて歌い出す。歌い慣れていることもあってスムーズに歌い出せた。

乃亜先輩とのハモりもバッチリ決まり、歌っている間ずっとドキドキが止まらなかった。

この曲は些細なきっかけから友達を好きになってしまう葛藤が描かれた歌詞で、男女をイメージして作られた曲だと思うけれど、何故か今の自分と重なった。


「ちょっと2人とも相性良すぎない?! びっくりするぐらい綺麗なハモりだったよ!!」

「本当に藍先輩の言う通り凄すぎましたね……ちょっと語彙力がなくて表現出来ないです」


藍先輩と響華が絶賛してくれて嬉しくなる。思わず乃亜先輩を見ると、先輩も私を見ていて目が合った。私を見る視線が優しくて、慌てて視線を逸らした。顔が赤くなっている気がする……


「楽しかった! りぃちゃん、またハモろうね?」


口を開くと余計なことを口走ってしまいそうで、ただ頷くに留めた。



「ねえ、うちの高校、9月の文化祭でライブがあるのって知ってる?」

「え、知らないです」

「私も初めて聞きました」


藍先輩が言うと、乃亜先輩があからさまに嫌な顔をした。どうしたんだろう?


「毎年外部のお客さんも楽しみにしてくれていて、今年も開催予定なんだけれど、2人とも出てみない?」

「え、私は出ないです」

「私も無理ですっ」


まず響華が即答し、私も慌てて追従した。皆の前で1人で歌うなんて考えられない。


「そっか。2人とも上手だから出てくれたら嬉しいんだけどな……」

「藍先輩は出ないんですか?」

「私は実行委員になっちゃったから、当日は出てる暇がないと思うんだよね」

「そうなんですね。あれ? 乃亜先輩はどうなんです?」

「乃亜には今交渉中なの。乃亜、昨年も出ていて、今年も要望が多くてね」


響華の問いに藍先輩が答えると、乃亜先輩が嫌な顔をしていた理由が分かった気がした。昨年参加したのは不本意だったのだろうか?


「え、乃亜先輩参加したんですね! 見たかったです!」

「それはもう盛り上がって。順番はくじ引きだったのだけれど、乃亜が最後で。歓声は止まないし、アンコールが起こって、急遽アカペラでもう一曲歌ったんだよね。ほら、後輩も見たがってるし、今年も出ようよ?」


藍先輩は昨年を思い出したのか興奮気味に教えてくれた。それはぜひとも見たかった……今年も出てくれたらいいけれど、藍先輩の交渉次第かな?


「昨年はアンケートで1位になっちゃって実行委員に泣き落とされたから渋々出たけど……今年はもういいかな」

「えー、きっと乃亜が出るのを期待してる子いっぱいいるよ? もちろん私も」

「藍先輩、そのライブ参加って個人だけなんですか?」

「え? 何人で出ても大丈夫だよ。ソロだったりバンド組んで出たり、ダンサーが居たり自由だから」


響華がチラッと私を見たので、嫌な予感がした。


「それなら、乃亜先輩と莉子で出たらいいんじゃないですか?」


響華ー?! なんてことを……

乃亜先輩と藍先輩の視線が私に集中した。


「うん。もしりぃちゃんが出てくれるなら参加しようかな」

「ほんと?! 2人のハモりを聞いたらみんなびっくりするよ! 莉子ちゃん、どうかな?」


藍先輩の期待に満ちた眼差しが……横では乃亜先輩も期待しているように見えてくるし、これ拒否できる?

響華、そのにやけ顔やめようか?


「えっと……限りなくNoに近い保留って出来ます?」

「完全な拒否じゃないってことは可能性があるってことだよね!」


藍先輩、ポジティブ過ぎませんか……


「うーん、さっき歌ったグループの曲でハモれる曲って何があったかな」


乃亜先輩、まだOKしてないんですが……?

もう参加が決まったような雰囲気に戦慄する私を他所に3人でこれなんかどう、と曲探しで盛り上がり始めている。


これは押しに弱い私が悪いのか?

乃亜先輩と歌いたい気持ちが無いわけではなくて、むしろまた歌いたいけれど、一緒にいる時間が増えるとこの感情が育ってしまいそうで怖い。

文化祭まで2ヶ月、逃げ切れるのだろうか?


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