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7月に入り、定期テストの時期がやってきた。
テストは大嫌いだけれど、テスト前は部活が休みになるので、テスト期間が終わるまでは乃亜先輩に会わないと思うと少しほっとした。
「莉子、テスト勉強大丈夫そう?」
「いつも通りな感じ!」
「……それって大丈夫じゃないよね」
放課後、響華に心配そうに聞かれた。響華はギャルっぽい見た目だけれど、頭がいいのでテスト前は毎回勉強を教えて貰っている。私は、まあ下から数えた方が早いかな。
「赤点取らなければいいんだもん余裕!」
「その自信はどこから来るの……? 勉強会する?」
「響華の勉強が大丈夫だったら教えて欲しい」
「分かった。とりあえず図書室行きますか」
図書室はテスト勉強をする生徒でそこそこ混んでいたけれど、空いている席を確保して勉強を始めた。
響華が丁寧に教えてくれるけれど、正直理解出来ていない部分が多すぎた。疑問符が浮かぶ私を見て響華が苦笑している。うう、いつもごめん……
「莉子、どうだった?」
金曜日、3日間のテストが終わり、机に突っ伏していると響華が心配そうに聞いてきた。私があまりにもぐったりしているので心配させてしまったみたい。
「んー、赤点は回避できたと思う。……多分」
響華との勉強会のおかげで、全く出来ない、ということは無かったのできっと大丈夫だったと信じたい。
「テストも終わったことだし、カラオケでも行く? テストのことは忘れてパーッと盛り上がろ!」
「え、行くー!」
玄関に向かうと、ばったり乃亜先輩と藍先輩に遭遇した。
「りぃちゃん!」
「きゃ?!」
来週まで会わないと思っていただけに、不意打ちの遭遇に驚いて、抱きついてきた乃亜先輩を支えきれずよろけてしまった。
「来週まで会えないと思ってたから嬉しい! 会えなくて寂しかった! 元気だった?」
「元気なので離してくださいー!」
乃亜先輩がキラキラした笑顔を向けてくるけれど、間近で乃亜先輩の笑顔を見てしまった子達がキャーキャー騒いでいるし、確実に目立っているので切実に離して欲しい。
普段は限られた部活メンバーしか居ないけれど、この場にはテストから解放された生徒たちがいて、至る所から視線を感じる。
「乃亜、莉子ちゃんが困ってるから離してあげて」
見かねた藍先輩が乃亜先輩の腕を引いて私から離してくれた。
「先輩たちも今帰りですか?」
「うん。テストも終わったし、カラオケにでも行こうかって話していたところ」
響華が聞くと、藍先輩がこのあとの予定について教えてくれた。先輩達もカラオケに行こうとしていたみたい。みんな考えることは同じだね。
「あ、そうなんですね。実は私達もカラオケに行く予定で」
「え?! それなら一緒に行かない?」
響華の言葉に被せる勢いで乃亜先輩が誘ってくれた。目立つので嫌、と思ったけれど、もう手遅れ感があるし、さすがにここで先輩からの誘いは断れないよね。チラッと響華を見ると、同じ気持ちのようで頷かれた。
「先輩達が良ければぜひ」
「ほんと?! やった! 早く行こう!!」
「ちょ、先輩引っ張らないで」
乃亜先輩はすごく喜んでくれて、私の腕に抱きついて早く早くと急かしてくる。こんなに喜んでくれるのなら断らなくてよかったな。
乃亜先輩と藍先輩とプライベートで一緒に出かけることなんて初めてだから、すごく緊張する……
期待と不安を抱きつつ、4人でカラオケに向かった。