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Side.乃亜⑦

「乃亜、分かりやすく嬉しそうだね?」

「この後りぃちゃんと練習だからね」


夏休み終盤の部活終わり、りぃちゃんの所に向かおうとすると、少し呆れたような藍ちゃんが横に並んだ。


「どう? 順調?」

「うん。もうほぼ仕上がってるかな。りぃちゃん、帰ろー!」


ん?なんか凄く悲壮感が漂ってるような?


「何かあった??」

「莉子、宿題全く手をつけてなかったらしくて」


響華ちゃんが教えてくれたけれど、それでこんなにどんよりしてるのか。残念だけど、しばらく練習はやめた方が良さそうかな。


「そういう事ね。今日は練習無しにして宿題やる?」

「あー、莉子は多分1人だとやらないと思います……」


りぃちゃん、もしかしていつもの事なの??


「もしりぃちゃんが良かったら、一緒に宿題やる? 私はもう終わってるから見てあげるけど」

「ほんとですか?! お願いしたいです」


即答なんてよっぽど切羽詰まってるんだね……


「明日は部活もないし、乃亜の家で泊まりでやったら終わるんじゃない?」

「え、でもご家族に迷惑なんじゃ……?」


藍ちゃんが泊まりを提案してるけれど、確かにその方が早く終わりそう。宿題が終わらないと練習の時間もとれないし、何よりりぃちゃんとお泊まりが出来るかもって私にとってはメリットしかない。


「乃亜のご両親今日居ないって言ってたような? 私も前に泊まらせてもらったことあるよ」


ちょうど親がいないって藍ちゃんと話していたけれど、まだ私だけなら気楽かな? 私の理性的には気楽じゃないけれど……


「両親とも仕事で明日まで居ないんだ。とりあえずうちで宿題やって、進み具合によって泊まるか決める? 藍ちゃんと響華ちゃんも来る?」


2人が居てくれた方がりぃちゃんもいいだろうし、私も安心なんだけれど……


「あ、私は予定があって。 莉子は放っておくとサボるので……監視よろしくお願いします」

「私も今日はちょっと」


響華ちゃんは予定あるのか……藍ちゃんは今回も絶対楽しんでるよね?



「着替えてくるから、適当に座ってて?」


1度りぃちゃんは家に帰って私服に着替え、荷物を持ってうちに来ている。涼し気なワンピースを着ていて新鮮だし何より可愛い。


「りぃちゃん、入るよー。お茶かジュース、好きな方飲んでね」


部屋着に着替えて、りぃちゃんに飲み物を選んでもらう。宿題を並べているけれど、並べてみると意外と少ない。昨年の内容と同じところある気がするな。


「苦手な科目を終わらせて、りぃちゃんが1人で出来そうなやつは後回しにしようか」


苦手なところで手が止まるとフォーローして進めていると、あっという間に時間が過ぎていった。


「りぃちゃん、お家は門限とかってあるの?」

「特にないですが、日付が変わるまでに帰れば、って感じですね」


さすがにそんなに遅くなると危ないよね。早めに帰さないと。


「そっか。でも遅くなると危ないから、早めに切り上げた方がいいね。もう19時過ぎだし、あと1時間くらいなら大丈夫かな?」


りぃちゃんが残っている宿題を見て何か考えてるみたいだけれど、なんか怪しいな……


「りぃちゃん、お家に帰ってからもちゃんとやるんだよ?」

「……はい」


この感じ、やらないな。


「心配だなぁ……泊まっていって最後まで終わらせちゃう? 泊まらなくても、1人でダメそうなら明日また来てくれてもいいけど」


せっかくここまで頑張ったならできる所まで手伝ってあげたいところだけれど……りぃちゃんが嫌なら無理強いは出来ない。


「……泊まって迷惑じゃないですか?」


あ、ちょっと揺らいでるっぽい。


「全然! むしろ嬉しいよ。りぃちゃんは泊まるの嫌?」

「嫌じゃないです」


ちょっと悲しげにしてみたら慌てて否定してくれた。


「それなら泊まっていって? お腹すいてない? 何か作るよ。と言っても、料理得意じゃなくてたいしたもの作れないんだけど……」

「じゃあ、お言葉に甘えて泊まらせてもらいます。料理出来るだけ凄いですよ!!」


一緒に料理作ってお泊まり……最高かよ!


「いや、料理って呼べるのかどうか……ってレベルだからね。作ってくるからちょっと待ってて」

「私も一緒にやります! 戦力外かもですが……」


不安そうにしているけれど、一緒にやろうって気持ちだけで嬉しいから気にしなくていいのに。居てくれるだけで嬉しいし。


「りぃちゃん、エプロンこれ使って」


私が使っているエプロンの片方をりぃちゃんに渡す。ちょうど洗ったばっかりのが赤だったけれど、絶対似合うと思う。


「りぃちゃんとお揃いー!」


なんかお揃いって嬉しいよね? ちょっとはしゃぎすぎて子供っぽい? そんなの今更か……


「りぃちゃんにはサラダお願いしようかな」


野菜を渡すと手際よく切って盛り付けてくれている。普段やらないって言うけど慣れてそうだけど。器用なのかな?

私もりぃちゃんばっかり見てないで作り始めなきゃ。


「りぃちゃん、あーん」

「え?!」


手持ち無沙汰にしているりぃちゃんに味見をしてもらおうとスプーンを差し出してみたら、分かりやすく動揺してる。挙動不審すぎるけどそんなところも可愛いな。


「ん? 味見してもらおうかなと思って」


そのまま差し出し続けると口を開けてくれた。わー、えろ……自分で仕掛けて撃沈した気分。


「美味しい?」

「美味しいです」


自分ではいつも通りでもりぃちゃんの好みが分からないけど大丈夫そうかな。レシピ通りだから不味いことはないと思うけれど。


出来上がった料理を運び、席について2人で食べる。


「乃亜先輩料理上手ですね」

「レシピを忠実に再現したからね! りぃちゃんが作ったサラダも美味しいよ」

「いや、切っただけですけどね?」


りぃちゃんが褒めてくれるけれど、喜んでくれるならいつでも作るよ。普段とは違うりぃちゃんが見れて、新鮮で楽しかった。



「さ、もうひと頑張りしますか!」


ご飯を食べ終わって、また部屋に戻って宿題を再開する。

しばらく経つと、眠くなってきたのかりぃちゃんがぼーっとすることが増えた。疲れちゃったかな?


「今日はこの辺で終わりにしよっか。明日もあるしね。お風呂の用意してくるね」


明日もあるし今日は終わりにしようとお風呂の用意に来たけれど、お風呂か……一緒はさすがにダメだよね。私が色々持たなさそうだし。


「りぃちゃん、先にどうぞ」

「いやいや、乃亜先輩がお先に入ってください!」


うーん、りぃちゃんって意外と頑固だよね。ま、そういうつもりならいいけど。悪い顔をしている自覚はあるけれど、ニヤリと笑うとりぃちゃんがちょっとビクってなった。


「りぃちゃんが先に入らないなら、一緒に入ろっか?」

「っ?! お先にお借りします!!」


慌てて部屋を出てドアがしまったけれど、りぃちゃん慌てすぎ。まだお風呂の場所教えてないし、着替えもここにある。

この可愛さはなんなの? 天然?

どうするのかな、と待っていたらドアがゆっくり開いてりぃちゃんが戻ってきた。すっごい気まずそうで可愛い。


「なに? やっぱり一緒に入る?」

「入りませんっ!! 」

「ごめん、ごめん。お風呂案内するね」


ちょっと意地悪しすぎたかな。これ以上からかうと拗ねちゃいそう。


「シャンプーとか適当に使ってね。じゃ、ごゆっくり」


りぃちゃんをお風呂に案内して部屋に戻ると、普段の自分の部屋とは違う匂いがする。自分の家で好きな子がお風呂に入ってると思うと落ち着かない。こんな調子で持つのかな……

はー、と机に突っ伏すといつの間にか寝ちゃってたみたいで、起きるとりぃちゃんの顔が近くにあった。


「んー」

「おはようございます?」


あれ、もう出た? どれくらい寝ちゃってたんだろ。お風呂上がりでほんのり赤くなってるりぃちゃんをぼーっと眺めてみると赤みが強くなった気がした。触れたらどんな顔をするんだろう?


「ごめん、寝ちゃってた。お風呂入ってくるー」


寝起きで危険な思考回路になりそうだったから早めにりぃちゃんのそばを離れる。シャワー浴びて冷静になろ。


スッキリした頭でこの後のことを考える。布団どうしようかな……りぃちゃん一緒に寝てくれたりしないかな。自分の首を絞めることになりそうだけれど、こんなチャンスもう無いかもだし。


トントン


「はいっ?!」


一応ノックしてみると慌てたようなりぃちゃんの声が聞こえた。


「りぃちゃん、入るよ?」

「どうぞ!」


色々考えても結局はりぃちゃん次第だな、とベッドに直行してさっさと横になった。りぃちゃんはポカーンとしている。


「お待たせ。さ、おいでー?」


隣をポンポンと叩いてみるけれど、動く気配がない。


「えっ……?」

「あ、りぃちゃんは隣に誰かいると寝れないタイプ? もし無理なら下に布団敷くから、りぃちゃんがベッド使って」


出来るだけ普通に聞こえるように言ってみたけれど、りぃちゃんが布団使うって言いそうだよな。


「誰かと寝るってことがないので分からないです……いや、私が布団使います」

「それはダメですー! りぃちゃんが布団使うなら私も布団にする」


やっぱり。りぃちゃんが布団なら私も布団で寝るけど。机避ければ2組敷けるかな。


「あの、藍先輩が泊まった時はどこで寝たんですか?」

「藍ちゃん? 藍ちゃんはベッドで寝てもらったよ。さ、りぃちゃんどうする?」


なんで藍ちゃん? あ、部活の時に泊まったことあるって言ってたもんね。

藍ちゃんは一人で寝たいって言うからベッドで寝てもらって私が布団で寝た。


押しに弱いりぃちゃんだから可哀想だけれど、どうする? と選択を迫ってみる。

①ベッドで一緒に寝る

②りぃちゃんがベッド使う

③布団敷いて一緒に寝る


「……①にします。えっと、お邪魔します」

「どうぞー」


正直予想外。おずおずベッドに登ってきて端の方に横になったけれど、そんなにギリギリのところで落ちない? ちょっと心配。


「あ、りぃちゃんは部屋真っ暗でも眠れる?」

「はい。大丈夫です」


電気を消しちゃうとりぃちゃんの事が見えなくなっちゃうけど、見えてると落ち着かないから良かった。ほっぺにキスくらいなら許されるかな?

少し悩んだけれど、私が寝れなくなりそうだからやめておこう。


耳元でおやすみ、と囁いて頭をポンポンするだけに留めたけれど、近づいたら私がいつも使ってるシャンプーの匂いがして心臓が跳ねた。同じもの使えばそうなるんだけど、なんかドキドキする。

赤くなった顔を見られないように電気を消して元の位置に戻る。今日寝れるかな……

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