Side.乃亜④
今週からまた部活が始まる。金曜日にりぃちゃんとカラオケに行くことが出来たから久しぶりって訳ではないけれど、土日会えなかったから早く会いたい。
藍ちゃんはクラスメイトと話し込んでいたから先に体育館に行くことにした。
体育館の入口に着くと私が来るのを待っていてくれた同級生や後輩たちが話しかけてくれる。
「乃亜ちゃん、文化祭のポスター貼られてたけど、ライブ今年も出る?」
「え、先輩昨年出たんですか?」
「先輩の歌聞いてみたいです!!」
出るって言いたいところだけれど、りぃちゃんからの返事待ちだからとりあえず濁しておこう。
「あー、今年はどうするか検討中なんだ。藍ちゃんには出てって言われてるんだけど」
テスト明けから文化祭のポスターが貼られていて、ライブの参加者募集が始まっている。
「出るなら何がなんでも見に行きます!」
「私もその時間帯にはクラスの担当断固阻止する!!」
そこまで見たいって言って貰えると嬉しいね。ただ担当は穏便に決めて欲しいけれど。
「あはは、もし出ることになったら応援よろしくね。じゃあ部活だからまた」
そう言うと、みんな素直に帰ってくれた。本当にいい子達ばっかり。
「みんなおつかれー! 今日も練習頑張りましょー!」
「乃亜テンションたかっ!」
あれ、そんなにテンション高いかな?
「乃亜って昨年文化祭ライブ出てたよね? 今年はどうするの?」
「んー、さっきも聞かれたけど検討中」
「え、乃亜先輩ライブ出たんですか? 今度カラオケ一緒に行ってください」
「お、いいよ行こうー!」
体育館に入って声をかけると既に来ていた部員たちが話しかけてくれるけれど、その中にりぃちゃんの姿はない。探してみると、少し離れたところに響華ちゃんと一緒にいるのを見つけた。
背中を向けていて、近づいても気づく気配がない。
「りぃちゃーん!」
「わ?!」
座っているりぃちゃんを後ろから包み込むように抱きしめた。首に顔埋めるといい匂いがする。
嫌がられるかな、と思ったけれどくすぐったいのかくすくす笑っている。
え、可愛いんですけど。
「ね、先週の話考えてくれた?」
「……っ?! 耳元で話すのやめてくださいっ」
拒否されないのをいいことに耳元で囁いてみるとビクッと首を竦めて固まってしまった。
やめてって言われると余計イタズラしたくなるよね?
「りぃちゃん? ね、聞いてる?」
「はい……」
「文化祭、一緒に歌ってくれる?」
「はい……」
「ほんと?! 楽しみだなー!!」
「はい……」
そのまま耳元で話してみると、はいしか言わなくなっちゃったけどちゃんと覚えてるかな? ま、もうOK貰っちゃったけどね。
あー、練習始まるまでこのまま抱きしめてていいかな? 響華ちゃんを見るとニヤニヤしているからりぃちゃんを助けるつもりは無さそうだしもうちょっとだけ。
「乃亜、置いてくなんて酷いじゃんー! 莉子ちゃんのことあんまり困らせると嫌われるよ?」
「ごめん、早く来たくてさ。嫌われるのは困る。響華ちゃん、後はよろしくね」
しばらく堪能していたら藍ちゃんが置いていったことに文句を言いつつ怖いことを言うので響華ちゃんに任せてりぃちゃんを解放した。
「藍ちゃん、りぃちゃんが文化祭ライブ出てくれるって」
「わ、本当に?? 良かった! 乃亜が出てくれるなら外部のお客さんも増えそうだから対応考えないと」
忙しくなるな、なんて言いながら嬉しそうにしてくれている。
「え、そんなに変わる?」
「うん。昨年見に来てくれた方から乃亜が出るなら今年も行きたいって連絡が結構来てるから」
そこまで期待されるのはちょっと怖いな……練習頑張ろ。
せっかくなら振り付けもちゃんとやりたいし、忙しくなっちゃうけどりぃちゃんと一緒なら楽しみでしかない。
りぃちゃんが負担に思わないといいけれど……あんまり大変そうなら歌だけでもいいし、様子を見つつかな。
「有難いけどプレッシャー感じるわ」
「乃亜は大丈夫でしょ。本番に強いし」
「ま、頑張るよ」
「よし、練習始めますか」
藍ちゃんの号令で練習が始まったけれど、りぃちゃんの調子が悪くてちょっと心配。
ライブの事で不安になっちゃったかな?ちょっと強引だったし……後でちゃんとフォローしないとな。