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Side.乃亜②

7月に入り、もうすぐ定期テストが始まる。自慢じゃないけれど勉強はそれなりにできる方なので、別にテスト自体はいいのだけれど、テストの1週間くらい前から部活が休みなのでりぃちゃんに会えていない。

せっかく名前で呼んで貰えるようになって少しは距離が縮まったかな、と思ったところだったのに……


テストが水~金の3日間で、土日を挟むと10日は会えないことになる。


「藍ちゃん、テスト明けの土日って部活あったっけ?」

「いや、休み。再来週の月曜日からだね」


会えるのは再来週の月曜日か……長いなぁ。ため息を吐く私を藍ちゃんがにやけ顔でからかってくる。


「莉子ちゃん? どれだけ人気があってもどこか冷めてた乃亜が今では一人の女の子に夢中だもんね? 変わるもんだよねー」

「ねぇ、面白がってるでしょ?」


藍ちゃん、そんなことないよ? なんて言っても顔笑ってるからね? 藍ちゃんにも気になる人が出来たら覚えててよ??


「連絡先とか交換してないの?」

「してない。普通に断られそうで」

「わ、弱気」

「そもそも連絡先の交換ってどうしたらいいの?」


教えてくださいって来てくれる子ばっかりだからな……藍ちゃん、そんな残念な子を見る目で見ないで??


「莉子ちゃんは乃亜の周りにいる子と全く違うもんね」

「うん。むしろ嫌がられてる気がする……」

「乃亜が嫌って言うより周りを気にしてる感じだけど。人気者は大変だね。 ま、頑張って?」

「……やっぱり面白がってるよね?」

「女の子はべらせて喜んでるから自業自得よ」


だってみんな可愛いからさ……冷たくなんて出来ないよね?


「藍ちゃんが冷たい……そろそろ席戻るね」


授業を聞きながらもりぃちゃんのことを考えてしまい、そんな自分に苦笑した。



3日間のテストが終わり、下校の時間になった。今日も部活はないからこのあとは帰るだけ。

来週になれば部活が始まるからやっとりぃちゃんに会えると思うと、いつもは嬉しいはずの土日も早く過ぎないかなと思ってしまう。


早く会いたいな。今までにこんなに誰かに会いたいと思ったことがあっただろうか? 冷めてる方だと思ってたけどりぃちゃんに対しては違うみたい。


「乃亜、帰ろー」


うーん、と考えていると藍ちゃんが席に迎えに来てくれた。


「藍ちゃん、テストどうだった?」

「今回は自信あるよ」

「今回も、じゃなくて?」


藍ちゃんは入学してからずっと1位をキープしていて、今回も自信があるらしい。記憶力もすごいしどうなってるんだろう?


「さっき唸ってたけど考え事?」

「ちょっとね」

「言いたくないなら無理して言わなくていいけどね。ね、この後予定ある?」


藍ちゃんは無理に聞き出してこないで察してくれるから一緒にいてすごく楽。


「ないけど何かあった?」

「テストも終わったし部活もないからカラオケでもどうかなって」

「いいね! 行こう」


家に帰っても色々考えてしまうだけだし、騒いで忘れられるのは正直有難い。


「そういえばさ、文化祭なんだけど……」

「出ないよ?」

「まだ何も言ってないじゃん」


玄関に向かいながら、藍ちゃんが切り出してくるのを途中で遮った。ライブに出てってことでしょ?


「文化祭って時点でもう分かるよ」

「まだポスターも貼り出してないのにライブの問い合わせが多くてさ。乃亜に出て欲しいって要望が外部からも来てるんだよね」


外部ってことは昨年ライブを見てくれたお客さんってことかな? また見たいって言って貰えるのは嬉しいけれど……


「とりあえず保留で……りぃちゃん!」


藍ちゃんと話し途中だったけれど、りぃちゃんを見つけて、駆け寄って抱きついた。


「乃亜……飼い主を見つけた犬みたいだよ」

「学校一のイケメン? 美人? を犬扱いw」


藍ちゃん、聞こえてるよ? 響華ちゃんも笑いすぎじゃない??


来週まで会えないと思っていたからこの遭遇は嬉しい。この際犬扱いでもなんでもいいや。自分でもしっぽがあったら全力で振ってると思うし。


「来週まで会えないと思ってたから嬉しい! 会えなくて寂しかった! 元気にしてた?」

「元気なので離してくださいー!」


ぎゅっと抱きしめると抜け出そうと抵抗してくるりぃちゃん。暫く会えなかったからといってデレることは無いらしい。


りぃちゃんに笑顔を向けると、周りの子達が騒がしくなる。注目されているのは分かっているけれど、むしろ好都合かもしれない。

もし私に本気で好意を向けてくれている子がいたら申し訳ないけれど、私が一方的に構っているというのは明らかだと思うから。

りぃちゃんが誑かした、とか言いがかりをつけられても困るしね。


「乃亜、莉子ちゃんが困ってるから離してあげて」


久しぶりのりぃちゃんを堪能したい私と、離して欲しいりぃちゃんの攻防は藍ちゃんによって引き剥がされてしまった。


りぃちゃんは警戒したように私を見ているけれど、そんな視線すら嬉しいと思う私は手遅れだろうか?


「先輩たちも今帰りですか?」

「うん。テストも終わったし、カラオケにでも行こうかって話していたところ」


響華ちゃんと藍ちゃんがこの後の予定について話している。りぃちゃんはもう帰っちゃうのかな?


「あ、そうなんですね。実は私達もカラオケに行く予定で」

「え?! それなら一緒に行かない?」


りぃちゃんと響華ちゃんもカラオケに行くと聞いた瞬間、藍ちゃんに確認もせず誘ってしまった。

ごめん、と藍ちゃんを見ると予想がついていたのか笑っていた。


「先輩達が良ければぜひ」

「ほんと?! やった! 早く行こう!!」

「ちょ、先輩引っ張らないで」


ダメかな、と思ったけれど一緒に行ってくれるらしい。気が変わらないうちにと、りぃちゃんの腕に抱きついて引っ張るようにして歩き出す。


りぃちゃんとカラオケ楽しみだな。あ、もちろん藍ちゃんと響華ちゃんも忘れてないよ??

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