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Side.乃亜①

乃亜視点始めます。本編のイメージを崩されたくない方はご注意ください。

2年に進級し、新1年生が入部してくる時期になった。放課後、藍ちゃんと体育館に向かっていると、どこからか仕入れてきた情報を教えてくれた。


「聞いた? 1年生の入部希望者、すごい人数になってるみたい」

「ふーん。今ってバスケが流行ってるの?」


不思議そうな私に、呆れたように藍ちゃんが言った。


「……本気で言ってる? 大半が乃亜目当てだよ」

「あー、そういう感じか……可愛い子が増えるのは純粋に嬉しいけど部活でまでも騒がれるのは困るな」


思わず憂鬱そうに答えてしまった私に、藍がぽつりと呟いた。


「外見だけじゃなくてちゃんと乃亜の中身を見てくれる子が居るといいんだけど……」


女の子はふわふわしていて可愛いから大好き。女子校を選んだのは正解だったと思っている。

どうやら私の顔は女子受けがすこぶる良いらしく、中学でバスケ部に入ってから髪をバッサリ切るとやけにチヤホヤされるようになった。

私は自分の顔が、というか自分のことが好きではないから何がいいのか分からないけれど。


大半の子は観賞用、という感じだけれど、中には本気で告白してくれる子もいる。

それは嬉しいけれど、ほとんど話したこともないのに何を知っているのだろう?と思ってしまう。一目惚れから始まることもあると思うけれど、みんな美化しすぎてるんだよね……


体育館に着くと、見慣れたメンバー以外にたくさんの女の子が集まっていた。私の方を見てヒソヒソ話をしている。


「初めまして。2年の夏目 乃亜です。よろしくお願いします」


練習前に3年、2年のバスケ部員1人ずつ自己紹介をする時間があった。私が自己紹介をすると、歓声が上がった。先輩たちもいるし、過剰な反応やめて欲しいんだけどな……

全員の自己紹介が終わり、1年生の自己紹介に移った。聞いていると、ほとんどの子がバスケ初心者みたい。長く続くといいな、と思いながら聞いていると、背の高いギャル風の女の子の番になった。


「瀬戸 響華です。××中学でもバスケをやっていました。よろしくお願いします」


お、経験者。私よりも背が高いかな? 美人な子だな、と思ったけれど、隣の子を見た瞬間にその子しか目に入らなくなってしまった。


「青木 莉子です。同じく××中学でバスケ部に入っていました。よろしくお願いします」


可愛い声、優しそうな目、少し高い鼻、ぽてっとした唇、ほわほわした雰囲気。私が理想とする女の子がそこにはいた。今まで見た目で判断されることを嫌っていたはずなのに、その子から目が離せなかった。

莉子ちゃんか……無意識に小さく呟いていた。


その後の子達の自己紹介は正直覚えていない。じっと見つめてもその子は私の事を見ることはなく、目が合うことは無かった。



「乃亜、今日調子悪い? なんか集中できてない感じ」


休憩中、座り込んでいると藍ちゃんが心配そうに聞いてきた。


「うん……ちょっとね、1年生に気になる子がいて」

「え、乃亜目当てで入ってきてる子?」

「ううん。経験者の子で、むしろ1回も目が合ってない」


そう言うと藍ちゃんは驚いたようだったけれど、どこかほっとしたみたいだった。


「そっか。ちょっと安心した。その子が乃亜の内面も見てくれる子だといいね」


内面を見てもらうにもまずは仲良くならなくては始まらないけれど、普段自分からアプローチすることなんてないからどうしたら良いのかがまず分からない。


結局その日は一言も話す機会はなく、目すら合わず練習が終わってしまった。


今日こそはと気合を入れたものの、1年生に囲まれてしまい莉子ちゃんに近づけない。

もどかしいけれど、ここでこの子達を放って莉子ちゃんの所へ行けば嫉妬の標的になってしまうかもしれないし……

突き放すことも出来ないから暫くは遠くから見ているだけかな。……ストーカーじゃないからね??


その後もきっかけが無いまま、あっという間に3年生が引退する時期になってしまった。藍ちゃんがキャプテンになり、私は藍ちゃんに頼まれて副キャプテンをすることになった。


その頃には私目当てで入部した子達は練習についてこられず辞めていき1年生は随分少なくなっていた。部としては痛手なのだけれど、私個人としてはやっと莉子ちゃんと親しくなれるかもとそわそわしてしまう。


放課後になって体育館に行くと莉子ちゃんは既に来ていて、たまたま周りに誰もいなかった。


「夏目先輩……あ、今日から夏目副キャプテン?? こんにちは」


莉子ちゃんから私に気づいて挨拶をしてくれる。呼び方に迷ったのか、首を傾げている姿が可愛らしい。


「莉子ちゃん、こんにちは。苗字じゃなくて下の名前で呼んで?」

「え、それはちょっと……」


今まで挨拶くらいしかしてなかったのにいきなり下の名前呼びは無理かな? でも少し強引に行かないと永遠に苗字呼びな気がするしな……


「えー。じゃあのんって呼んでくれる? 無理だったら乃亜で。どっちにする??」

「……乃亜先輩で」


2択にすると戸惑いつつも名前を呼んでくれた。呼ばれ慣れているのに、莉子ちゃんから呼ばれると違う名前のように思える。


「莉子ちゃんはりぃちゃんって呼んでもいい?」

「……どうぞ」


「こんにちはー。莉子と……乃亜先輩?? 何だか珍しい組み合わせですね?」


りぃちゃんから呼び方の許可を貰ったところで響華ちゃんが来て、今までにない組み合わせに不思議そうにしている。

響華ちゃんはコミュ力が高くてすぐに話すようになったけれど、りぃちゃんは私に近づいてこなかったもんね。


「ついさっき仲良くなったんだー! ね、りぃちゃん?」

「……はい」

「仲良く??」


私たちの温度差に響華ちゃんがえ?? という顔をしているけれど、かなりの進歩だと思うんだ……ちょっと強引だったのは認めるけど。

りぃちゃんからしたら突然の事だろうしね。でも2ヶ月ちょっと見ているだけだったから大目に見て欲しいな。


りぃちゃんにちょっかいを出してはあしらわれる私に、最初は驚いていた部員たちも毎日のことになると慣れたようだった。


りぃちゃん、今はツンツンだけれど、いつかデレてくれたらいいな……

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