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初めて先輩を見た時、なんて綺麗な人なんだろうと思った。聞けば学校一の人気者らしく、いつでも女の子に囲まれているらしい。でも私には関係ないかな、と思っていた。


……のだけれど。


「りぃちゃん! 今日も可愛いね!」

「乃亜先輩、突然抱きついてくるのやめてくださいっ!」


部活の休憩中、後ろから夏目 乃亜先輩に抱きしめられた。乃亜先輩は1つ上の2年生で、チームのムードメーカー的存在。


中学もバスケをやっていたので、高校でもバスケ部に入ると決めていた。

そこには乃亜先輩がいて、何もしていないのになぜか気に入られてしまい、練習の度にこんな風に突撃されている。


「のんちゃんって呼んでって言ってるのに」

「色んな人に恨まれそうなので嫌です。早く離してください」

「のんちゃんって呼んでくれたら離す」

「……夏目先輩」

「わ、むしろ遠ざかってるよ?!」


慌てて離してくれたけれど、不満そうに口をとがらせている。

乃亜先輩は親しみやすい性格とバランスの整った綺麗な顔立ちから、学年問わずかなり人気がある。

定期テストでも毎回上位に入るくらい頭も良くて、ハイスペックな先輩。


練習試合の時なんて差し入れが溢れて対応に苦慮している所をよく目撃する。断ればいいのに、優しいから断れないんだよね。


「乃亜先輩、私で良ければ呼びますよ?」


一緒に休憩していた親友の瀬戸 響華がニヤニヤしながら言うと、乃亜先輩が嫌そうに答えた。


「いや、響華ちゃんは可愛いって言うよりかっこいいじゃん? 私は可愛い子に呼んで欲しいの! 響華ちゃん私より身長高いし可愛い子枠じゃないよ?」

「成長期なのでまだ伸びてるんですよね」

「え、まだ伸びてるの? りぃちゃんも意外とあるよね」


響華は170cm近い長身で、まだ成長中らしい。私は158cmくらいで止まってしまったけれど、女子の中ではそこそこ大きい方なのかな? ちなみに乃亜先輩は165cmくらいだと思う。


「乃亜ー、ごめん。ちょっと来られる?」


しばらく3人で話していると、キャプテンの都倉 藍先輩が乃亜先輩を呼んだ。3年生が引退したばかりで、練習内容等を副キャプテンになった乃亜先輩と相談している姿をよく見かける。


「なんだろ? 残念だけど、藍ちゃんに怒られる前に行くね。藍ちゃん、怒ると怖いからなー」

「聞こえてるよー?」

「やば」


乃亜先輩が居なくなると、はーっとため息が出た。


「莉子、おつかれ」

「ほんと、なんで毎回絡んでくるの……」

「うーん……気に入られてるから?」

「周りからの視線が痛いからやめて欲しい」


特に練習を見に来ている女の子達からの視線が痛い。そのうち呼び出されたりとかするんじゃないだろうか?


人気のある人と親しくすることに抵抗があるんだよな……中学校の時に学校で1番人気のある男の子の隣の席になってしまった時の事が蘇るから。


特別親しかった訳ではないけれど、周りからはお似合いだと言われ、まるで付き合っているかのようにからかわれる事が増えた。


私は否定していたけれど、相手は好意を持ってくれていたようで、本当に付き合わないか、と告白された。断ったけれど、誰かに目撃されていたのか次の日には噂は広まり、その男の子を好きな子達に呼び出されたことがあった。幸い先生が通り掛かり何も無かったけれど、嫉妬した子達の剣幕は物凄いものだった。

それからは隣の男の子とは一言も話すことはなく、女子からは陰口を叩かれ、どこに居ても辛い状態だった。

響華が傍に居てくれたから良かったけれど、もう経験したくないな……


「女子校なら平穏に過ごせると思ったのに……」

「頑張れとしか言えないわ……」

「響華、諦めないで?!」


高校に入学して約2ヶ月、まだまだ始まったばかりなのに、既に平穏から遠ざかっている気がする。

乃亜先輩と仲良くなることで中学校の時の二の舞になるのは避けたいから親しくなりすぎないようにしないとな、と思っているけれど、この先どうなるのだろうか……


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