闇&氷&自然VS咲夜さんモドキ
今回は創作スペルカードが多く出てきます。
それでもよければどうぞ。
一体どういうことなんだ?
『霧の湖』の夜に濃霧はかからないはずでは?
さっきまで怪しく佇んでいた紅魔館がいまではその影すら見えなくなっている。
近くにいた三人の姿は見えているが、他には空も森もそして湖すらも白に包まれ消え失せている。
「...一体どういうこと? 私が知る限りこんな深夜に霧がかかることは...」
明らかな異常事態に大妖精も顔を青ざめ緊張を表わせている。
「...ねーえ、誰かいない?」
ルーミアたんのその発言で場に緊張が走る。
霧に包まれ信頼できる感覚が聴覚しかない今、耳を澄ませて周囲を確認すると確かに静寂に包まれた中、ザッ、ザッと草を踏み此方へ向かってくる足音がする。
周りが見えないせいで前後左右が分からない状況で聞こえる謎の足音に皆の恐怖心を肥大させる。
「それ以上近づけばあたいが氷漬けにするよ!」
「そうですね、多勢に無勢です。妖精だからって舐めないでください、私たちは相当強いですよ?」
「あなたは食べてもいいのか? .....なーんてね」
なんで皆好戦的なんだ?
まあ、せめてルーミアたんは守ろう。肉壁にはなるでしょ。
足音は止まらない。
わざと響かせているような大きな足音。
そして次の瞬間霧の中に微かに人影が...
「凍符【パーフェクトフリーズ】」
見えた瞬間凍った。
チルノちゃんがスペルカードの詠唱を言い終わった瞬間、二m程も離れているのにも関わらず冷気が漂うほど大きく、冷たい氷が人影を包み込んだ。
「あたいったらサイキョーね!」
「...一瞬だったな。なんなんだこの人」
そう言って氷漬かされた人影を見に近寄ると目の前で
氷が消えた。
....っ!?
なんで!?
「...まぁ、少し冷たかったですね..... はぁ、明日のことを思うと憂鬱だなぁ」
明らかな第三者の声に一同に戦慄が走る。
そしてその第三者が今、凍らされた相手であることも明らかである。
分からない。
何も分からない。
俺は人名、能力なら幻想郷に住む人よりも知ってると思う。
だが、これは知らない。
普段霧の出ない夜の霧の湖に濃霧を発生させ、妖怪の中でも特に力の強いチルノちゃんのスペルカードを無効化する能力。
見たことも聞いたこともない。
霧のせいで姿は見えないし、どうしよう。
「...あなた、只者じゃないですね。その能力も見たこともありませんし、しかし一対三で勝てるとでも?」
「え? 私の非常食は戦力じゃないの?」
うん、俺だって肉壁にくらいはなるんだぜ?
「むー、あたいのひっさつわざを耐えるなんてなかなかやるな! だけどこれじゃあ終わらないよ!」
ルーミアたんは闇を、チルノちゃんは冷気を、大妖精は風を纏いながら宙へ浮き、
そして得体の知れない何者かとの戦いの火蓋が切られた。
「雪符【ダイアモンドブリザード】!」
「月符【ムーンライトレイ】...」
「樹符【ビッグウッドコール】」
三枚のスペルカードが宙を舞う。
数多くの弾幕が霧を吹き飛ばしながら敵に向かう。
霧が霧散し、やっと白が消えたと思いきや次は前が見えなくなるほどの土煙が辺りを覆う。
驚きながらも相手を見ると急激なスピードで成長する木が敵の足元から次々と生えてくる。
それを避けようとした相手を許すはずがなく、上からは雹、というより氷の塊のような弾幕が相手を襲う。
天からは月明かりを可視化したような無数のレーザーが降り注ぐ。
...圧倒的な弾幕。
外の世界では永劫見ることの出来ないであろう幻想的で、死の渦巻く光景。
僕は何が起こったかよく分からないままその光景をただ呆然と眺めていることしか出来なかった。
だがしかし、ただ一つだけ見えていた物があった。
...それは、相手の姿である。
ショートヘアで美しく綺麗な銀の髪、女性にしては高身長な痩せているスレンダーな体、黒くすべてを見通すような目、まるで、この姿は....
「『十六夜咲夜』さんそっくりじゃないか.....!」
そう、そこにはあの、紅魔館のメイド長、十六夜咲夜がいたのだ。
いや、しかし咲夜さんファンでもあった自分だから分かる。
あれは多分『咲夜』さんでは無い。
何故ならばあの嵐のような弾幕の隙間から見えた武器だ。
咲夜さんは銀製のナイフを使っていたけど今弾幕に襲われているアイツはその手に『大剣』を持っていた。
しかし、外の世界の情報が幻想郷と合っているという証拠は何一つ無いからもしかしたら本当の幻想郷では咲夜さんは大剣を使っているかもしれない。
だが、そもそも咲夜さんは俺達を襲う理由がないはずだ。
ルーミアたんとかチルノちゃんがおいたをしたって事はあるかもしれないが何の宣戦布告もなしにいきなり襲うなんてあるのか?
そんな長い考察を経ている間にも容赦の無い弾幕は咲夜さん(?)を襲い続けている。
ルーミアたん達も狂的とも言える様な笑顔を浮かべながら弾幕を放っているが俺達は、いや、外から眺めていた俺は気付くべきだった。
この間に相手は何も反撃していないことも、隙間から相手が見えたとき相手が『無傷』で、『棒立ち』だったことにも。
そして、『昼間にしかでない』濃霧が『夜間にでている』時点で相手の能力に気付くべきだった。
その傲慢が相手に行動の機会を与えてしまったのだ。
「...こんな物なんですか、妖精の最上位って...」
咲夜さん(?)はそう失望したように言うと...
『スペルカード』を発動した。
「戻符【タイムバック・弾】」
一枚のスペルカードが空中に捨てられ、そして次の瞬間
場にある全ての弾幕が消え去った。
まるで元々無かったかのように。
「なっ...」
「もう、夜が明けてしまいます。そろそろ私は仕事を果たすとしましょう。...と、その前に邪魔者がいますね。」
全員が驚愕している中彼女は面倒くさそうにそう言って、腕を振り上げた。
手には一枚のカードを握っていて、ここだけない霧が、煌々と輝く月光が、地面に落ちた氷が彼女の美貌をより輝かせていた。
月を背にして浮かんでいる彼女は俺達を見下ろしながらその顔に満面の笑みを浮かべていた。
俺達はその笑顔に気圧されるように動けなかった。
そして、言葉を、放った。
「廻符【変化のない未来周回】」
急に消えた弾幕が再び姿を表す。
まるで元々そこにあったかのように。
まるで弾幕が有ったときに時間が巻き戻ったかのように。
俺達はまた繰り返す。勝負を仕掛けた時間まで。
ただひとつ違う点を言うならばそれは.......
次に弾幕に襲われるのは俺達って事だけだ。
電光石火の如く弾幕が迸る。
月光のレーザーが降り注ぎ、氷のように水色に輝く弾幕が上空から襲撃し、高速で生え消える木々が下から襲う。
さっきまで外から見てたはずの弾幕に今は呑まれている。
「っ...畜生っ! 動け俺の足ぃ!」
俺は悲鳴を上げる足を無理矢理動かしながら木を避け、常に降り続けるレーザーと氷の弾幕を運だけで避け続ける。
しかし、そんな悪運が続くわけなく足に走った激痛で一瞬止まったその瞬間、上から一つの弾幕が降ってくる。
「ぐっ...はぁ...っ!?」
時既に遅し。
気づいたときには既に目の前、『絶体絶命』という言葉が一番似合ってるであろうこの状況。
死の間際に流れるという走馬灯がこの時、僚にも流れていた。
(ああ、人生最大の豪運で幻想郷に来たのに.....)
(ルーミアたんにも告白してワンチャンあると思ったのに...)
(てか、なんだよアイツいきなり現れて、お前のせいで俺の明るい幻想郷人生終了だよコンチクショー)
(幻想郷が怖いところとは知ってたけど妖精の中でも上位のチルノちゃんとか一応ボスにもなってるのルーミアたんとか中ボスの大妖精とかいるのにたった一人に負けるって.... チルノちゃんは時機にもなってるんだぜ!?)
(ああ、俺のことを置いて皆逃げてくれ、とかせめて言わせてくれよ!)
ひとつ訂正しよう。走馬灯ではなく、ただの負け惜しみである。
そして弾幕が段々と近付いてきて、そして、肌に触れる瞬間....
「ぐふっ....ル、ルーミアたん....?」
「私の非常食よ! 私の許可なく死なないで!」
あらヤダかっこいい!
てか何があったんだ? 何で助かったんだろう。
そう思い隣を見ると真っ黒のボールみたいな物が転がっていた。
多分あれになんか魔法的なのがかけられてて、あれを俺に投げて吹っ飛ばしたんでしょう、きっと。
弾幕の範囲外まで吹っ飛ばしてくれたのか。
...逃げろってことか。
俺に当たる寸前の弾幕を見てからあのボールみたいなものを俺に投げても間に合わないし、俺を逃がすためにあれを投げたら丁度よく俺が弾幕を避けれたって解釈でいいと思う。
....逃げるのか?
今この瞬間もルーミアたん達はこの弾幕の中あの大剣を持ち、弾幕を無効化する咲夜さんモドキと戦い続けている。
そんな中愛しのルーミアたんを置いて逃げるのか?
ふざけるなよ。
ルーミアたんは俺の事を思って逃がしてくれたんだろう。
分かってる。
なんの能力も力もない人間が無意味に居るくらいだったらさっさと逃げた方がいいに決まってる。
だが、逃げるぐらいだったら今ここでルーミアたんを身を呈して助けて死んでやるよ!
さあ、第二ラウンドだ。




