新たに始まる第二の人生
「.....ん? こ、ここは?」
目を醒ますと背中がやけにごつごつした感触に覆われていた。
灯りは無く、暗い中、よく見てみると天井も壁も岩でできていて、その上、全身が尋常じゃないくらいの倦怠感に覆われていた。
あれ?
俺は確か洞窟で......
「そうだ、確か俺はルーミアたんに出会って....」
そうだ。
俺は洞窟でルーミアたんに出会って告白して....
こ、断られたんだっけ。
でも、友達にはなれたし!
別に、全否定された訳じゃないし!
まだ可能性あるし!
「いや、まだこれからだから! さっきは出会った瞬間だからであって!」
そう言いながら立ち上がろうとするが、腕を動かそうとした瞬間両腕に激痛が走った。
「っ....!」
いってぇ!
くっそ、筋肉痛か!?
うっわ、こんな痛み中学校以来から感じたことないぞ!?
そもそも筋肉痛自体しばらく感じたことなかったし....
てか、ここどこだよ!
そんなことを思いながら首だけ動かし周りを見てみると暗くてほとんど見えないが明らかに周りとは違う真っ暗な黒い球型の空間が右側に広がっていた。
左側からは少し月光が差し込んでいたのでこの空間はこの洞窟を入り口から一回ぐらい曲がったところにあるんだなと感じた。
(ここはルーミアたんの住んでるところかな? そうだとしたら、い、今ルーミアたんと同じ場所で寝てたってこと!?)
と、大分気持ち悪いことを考えているとさっきの黒い空間から声がした。
「わー、起きたのー?」
「うおっ...」
不埒なことを考えていた天罰か、右側にあった黒い空間から可愛らしい声が響いた。
「な、何だ。ルーミアたんか....」
「む。私以外に誰が居るの?」
驚き心臓の鼓動を速くしながら話すと、いかにもおちょくる様な声でルーミアが黒い空間を外し、話しかけてきた。
黒い空間が無くなったルーミアは暗い空間の中でも一際輝く美しさを放っており、その美貌が伺える。
幻想郷に来て良かったと、改めてその感動を痛感しながらルーミアを見ると暗闇の中で自分のことを見つめていた。
「どうしたの? ルーミアたん」
「んー? 見たことない服だなーって思って。ボロボロだけど」
確かに、今俺の着てるこの制服は多分幻想郷に無いと思われる代物。
ルーミアたんが不思議がってもおかしくないな。
そう思いながら改めて自分の制服を見てみると上に着ている黒い校服は既にボタンは外れ、生地も多くの穴が開いていた。
その穴から見える下に着ている制服も血が少し滲んでいて、更に傷だらけの地肌が見えるくらいボロボロになっていた。
うっわ。
こりゃひどいな。
寒いし、これからの生活で冬になったらかなりきつい服装になってる。
長袖の服なのに右側だけ半袖になってるし....
「あーあ、どうやって直そうかな。これ。もう使えないかなー....」
まあ、どうせ幻想郷で生きてくなら幻想郷の服もほしいし、時間の問題だったか。
「ねえ」
「え? なに?」
そうやって考えていると突然ルーミアが話しかけてきた。
「貴方って、一体なんなの?」
「え?」
とても抽象的な質問だった。
しかし、問題の中心にいる人物はこの質問の意図をしっかり汲み取っていた。
(俺がどこから来たのかって話しか。まあ、確かに見たことの無い服装でこんな森の奥地に、しかも子供が来たんだもんな。そりゃ、誰だって冷静になれば疑うよな。)
理屈では分かっているのだ。
さっさと言え、と。
外の世界から来た、と。
しかし、声に出せない。
何故ならゲームやネットでは余り、語られてないのだ。
『外の世界』の住人について。
『外の世界』から隔絶されたこの『幻想郷』において、『幻想入り』した人間への風当たりなどは何も情報がなく、仮に『外の世界』の人間が差別されていたら?
ルーミアたんに、嫌われたら?
そんなこと、考えたくもない。
「....? どうしたの? 答えてよ」
「ちょ、ちょっと待って! その前にひとついいかな?」
まず聞いておこう。
それから考えよう。
うん。
「なーに?」
「こ、この世界って特に差別とかないよね?」
「『この世界』? ふーん、まるで自分が他から来たみたいな言い方だね?」
あ、やべ。
「いやいやいや、違いますよ? 別に俺は外の世界から来た訳じゃなくて、一応聞いとこうかなって思ったわけで!」
「....私は一度も『外の世界』なんて言ってないよ?」
うわあああ!
やっちまったあああああ!
なんでこういう時だけ頭が回るの!?
「いや、ちょ、そう言うのじゃなくて、えっと、だから、あのー...」
うわわわわわ、ちょっと待って、えっと、どう言い訳すればいいんだ!?
あのー、えっと、やべぇ、焦んな、落ち着け!
「ぷくく....」
「え?」
え?
「あははは!」
「え? ん? は?」
あ?
ん?
何で笑ってるの?
「ぷぷぷ、面白いなぁ外の世界の人間は」
「え? どうして、分かったの!?」
え!?
なんでわかってるの!?
「分からないの? 自分の服を確認してご覧?」
自分の、服?
そういって自分のボロボロになっている上着を見てみると上着の破れた場所から下に着ている制服の学校の名前が見えていた。
「これがどうしたの?」
「まだ分からない? そんな名前のものはこの世界にはないんだよ?」
た、確かに、これは盲点だった!
「ルーミアたんは俺のこと軽蔑しないの?」
「軽蔑? あぁ、もしかして外の世界から来たことがばれたら軽蔑されると思ってたの?」
げ、バレテーラ。
でも、こんなことを言うってことは少なくとも『外の世界』ってことだけで差別とかはされないんだな。
ルーミアたんって外の世界だと「バカルテット」とか言われて馬鹿にされてたけど実際に会ってみると意外と頭が回るんだなあ。
「私にもなれば外の世界の人にも会った事が有るのです!」
へえ、俺以外にも会った事が有るんだな。
まぁ、そりゃ幻想郷に来たならルーミアたんに会いたくもなるよね。
「へぇ、ルーミアたんが会った事ある人達ってどんな人? できれば今何処にいるとか教えてくれるとありがたいな。ちょっと色々確認したいからね。」
もし、そいつらがルーミアたんに失礼してたら俺が直々に説教食らわせにいかないと、俺のルーミアたんになにしてんだよってね。
え? お前もだろって?
ちょっと何言ってるか分からない。
「うーん、あの人達なら今は冥界とか地獄とかじゃないかな?」
「え?」
「出会ったら食べちゃったから」
ルーミアたん、恐ろしい子...!
まあ、妖怪だし仕方ないね。
でも彼らもルーミアたんになら食べられても本望だったでしょう。
「ん? でも何で俺は食べられてないの?」
「...貴方は面白いから私の非常食として残してあげる」
「え!? 彼氏としてじゃないんですか!?」
「そんなわけないでしょ! 非常食よ。あくまで非常食...」
まあ、仕方ないか。
これからゆっくり時間をかけていこう。
まだまだ俺の幻想郷での暮らしは、始まったばかりなんだから。
「そうだ、これから私、チルノ達と遊ぶ予定があるんだった。...貴方も付いてくる?」
「はい、どこまでも」
そう、俺の東方邁進録は。




