初めての告白は出会って3分のあの子
「........」
時刻は夜明け頃。
森の奥の一つの洞窟の中で声一つ出さずに眠っている。
外では幻想郷固有の蝶がひらひらと舞っている。
まったくの無音空間が佇む中で洞窟の奥の『暗闇』が迫ってきていた。
ただの『暗い』ではなく、本物の『暗闇』が。
そう、『闇を操る程度の能力』、【ルーミア】が。
空中を暗闇を纏いながら飛び、洞窟の外に出ようとしていたが洞窟の入り口部分で地に足をつけて歩いていると、何かにぶつかり、こけてしまう。
「わわっ」
そこで不思議に思ったルーミアは自らの暗闇を払い足元を見てみるとそこには白い服の上に黒い上着を着ていて、黒いズボンを穿いている人間を見つける。
「わぁ。あなただーれ?」
「........」
「うーん、これ死んじゃってるのかなぁ。」
そんなことを独りごちながら、かがんで横たわってる人間を見ながらこう言った。
「食べちゃおうかな」
そう、彼女はお腹が空いていたのである!
「でも、生きてたら面倒だなぁ。どうしようかな」
意識を失っている間に食べられるか食べられないかの瀬戸際に追いやられてることを無意識下に感じたのか急激に意識を覚醒し始めた僚だが、時、既に遅し。
「......ん? こ、ここは?」
「うぅん、やっぱ食べたいからたべようかな」
「え? うん? は?」
この短時間に二回も気絶をし、いままでの人生でこれほどないくらい濃い時間を過ごしたためか、意識を取り戻した瞬間目の前にやけに物騒なことを喋る美少女が居るこの状況に頭が混乱してなにも分からないまま唯一ここで僚が放てたのは一言だけ。
しかし、その一言はいままでの『東方project』に捧げてきた人生でルーミアに対して一番言いたかった一言。
そしてその言葉はルーミアの心を掴む一言だった。
「好きです。付き合ってください」
「え?」
洞窟の中での数分の出来事。
そしてその出来事がこの場を静寂が支配した。
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え? え? 何? なんなのこの人間!
『闇を操る程度の能力』、【ルーミア】は自分の妖怪生活の中で見たことのないタイプの人間と出会っていた。
この人間何なの!
いきなり私にこ、告白してくるなんて!
「な、何を言っているの! ダメに決まってるでしょ!」
「な、なんでですか!? 理由を聞かせてください!」
理由を聞かせてって、いきなり告白してくるんだからダメに決まってるでしょ!
「いきなりなんて、その...いや、とにかくダメなものはダメなの!」
「えー、納得できないですよ!」
この人間しつこい!
「私は妖怪で貴方は人間だからなの! しかも突然告白なんて.... まだあなたの名前すら知らないのに!」
「えっと、じゃあ俺の名前は霊君 僚です! 付き合ってください!」
「そういう意味じゃなーい!」
なんなの!
一体この人間は!
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勢いでやっちまったぜ。
流石にいきなりは失礼すぎたのかな?
でも、やっちまったものは仕方ない。
だってさ、考えても見てよ!
意識覚醒→目を開ける→目の前に美少女 (しかも推しキャラ)
こんなん現実で起きたらもう告白しかないじゃん!?
でも自然な流れで名前も名乗れたし結構押せばいけるのでは!?
え? 告白と名乗る順番逆だろって?
こまけぇことは気にすんなよ!
「せ、せめて友達からとか、そういう順番が有るでしょ!」
「え? じゃあ友達にはなってくれるんですか!?」
「え、えっと...と、友達なら良いよ?」
マジで?
え?
本当?
「マジっすか?」
「良いって言ってるでしょ! うぅ...なんで朝からこんな事に...」
っしゃあああああ!
よくやった俺!
頑張った俺!
今世紀最大に頑張った!
え?
涙出てきた....
あんな、怪物に追いかけ回されて、全身激痛が走って、今はアドレナリンどばどば出てるからいいけど、体動かないし、筋肉痛と物理的なダメージは大きいし、血は所々から出てるしで結構、幻想郷に来てから生死の境をさ迷ってたけどやっとぐっすり眠れそうだな。
とか、考えたらきゅ、急に疲れが押し寄せてき、きた、な。
や、やべえ。
し、視界がだん、だん、暗くなって......
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バタン!
そんな音をたてて目の前の人間が倒れた。
なに、この人間。
さっきから同じことしか思っていないことには気付かず、目の前で倒れて気絶している人間を見つめる。
「朝から押し寄せてきてまた気絶しちゃうなんて迷惑だなー」
急に静かになった朝。
いつの間にか蝶は何処かへ消えてしまった。
「この人間、どうしよっかなー」
ここで倒れる人間をどうしようかと考えるルーミア。
だがもう対処法は頭に浮かんでいるのだ。
簡単なことだ。
この人間を喰ってしまえばいい。
そしてこの朝を無かったことにすればいいのだ。
そして、また目の前の人間を見つめる。
「この人間、確か僚って名乗ってたよね」
うーん、でも、めんどくさいしいいや!
基本的に面倒くさがりなルーミアはこのまま自分の住みかに僚を連れていき、住みかでまた一眠りすることに決めたのであった....