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東方邁進録  作者: 板チョコチョコ
妖拐異変の章
13/14

異変の始まり

冥界~石段~


相変わらずここの石段ひろいなぁ。

掃除をするのも、一苦労ですね....


この世界では珍しい銀のショートカットヘアーを持ち、常に傍らにふよふよと魂魄を浮遊させている彼女は幽人の庭師『魂魄妖夢』だ。

腰に二本の刀を常備しており、このだだっ広い白玉楼の警備と木の剪定を行っている彼女は所謂『剣士』だ。

そんな彼女は現在顕界と冥界をつなぐめちゃくちゃ広い石段を掃除している。


コツコツ....


そんな静かで平和な空間に雑音が響く。


コツコツ....


「あら、双子で観光ですか? でも、すいません。ここ、観光地じゃないんで帰ってもらいますか?」


下から登ってくるのは真っ白な服と真っ黒な服を着て、まったく同じ顔をした男性二人。

白服はその腰に長剣を、黒服はその腰に短剣を携えながら宣言する。


「...我ら黒と白」


「交わることのない絶対の色」


「...汝、冥界の剣士『魂魄妖夢』と見受けられる」


「我らと一戦願いたい」


黒と白が交互にまるで一人が喋るかのように話す。

そして、その雰囲気は只の『人』ではない。


「それは拒否したいところですが、出来ませんよね...ま、私の仕事には警備も含まれてますし、ちゃちゃっと倒して、幽々子様のご飯作らないと!」


余裕の笑みを浮かべながら刀を抜く。


「「「行くぞ」」」


ここでもまた、戦いが始まる。


------------------------------


地獄~是非曲直庁内~


「ふぃ~、今日の仕事やっっっと終わったわー」


赤い髪を垂れ下げ、背中に自身よりも大きい鎌を携えながらだるそうにこう話すのは三途の水先案内人『小野塚小町』である。


「小町、貴方にはまだ終わっていない書類作成が山ほどあるでしょう?」


帰ろうとする小町に対して、鋭い眼光を向けながら話すのは楽園の最高裁判官『四季映姫・ヤマザナドゥ』である。


「きゃははは! まだ終わってないの? 早く終わらせた方がいいよー!」


天真爛漫の笑顔を見せはしゃぐ彼女は狂気なる地獄の妖精『クラウンピース』である。


「貴方もでしょ?」


何もない空間に急に現れクラウンピースの頭をピシッとたたく彼女は地獄の女神『ヘカーティア・ラピスラズリ』である。


この四人は実力至上主義の『地獄』において上位、もしくは最強とも称されるほどの強さを持っている。


「...ヘカーティア様、いらしたんですか?」


「何よ、迷惑?」


「四季様はヘカ様のTシャツが相変わらずダサいと申しております!」


「あらあら、相変わらず元気ね。映姫、この子の仕事を倍に増やしてあげて」


「はい。分かりました」


「え!?」


「きゃははは! ばーかばーか!」


「貴方もよ」


「え!?」


和気あいあいと話してる4人は会話だけ聞けば微笑ましいが、実際は死者が戦慄するほどのオーラを放っている。

現にヘカーティアが出現した瞬間最も近くにいた死者数十人が気絶している。


コントみたいな会話をしながら小町とクラウンピースは業務へ、映姫とヘカーティアは現在の地獄について話そうとしたところ、何の前触れもなく後ろから異様な気配を放つ存在が現れる。

...異様な気配、というのは奇妙だとか不思議な気配というものではない、文字通りの『異様な気配』だったのだ。

具体的に言えば何人もの人の気配が入り混じったような、混じりあわない二つを無理やりねじ込んだような、多くの色のインクを大量にバケットに塗りたくったようなそんな気配。


...ここの四人が放つ『オーラ』とは違う異常な『オーラ』


その異質さに四人も思わず気配のする方向を向く。


「ご、ご機嫌麗しゅう。僕、私、我は、七つの裁判官です! なのです! そうなのだ!」


その声は一文字一文字の音声が違う。

多種多様な人の声を録音してつなぎ合わせたような音声。

一人称も語尾も定まらず喋るその様は、不安定そのもの。


「おや? あれ? ん? わお! き、君、貴方、彼女は僕、自分と同じ裁判官じゃなーい? そうだよね! そうだよ! そうじゃない?」


この場所の誰も反応できない。

話しかけられた映姫も、クラウンピースも、小町も、ヘカーティアも誰もがその雰囲気に呑まれて話すことができない。


「はん、反応がないなんて悲しいなぁ、悲しいよ! 悲しいわ... ところ、ところであなた方、君たち、そちらの方々には死んでもらうヨ! 死んじゃうよ、死んじゃうねえ、死ぬの?」


「小町、さっき倍にした仕事はあれを倒すことです。行ってきなさい」


「え! 嫌ですよあんな奴! まるっきりバケモノじゃないですか!」


「ヘカピ? 行ってくれるわよね?」


「えぇー! いくらご主人様の願いでも無理だぜ? あいつは生理的に無理!」


流石この四人だけあってこの異常空間の中でもう自分を取り戻すことに成功している。

だが、状況が好転したわけではない。


相手は実際ピエロのような恰好をしておきながら人なのか妖怪なのかそもそも人外なのかする分からない。

そしてその強さは気配からわかる。


圧倒的上の上。


しかし、ここにいるのは最強の女神と最狂の妖精と絶対の裁判官とサボり魔。

こいつが上の上ならここの四人は最上の超最上。

負けることなんてないだろう。


そう、思い込みすぎた。


「そんなに調子こいて君、彼女たち、あなた方は『傲慢』だね! 『怠惰』だ! 『色欲』ね! 『憤怒』ですね! 『強欲』だな! 『暴食』なのだ! 『嫉妬』よ!」


相手が喋っているのは、かの有名な『七つの大罪』

そして一つの大罪を口に出す毎に言葉が、空気が、気配が重くなる。


ここでもまた、新たな戦いが始まる。


------------------------------


スキマ~???~


幻想郷のどこかに存在する『スキマ』の世界。

どこからでも入れるが、どこへ行っても入れる道のない不可思議な世界で長い金髪を下げながら冷や汗をたらしているのは幻想の境界『八雲紫』である。


「いったいどうなってるの...? いったいどこから....」


「苦労してるそうだね、頑張ってるかい?」


宿題を忘れて学校に来たような表情をしている紫の目の前に突如開いた扉と共に現れたのは究極の絶対秘神『摩多羅隠岐奈』である。


「隠岐奈...少し、手を貸してくれないかしら?」


「ほほう、お前が私に助けを求めるとは相当なことが起こったと見れる。どれ、私に話を聞かせてみなさい」


「相変わらず癪に障るわね。...今、幻想郷で異変が起きてるのは知ってる?」


「ああ知ってるとも。地上は大騒ぎだな」


「...地上だけじゃないわ。冥界、地獄、天界、それと地底にも来てるわ」


「...少し、興味がわいてきたなあ。どんな異変なの?」


「詳しくは分からないわ。ただ、分かっていることは複数犯っていうことだけ」


「ふむ、分かった。すぐに二童子を動かす。私の『扉』とお前の『スキマ』で対処しよう」


この僅かな話の中で情報を整理し、異変の概要を理解すると即座に行動に移す。

これが『賢者』

正真正銘の『妖怪』


しかし、『絶対』ではない。


「おやァ~? なんカ、入れちゃったァ~」


後ろから声が響く。

気の抜けたような声が狭いか広いか分からない空間に強く響く。

紫と隠岐奈が即座に振り向くとそこには紫のスキマとも隠岐奈の扉とも違う、いうなれば『門』から入ってくる一人の女性がいた。

いかにもどこにもいる感じの二十代前半程度の女性だが、短い赤髪からは漆黒の角が生え、その角と同じく漆黒のマントを靡かせていた。

侵入してきたと思われる『門』からは一切の音も物体も見えず、ただ白い空間が広がっているだけだった。


「おやおヤ~? どうしたんですカ? 驚いた顔しテ...」


「貴方、良く入ってこれたわね。だけど正面突破は悪手じゃない?」


「秘神相手に背中をがら空きとは....自分の背中ってのは案外見えないものだ。お前の背中、代わりに私たちが見てやろうか?」


それぞれがお互いに異次元の魔力を放出し始める。


ここでもまた、新たな戦いが始まる。


------------------------------


天界~有頂天~


あーあ、今日も暇だなー。


幻想郷の遥か上、雲を超えたその先の小さな石の上で太陽を見上げる青髪の女性が暇そうにしている。

彼女の名前は非想非非想天の娘『比那名居天子』である。


異変とか始まって面白い奴が来ないかなー。


そんなことを毎日思っている彼女だが今回だけはそれが現実になる。


「わあ!」


瞬きの間ともいえる程の一瞬で天空から雲に墜落する。

数百メートルを一瞬で落ちたが、その程度は天人である天子には一切効かないわけだが問題はその能力だ。

天子の乗っていた小さな石...『要石』はその見た目とは裏腹にとんでもない重さを持っているがその石を一瞬で落とす能力。

間違いなく強い。


ひっさびさに楽しそう!


大分前に起こした異常気象異変を後に誰かと戦うということがなかったため気分が高揚する。

雲に落とされると同時に展開した要石の布陣も、ぎらぎらと光る『緋想の剣』も心なしかいつもより重く、強くなっているように見える。


「よーし、やりますか!」


「ふむ、話が早いのは助かる。やはり天界はよいな。空気は美味しいし天気もいい」


そこに佇むのは一言でいえば「仙人」

身長も一般の老人そっくりだがその手には物々しい樹の杖が握られ、オレンジ色の服のいたるところには異様な気配を放つ黒い斑点がちりばめられていた。


「今日の天気は晴れのち異常! ついでに不安定! おじいちゃん、傘は持っとかないと風邪ひいちゃうよ?」


「その雨粒も一つ一つに『重さ』がある。自分の能力で潰れないようにしとくれよ?」


ここでもまた、新たに戦闘が始まる。


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地底~地霊殿~


「ねえお空! なんか遊ばない?」


薄いエメラルドグリーンの髪を靡かせながら天真爛漫に話しかける少女は空想上の人格保持者『古明地こいし』である。


「うおっ、こいし様いたんですか!?」


妖精に驚かされたように吃驚しているのは地底の太陽『霊烏路空』である。


「お空~死体持ってきたから後で燃やしとい...ってええー!? こいし様!? さとり様は!?」


非常にうるさく叫ぶ赤髪の彼女は地獄の輪禍『火焔猫燐』である。

陽気な人の多い旧地獄の中でも騒がしい部類の彼女がいつもの三倍くらいうるさいのにはちゃんと意味がある。

それは、こいしの存在である。

実はさとりとこいしは地上の調査の為に今日は地上にいるはずなのだ。


「えへへ、抜けてきちゃった!」


「ヤバイですってこいし様!」


「アタイもそう思います! これで連帯責任とか言われてさとり様に怒られたらどうするんですか!」


「私は逃げれるから大丈夫だよ」


「「アタイ(私)たちが大丈夫じゃないんですよー!」」


そんな会話を続けているとふと『気配』に気づく。

普段こいしを探すために気配を探る能力が向上しているのでそういうことに敏感になっているのだ。

そしてその鋭い気配察知は余計なことまで教えてくれる。


「めっちゃ強い何かがきたぁ」


その気配は明らかな『強者』

ここの三人で勝てるか勝てないかというレベルの強さだ。


「こういう時に限ってさとり様がいないんだから...」


「お空が戦うときはできるだけ力を抑えてよ!? またあの時の異変なんて嫌だからね!?」


ここの三人で勝てるか勝てないかといったが路空だけは別だ。

周りを一切考えずリミッターも何もかもを取っ払った状態で本気を出せば瞬時にしてこの幻想郷の最強格になりあがる。

弾幕なんて関係なしに一切合切を核融合反応で吹き飛ばすことで勝つことができる。

昔の異変ではそのリミッターが外れかけた時があって大変な目にあったことがあるのだ。


バガァアアアアアアン!


すさまじい爆発音とともに真左の壁が吹っ飛ぶ。


「うっそ! もう最悪! これ直すのどうせ私と河童じゃん!」


「...そんなことを言っている場合か? 我が来たのだぞ? 偉大なる我が!」


壁の崩壊で立ち込めている砂埃の奥から人影が現れる。

実際に見てみるとそこに現れるは『不遜』『傲慢』の権化。

一切隠す気のないオーラからはすべての人や妖怪を見下す雰囲気さえ感じられる。


「見よ! 恐れよ! 慄け! そしてくたばれ! 我が直々に地獄の連中に制裁を加えてやろう!」


煙が完全に晴れるとそこにはおそらく純金でできたネックレスを首にかけ、夜なら光りだすんじゃないかと言わんばかりにキラキラしている金色の趣味の悪い服を着ながら、他人を見下すように喋る。

そんなうざい男は深紅の髪を見せつけるように大声でしゃべる。


「我はぁ! この世界、最強の男! 貴様ら地底に堕ちた愚民どもを排除するため我らが神に使わされたものだぁ! さぁ、勝負!」


ここでもまた、新たな戦いが始まる。


------------------------------


???~???~


「やっとだ...」


暗闇に声が響く


「私が神々を務めるときが」


暗闇に声が響く


「賢者がこの世界を創造したなんて馬鹿らしい」


暗闇に声が響く


「もう一回リセットして」


暗闇に声が響く


「私が創りなおさなければ...」


狂的な笑みを顔面に張り付けて笑う。

狂った空間に声が響く。

暗闇に、声が、響く。

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