従者を護るために主は動く
戦いはより壮絶さを増していた。
その弾幕の濃さでまるで光の塔が聳え立っているようで、その圧倒的な弾幕はその余波だけでここら一体が消滅するんじゃないかと思うほどだ。
しかし、不思議なことに爆発音鳴り響いているにも関わらず最初の爆撃以来地面は一切削れていなかった。
「うわぁ、どうすんだこれ...」
森から出て状況を見たはいいが、どうすりゃ良いんだ...
何か咲夜さんの役に立つことがしたいとは心では思ってる。
だが、役に立つって一言で言ったってこの状況下で俺ができることは咲夜さんの安否を考えること位しかない。
...だけどなぁ、まずこの状況になった詳細が寝てたせいで分からないから考えようもないんだよなぁ。
と、そんなことを思っていると後ろの茂みからガサゴソと音をたてながらルーミアたんが出てきた。
相変わらず無邪気な笑顔だ。んー、眩しい。
「(ルーミアたんの笑顔)めっちゃ眩しいなぁ…」
「ん? あー、確かに(弾幕が)眩しいね」
少しすれ違い気味の会話を交わしながらふと思い付く。
「あ、そういやルーミアたんって俺が寝てからのこと覚えてる? 出来れば教えてほしいんですけど...」
「うん、分かった」
そのあとルーミアたんの話を聞いて、その事を要約すると....
お前は....!
何よ、貴女なんか知らないわ
じゃあ、教えてやろう
ゴニョゴニョ...
なっ...!
...って感じらしい。
もしかしてだけどあの二人予想通り姉妹だけど会わせちゃいけない系の二人?
ッスゥー...やべえな。
咲夜さんは俺が呼んだも同然。
これが終わったあと咲夜さんに何て言われるんだ?
この状況なら某ラノベの主人公も「あれ? また俺なんかやっちゃいました?(悪い意味)」と言うに違いない。
「まあ、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。どーせ咲夜が勝つよ」
「え? ルーミアたん、それまたどうして?」
「ま、見てればわかるよ。...悔しいけど咲夜って本当に強いから」
悔しそうな顔をしながらそう言うルーミアたんを横目にそれは言い過ぎだろうと思っていた俺だったが、すぐにその考えが本気で言っているものだと気付いた。
「あ、そういえばここら辺に急に蝙蝠が集まってきてたね」
「え、まじ?」
それは一つの存在を示唆するもので、僚にとってはかなりの誤算と考えるものだった。
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時間は丁度咲夜さんモドキがスペルカードを使用した辺りまで遡る。
「ねえ、貴女どうしたのよ! こんなこと...」
正直なところ咲夜さんは困惑していた。
なんで彼女が私を攻撃するのか。
....そもそも、なぜここにいるのか。
「『こんなこと』? ...やっぱり、貴女には解らないんでしょうね! この行動の意味も! 私の痛みも!」
自分の能力で空間を歪め、とんでもない量の弾幕を避けながら考える。
....この娘は間違いなく私の姉。
それはわかる。
だけど、確かに姉はあの時あの司祭に殺されたはず....!
忘れるわけない、あの時のことを!
だけど分からない。何で...何で姉が私に攻撃してくるのか分からない....!
「私は...貴女を忘れていたことなんて....」
「ハッ、じゃあなんであの吸血鬼と一緒にいるのよ! 貴女はここに来て何かしたの!?」
その言葉で気付いた。
私のここに来た目的を。
私は、家族を、戻したかった....
私は今まで.....今まで......
何をしていた?
その一瞬の呆けが此処では命を削ることになる。
一里以下の数コンマ何秒という短い時間の思考停止が肌を灼く。
狂った空間の間を縫うように入ってきた一つの弾幕が肩を削った。
「...っ!」
「....だから、戻ったのよ。上っ面だけ家族を想う貴女を私の代わりに地獄へ引き摺り降ろそう、ってね」
更に弾幕が強く、濃くなる。
「さよなら」
その圧倒的な弾幕は歪めた空間を突き進み咲夜さんを.....
「...待ちなさい」
貫かず、消えた。
この爆発音の響く五月蝿い空間に清らかに響く声。
森羅万象が気圧されるような威圧。
その存在は薄い紫の髪を靡かせ、眼を紅く染めていた。
見える表情は...憤怒。
緋色に染めた槍を片手に、明確な殺意を眼に宿しながらそれはやってきた。
「....チッ、主従揃って来ましたか...」
「貴女...私のメイドに誰の許可とって手を出してるの?」
今ここに最終決戦が始まる。




