プロローグ
どうしても東方系が書きたかったんや....
一瞬暗くなる視界を舌を噛むことによって防ぐ。
足がふらつき、平衡感覚はもうほぼ失われている。
だが、決して止まらない。
全身の至るところが悲鳴をあげている。
だが、決して止まらない。
何故ここにいるのか、何故こいつらに追われているのか。
ここまで来る経緯を考えた瞬間走馬灯のようにその記憶が浮かび上がってきた。
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「おーい、起きろ!」
「何? こんな朝っぱらから」
俺を聖域から追い出そうとしてるのは何を隠そうマイファーザーである霊君 功である。
「いいからはよ起きろや!」
「うーん、あと十年寝かせて」
「おい! 今日は月曜日だぞ!」
そんな無慈悲な父に起こされそうになっている可哀想な人は、霊君 僚、そう、俺である。
因みに母はつい、先日交通事故で亡くなってしまった。
「はいはい、今起きますよ....ん? お父さん? 俺の目がおかしくなきゃ今は8時って見えるんですけど?」
「そうだよ! だから早くしろ!」
「マジかよ!? 飯食ってる暇ねえ!」
制服を五分で着替え、これまで生きてきたなかで最速タイムを叩き出す。
パンを食べながら登校するなんて器用な真似はできるはずもなく、なにも口に入れないまま登校する。
「行ってきます!」
「おう、気を付けろよ」
そんな会話を続けながら家を出発した時間は8時半。
このまま通常のルートでは9時までに間に合わないことは分かりきっている。
そのため、いつもは使わない結構不気味だけど頑張れば30分で学校につく山道を使うことにした。
「うおお! 急げ、俺えええ!!!」
そうして走り出して十分後ある緊急事態が起きた。
不気味、普段は通らない、山道、色々な観点から見て、導きだされる答えはひとつ。
「やべえ...遭難した...」
そう僚は、登校中に山道で遭難したのだ!
ここに来て痛恨のミス!
帰り道も分からない!
そんな中、焦りに焦って考えたことは....
「いや、これ無理だな。諦めよう」
諦めたのである。
そうして「山で遭難した時は下るんじゃなくて登った方が良いんだよな」などと考えつつ、上へ上へと登っていった。
そうして、更に十分ほど経った後に違和感を覚える。
上へと登っていく内に身体中から謎の恐怖感が芽生えてくるのだ。
普通の人ならすぐに引き返すであろう悪寒。
しかし、なんということか。僚は『普通の人』では無かったのである。
(なんだ、これ。体中が恐怖を訴えてきてる。こりゃこの先に何かがあるぞ!)
悪寒が出る前より元気になって登っていったがそんな余裕もすぐ消えていった。
一歩踏み出せば冷や汗が吹き出し、二歩踏み出せば鳥肌が全身から出て、三歩踏み出せば物理的か精神的か分からない重さが体にのし掛かってくる。
そうして、流石に引き返そうかと考えたそのとき、目の前に建造物が見えてきた。
(あれは....鳥居?)
そう、汚れが多くついているがそんなことを一切感じさせない赤く美しい鳥居が有ったのだ。
それに惹かれるように近づいてみると鳥居の奥には神社があった。
こんな恐怖と悪寒が支配する空間にあるにはいささかおかしいと思う神社。
その光景はまさに『幻想』
そしてよく鳥居を見ていると埃や葉っぱにまみれて見えにくいが確かに文字がかかれている。
その文字は
「博霊...神....社?」
確かに『博霊神社』と読める文字がそこにはあった。
更に鳥居を潜り、境内と思われる場所に入ると、いままで感じたことのない空気がはこびっていた。
まるでこの神社だけ周りのありとあらゆる空間から隔絶されたような感覚。
『博麗神社』
ゲームやアニメの中でもその見た目は幾度となく見てきたが現実で見ると確かに不可思議な雰囲気を醸し出している。
ネットでは博麗神社はこう噂されている。
(これが...あの『幻想郷』と『外の世界』を繋ぐ神社か...)
外の世界の住人が幻想郷に入れる唯一の場所と。
これまで16年生きてきて探し続けた幻想郷への入り口。
そのことに胸は高鳴り、期待が渦巻く。
そしてついに、博霊神社の中に入ると、頭に直接囁かれるような声が響く。
『汝、此の世界への入場を許す』
「え? それって一体......っ!?」
その意味を問いただそうとした瞬間頭の中をぐちゃぐちゃにされるような、頭蓋骨を握りつぶされるような頭痛が広がり、そのあまりの痛さに脳内は急激に機能を停止し、意識を手放した。
『汝の願い聴き遂げた。その命、精々生き足掻くのだ』
そんな声を残して...