神話
俺の中には、黒い光があった。
アリシアの中には、白い闇があった。
お互いが溶け合い、拒み合った。
あの場で俺が死んでもおかしくなかった。
ただ、あの時の俺はどうかしていた。
俺はあいつのことより自分のことを優先してしまった。
生きたいと思ってしまった。
そして、俺は悪魔になった。
そんな俺を、許してくれるか?
俺らは、カラナ渓谷に徐々に近づいていた。
辺り一面森だったのが、少し山が見えてきた。
「ずっと思ってたんだが、その禁忌ってどんな魔法なんだよ」
「あら、ヴェズで知ったのかと思っていました」
「確かに見たがわけがわからん、そもそも歴史なんて勉強してねーよ」
「なるほどね……それぐらい常識として知っててほしかったです」
「悪かったな、常識を知ってなくて」
「まぁ良いです。説明しましょう」
太古の昔、神はこの世界にネフィウスとガネルという子を生んだ。
ネフィウスは太陽の神、ガネルは月の神となった。
ネフィウスは常日頃世界を照らし続けることを怠らなかった。
そのため世界はネフィウスのことを良いものとして捉えるようになった。
一方ガネルは、良く自分の仕事を忘れることが多かった。
そのため世界はガネルを悪いものとして捉えるようになった。
ネフィウスを妬んだガネルはあることを考えた。
ガネルは自らの魂を悪魔に売り、力を得た。
彼は「消滅」の魔法を得意としていた。
その魔法に悪魔の力を加えてできたのが「ヴァジュラサイス」だった。
その力は、世界を消滅することができるほどの力だった。
そんなガネルの動きに気づき、ネフィウスはガネルを止めようとした。
ネフィウスはヴァジュラサイスを石に封じ込め封印をかけ、そしてガネルを殺した。
そしてネフィウスは、自らの命も絶った。
「そうしてユリウス教とソール教ができたのです」
「皮肉な話だな」
「世の中そんなものです。あなただって似た経験をお持ちでしょ?」
俺は一瞬立ち止まった。
確かにあんなに皮肉めいた話は無い。
だが、
「……こんなきれいな話ではないがな」
「そうですか」
「まぁ良い、話を戻そう。つまりヴァジュラサイスを使おうとしてるんだな?」
「そう言うことです」
「それを使うためにはユリウスの封印を解かなきゃならないだろ」
「そうです」
「ソールの奴らがユリウスの魔法は使えないはずだが」
「彼らは我が同胞を拉致したのです」
「拉致!?」
「つまり、ユリウスの魔法も今となっては使えてしまうのです」
「急がなきゃならなさそうだな……もし封印が解かれたらどうなる?」
「ソールの人々が解読に取りかかるでしょう」
「時間の問題だな……」
そう言ってる間に山の麓に到着した。
「すぐに着くな」
「はい。ここから数分です」
「よし、なら……」
「誰も邪魔しなければですけど……」
そう言ったかと思うとエリアが右手を突き出した。
「誰ですか?そこでこそこそしている鼠は」




