操作
俺は今まで、何もしてこなかった。
いや、何もできなかった。
けど、俺にも何かできるチャンスができた。
それがアリシアのためになるかはわからないが、
何もできないよりかはマシだ。
アリシア……
「これを持っててください」
そう言われ、エリアが投げた何かを右手で受け取った。
見ると円形上の金属に教会の紋章と俺の名前があった。
「何だこれは?」
「それはヴェス……簡単に言えば身分証明書です」
「身分証明書?」
「司祭の方は皆さん持ってるものです。私も持っています」
「で、なんで俺がこれを持つんだ?」
「あなたは教会に属していないので臨時に司祭にした……と言えば良いですかね」
「そんな話聞いてないぞ!」
「慌てないでください。もちろんネクロファリス殲滅の間だけですわ」
「そうか……」
司祭なんかにされたら面倒で仕方が無い。
「それを持っている限り、あなたは司祭の特権が使えます」
「特権?」
「例えば、ユリウス教の店ならどんな物でもタダで買えます」
「マジかよ!?」
「それだけではありません。司祭でしか閲覧できない情報を自由に見ることができます」
「そんなものどこで必要になってくるんだ?」
「気づいてないかもしれませんが、この任務自体が司祭しか知ることのできない極秘任務なのですよ?」
「良くそんなものに一般人を巻き込むよな」
「元々あなたは『一般人』なんて枠組みにはいないのでは?」
言われてみれば……こんな『一般人』がいるわけない。
人を殺し、それを快楽に思い、繰り返した。
そんな殺人鬼が……『一般人』になれるわけが無い。
「とりあえず、それは絶対になくさないように」
エレアは念を押すように言った。
「わかったよ」
俺は服の中にしまった。
「そういえば、ジェイスの居場所はわかってるのか?」
「そういうことを今しまったもので使うんですよ」
そう言う使い方か。
俺はさっきしまったヴェズを出した。
「これをどうやって使う?」
「それに向かって『セロスト』を発動してください」
「『セロスト』を?」
「とりあえず試してみてください」
「……セロスト」
ヴェスが反応し光りだした。
するとそこに一枚の地図があった。
「これがそこか?」
「そうです。場所はカラナ渓谷にある洞窟です」
「カラナ渓谷って言ったら、ここから結構な距離があるぞ」
「しかしそこが本拠地だと言うことが調べでわかっています」
「……仕方ない。何を言った所で行くしかなさそうだな」
「よくわかってますわね」
「そうと決まれば早速行くか!」
俺は前へ踏み出した。
歩き始めてしばらく経った。
俺たちはひたすら歩いた。
特に何も話さず、お互いを知ること無く。
するとエレアが口を開いた。
「ちょっとまずいことになりましたね」
「どうした?」
「気づかないのですか?この気配……レクスが私たちを囲んでいます」
「なんだって?」
言われてみれば、10、いや20匹はいる。
いつの間にここまで集まっていたのか。
「どうしましょ……」
「悩んでねーで剣を抜け!」
俺は右手を前に出した。
「スレーネ」
右手にスレーネが出てきて、それを掴む。
「頼むぜ」
前に踏み込むと同時にレクスが3匹出てきた。
1匹目をよけ、2匹目の頭に垂直に剣を振り下ろした。
こんな雑魚、初級魔術で十分だ。
左手を3匹目に向け魔法を発動した。
「ミシャエ」
左手から出た火の玉がレクスに当たった。
剣を抜くと、後ろからレクスが襲ってきた。
「ライル」
後ろから声が聞こえ、レクスに光の矢が刺さった。
「私に近づいてください!」
俺はエレアの近くに寄った。
「闇の化身を光で包み込め」
エレアが両手を広げた。
「シトレザイア」
レクスの足下から光の壁が出てきて、レクスを空中に飛ばした。
「今なら一撃で一掃できます」
「初級で済まそうと思ったが、この数じゃあな……」
俺はスレーネを構え直した。
「炎の中で闇を清めよ」
スレーネを空に突き上げた。
「フェルミシャエ」
スレーネから巨大な火の玉が出てきた。
ヴェスを持っているからか、いつもより大きさが違う。
空中にいるレクスを焼き尽くした。
「あなたが突撃しなければ、すぐに倒せたものを……」
「俺が悪いとでも言うのか!」
「あなたは私に助けられた」
「……」
確かに、背後から迫ってきたレクスには気づいてなかった。
「……確かに俺のミスだった」
「そうでしょ?」
「ただ口論するのはここまでにしよう、ちょっと気になることがある」
「どうされました?」
俺は剣を振り下ろしたレクスのそばに行った。
「普通レクスって言うのは3、4匹で行動する。今回はあまりにも多過ぎる」
「偶然グループが重なり合ってとかは?」
「いや、レクスは縄張りを守るから絶対に他のグループが入ってこない」
レクスの額を見ると紋章が入っていた。
「これを見ろ」
「これは……ネクロファリスの紋章です」
「誰かに操られた……そう考えるのが妥当だろう」
「向こうはこちらが来ることを既に知っていた……」
「まぁ、そんなこと考えても仕方ねぇから、先行くぞ」
俺らはまた前に歩き出した。




