疑惑
一人で過ごしていた時間がとても長く感じた。
あの日以来、俺は人とかかわることなく生きてきた。
荒涼としたこの村も、いつこんなになったか憶えていない。
誰も見つけられない場所で暮らしていた。
孤独が辛いわけじゃなかった。
ただアリシアのことを思い出すと、無性に自分のことが許せなくなった。
自分のことが…… 自分の存在が……
辺りは既に暗くなり、三日月が夜空に浮かんでいた。
星達が夜空にちりばめられていて、三日月を飾っていた。
色鮮やかな星、その真ん中にある月。
そしてそれを優しく包む夜空。
ー闇ー
それはどこまでも暗く、果てしなく深い。
ー光ー
それはどこまでも明るく、果てしなく浅い。
これ以上無いぐらい似ているが、決定的に違う存在。
そんな二つが同時に存在することなどあり得るのだろうか。
ましてや一緒にいられることなどあり得るのだろうか。
闇は光に包まれる。
光は闇に包まれる。
どちらも正しいようで違っている。
どちらも本当は支配などされるはずが無い。
むしろできない。
しようと思っている時点でそいつは愚か者だ。
闇と光は表裏一体。
表と裏。
存在と幻想。
相手がいなければ、自分もいない。
相手がいれば、自分もいる。
「こんなにわかりやすいことあるかよ」
俺は手を月に伸ばした。
が、届くわけがない。
「当たり前だよな」
俺は手を下ろした。
俺は確かめに行かなければならない。
疑問を解くために……
誤解を解くために……
疑惑を晴らすために……
「アリシア……答えてくれ、俺のために」
俺は魔法の感覚を取り戻して行った。
右手を前に出し、詠唱を唱える。
「スレーネ」
詠唱と共に出てきた橙色の剣を右手で掴む。
スレーネ、俺が愛用している剣。
こいつと戦ってきた。
こいつで人を殺してきた。
「くそ、考えたくねぇ……」
俺は剣を前に出し、さらに左手で掴んだ。
「烈火の炎で邪悪を消し去れ」
剣を地面に突きつけ、詠唱を唱える。
「ヴァルミスト」
周りが炎で立ちこめた。
「そろそろ締めに行くか」
剣を地面から抜き、自分の前で横にした。
左手で剣をなでると剣から炎が出た。
「万の罪を灼熱で包み、災いを業火で焼き尽くせ」
剣を勢い良く振る。風を切る。
「フェレスメイル」
炎の斬撃が目の前に広がった。
「よし、これぐらいでいいだろう」
約束の1週間がたった。
この村から離れるなんて5年間のうち今までに一回も無かった。
少し緊張する。
世界はどうなっているのか。
どう変化しているのか。
それもすぐにわかるだろう。
そう思っていると目の前にエリアがどこからともなく現れた。
「準備は良い?」
「あぁ」




