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第5話 DP稼ぎ

「マスター、本当にありがとうございます! 私の為に、このようなものまで用意してくださって……!」


 クリスがテントの中に入る事で、俺の膝はようやく解放される事となった。おお、結構痺れとる。暫く立てそうにない。


「気にするなって。俺にとっても必要なものだ。しかし、イカダの増築で大分DPが心もとなくなってしまったな……」

「あ、それでしたらステップ4を覚えるべきかと。DPの稼ぎ方を伝授します!」

「ほう。ちなみになんだが、そのステップとやらは後いくつあるんだ?」

「えっと、取り急ぎ必要な事柄はここまでかと」


 そうか、それじゃ気合いを入れて臨みますかね。


「ダンジョンを運営していく上で、DPを稼ぐ方法は三つあります。一つ目が、他の生物やモンスターがダンジョン内に居る事です」

「ダンジョンの中にか? 俺やクリスみたいに?」

「マスターやその配下となるモンスターは範囲外ですね。例えば、ダンジョンを探索する人間ですとか、後は迷い込んだ野生のモンスターが一般的です。対象の強さに応じてDPが加算されますよ」

「へえ、居てもらうだけで良いのか。居てもらうだけ……」


 そう言って、俺は改めて周囲を見回す。ああ、島一つ見えぬ美しい景色だ。人っ子一人いやしねぇ。


「まず、迷い込んで来る人間はいないだろうな」

「で、ですね……次に行きましょう、次に! 二つ目、ででん!」


 少しでも盛り上げようとしているのか、クリスは効果音を演出として付け加えてきた。悪魔なのに良い子やねぇ。


「二つ目はですね、ダンジョン内に入ってきた侵入者を倒す事です! DPの稼ぎ方はこれが主体となるはずですよ!」

「ほうほう。で、どこに侵入者がいるんだ?」

「……三つ目に行きましょう」


 ただし、ほんの少しだけお馬鹿さんなところがある。うん、これも愛嬌だ愛嬌。


「残るは手持ちの道具をDPに変換する方法です。ですが、これはその…… ちょっと変換効率が悪くってですね、ショップでいう買値の半分以下になってしまうと言いますか……」

「要は安く買い叩かれるって事か」


 クリスが言い辛そうにしているところを見るに、この方法は一番効率が悪いDP稼ぎなんだろう。聞けば、最初の特典でもらったあの宝箱に入れているアイテムなら、ほぼ何でもDPに変える事ができるそうだ。その辺に落ちてる小石など、価値のないものは変換できないらしい。まあ、そりゃそうだわな。


「となると、俺達に残されたDPを稼ぐ方法はそのアイテム変換しかないって事か」

「そ、そうなりますね…… うう、力になれなくて申し訳ありません……」

「いや、そうでもないと思うぞ?」

「え?」


 ちょうどその時、釣りをしていたゴブリンの一体が魚を釣り上げた。


「ゴブー!」


 フィーシュッとでも叫ぶかのように、声を上げるゴブリン2号。魚の種類については詳しくないが、なかなかにでかい。小柄なゴブリンの体ではイカダに引っ張り上げるのに苦労しているようで、他のゴブリン達が手伝う事で何とか捕まえる事に成功した。将来的には網がほしいかもな。


「クリス、お前って料理できる?」


 聞いておいて何だが、クリスが家事において完璧超人である事は調査済みだ。彼女のスキルを確認すれば、すぐに分かる。


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スキル:夜適性C

 日の当たらない暗闇にてステータス補正が加わる能力。逆に、明るい場所では弱体化効果がある。Cランクであれば目に見えた効果が発揮される。逆に、明るい場所だと軽い貧血を引き起こす事もある。

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スキル:炎魔法B

 MPを消費して、炎を操る魔法の使用が可能となる技能。Bランクであれば超一流の使い手といって相応しい腕前。

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スキル:スーパーメイドS

 全ての家事スキルを統合した上位スキル。Sランクであればその仕事振りも最上級のものとなり、ありとあらゆる家事で最高の結果を残してくれる。調理の腕は五つ星に、洗濯の腕は業者のそれ。

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 画面の下にある『スーパーメイド』、これが素晴らしい。惚れてしまいそうになるほど素晴らしい。魔法ってのが未知のものではあるんだが、炎が使えるのもありがたい。


「は、はいっ、できますよ! 私、できますっ!」


 ここぞとばかりに瞳を輝かせて元気になるクリス。


「これはさっき言った自給自足の延長線上の話になるんだけどさ、俺達のダンジョン、その身の丈に合ったDP稼ぎを思い付いた。まずはこの方法で、コツコツDPを稼いでいきたいと思う。寝具だとか生活するのに必要なもんを最低限揃える、その辺が当面の目標だな」

「な、なんとっ!?」


 クリスが大袈裟に驚いてくれる。いや、これはマジで驚いてるっぽい? 何というか、とても説明のし甲斐がある。主を立てる気質を天然に備えているとは、流石はスーパーメイドの称号を有する者だ。っと、俺が感心する前に、まずは説明か。


「しばらくはゴブリン達が釣った魚メインの食生活になると思うんだ。そこで、クリスにはその調理をお願いしたい。必要な器具があれば遠慮なく言ってくれ。最初は必要最小限のものだけになるけどさ」

「慎んでお受けいたします! あ、ですが、貴重なDPをこれ以上使う訳にはいかないのでは?」

「先行投資ってやつだよ。釣った魚、これもしめれば立派な食材なんだろ。なら、余分な分はショップで売れるし、クリスが調理したら更に付加価値が付くんじゃないか?」

「あ、ああー! なるほど!」


 そう、プチ漁業を始めた俺達にとって、ゴブリン達が釣る魚は立派な収入源になるのだ。五つ星レベルの腕を持つクリスの手が加われば、いくら安くなったって元は十分に取れるはずなのだ。


「ゴブー」

「ゴッブ!」


 そうこうしているうちに、ゴブリン達は次々と魚を釣り始めている。うん、幸先が良い。早速器具について、クリスと話し合わなければ。


「炎は魔法で使えますので、包丁や鍋を優先してほしいですね」

「後は調味料か。塩とかは海水から作れないもんかな。いや、直接海水で煮れば良いのか? 衛生的にどうなのかは微妙だけど…… げ、胡椒の値段バグってないか、これ?」


 あれこれと意見を交わし、俺達はショップから万能包丁(20DP)、フライパン(15DP)、鍋(15DP)、石の焚き火台(10DP)、木のまな板(3DP)、飲料水一リットル(2DP)を購入。残りDP229なり。


「それではマスター、早速この魚を捌きますね!」


 まな板にさっきの魚を置いたクリスが、私の勇姿を見ていてくださいと言わんばかりにアピールしてきた。分かったから、まずは魚をしめてくれ。まな板の上でぴっちぴちいってるから。


「では、いきます!」


 ―――サクっと。


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DP入手報告(設定で報告の要不要は変更可能です)

 ダンジョン内でアクアエアを倒しました。1DPが加算されます。

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 ん、んんっ? 唐突に見慣れないメニュー画面が表示される。ダンジョン内でアクアエアを倒した? DPを入手した? これってクリスが言っていた、ダンジョンに入ってきた侵入者を倒したって事なのか?


「……クリス、その魚ってダンジョンの侵入者に入るのか?」

「生き物だし、一応は入るのかな……? あ、たぶん入ります!」


 クリスの返事も曖昧だ。しかし、こうしてDPが入手できたって事は、やっぱりそうなんだろう。全DPを確認すると、しっかり加算されて230になっているし。つまり、魚をしめたらDPが手に入って、更にそいつが食材ともなるって話だ。おお、二重に美味しい!


「野郎ども、ガンガン釣ってくれ! 俺達は世界一の漁師を目指すぞ!」

「「「「「ゴブー!」」」」」


 俺達の海の上でのダンジョン運営、その幕開けだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の記憶を消しているので判断が早い。 サクサク進んでいるので読みやすい。 6話にして進展があるのがいいと思った。 右も左もわからない主人公が「世界一の漁師を目指す」と一時的な目標を明言…
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