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第4話 ダンジョン改造

 記憶はないけど、こんなにも長い時間膝枕をしたのは、おそらくこれが初めてだろうなぁ。クリスのダンジョン講習会を受け、試行錯誤している内に時が瞬く間に過ぎ去った。ステップ2、ステップ3と延々続くダンジョン創造スキルをチュートリアルで学んでいるのだが、まだまだその最中で終わりは見えない。一言にダンジョンに纏わるスキルといっても、ダンジョンの建造維持、モンスターを配置して運営していく能力、やはり一筋縄ではいかないのだ。クリスがいなければ、能力を把握する前に餓死で完全に詰んでいたわ、これ。海の上で逃げ道ないし。


 そんなダンジョンマスター見習いな俺なのだが、試運転兼、現状打破の為にこの力を所々で行使してみた。DPは試運転でも消費してしまうが、前述の通り使わないと空腹で死んでしまう。クリス曰く、ダンジョン創造スキルにはDPを貨幣として使用できるショップ機能があるとの事で、ステップ2にて早速使ってみた。但し、DPは何をするにしても消費する俺の生命線。必要最小限のみの買い物である。


 画面の切り替えは他と同じく、ショップと念じる事で勝手に切り替わってくれる。そしてこの画面越しに欲しいものを更に頭の中で思い浮かべると、それに類似した商品がピックアップされて並ぶという仕組みだ。この世界がどの程度の文明を築いているのかは知らないが、どう見ても現代日本的な商品もあった。テレビとか冷蔵庫とかな。まあ、高価過ぎて購入できないんだが。


 ゴブリンの召喚に10のDPを使用したので、残りは990DP。何はともあれ、まずは食料の確保からだ。ショップには出来合いの料理から野菜や生肉といった食材まで完備されており、DPさえあれば大抵のものは購入できる。最安価であれば、1DPでライ麦で作られた黒パンが100グラム分買える。具体的な大きさは恐らく手の平サイズ。ご丁寧に写真入り、食感や味は想像するしかない。正直、これだけだと腹持ちは悪いだろう。一方飲み水は1DPで500ミリリットル、細いペットボトル一本分とこちらも心もとない。


 通常モンスターのゴブリンや、ユニークモンスターとなっているクリスは食事をする必要がない。ただ、感情が芽生えたクリスは気持ち的に食べないと辛いらしい。俺としても女の子に何も食わせず、自分だけ食事をする気にもなれないので、できるだけクリスの食事は揃えたいと思っている。となれば、長いスパンで今後の二人分の食費を考えていくとしよう。最安値の黒パン水セットでも一食2DP、二人で4DP、一日三食で12DPだ。一々食料をショップから購入するのは、懐的によろしくない事が分かる。食費だけでも、現在の全財産990DPで二ヵ月と少ししか持たないのだ。これはよろしくない。


「そこでこれから目指すのが、ずばり自給自足! まずは俺達の命を食い繋ぐぞ!」

「私も精一杯お手伝いします!」


 俺の膝に横たわるクリスの気合い十分だ。って事で、食材を自分達で調達して、自分達で料理しようという魂胆だ。ここは海のど真ん中。前に少し触れていたが、やる事は一つである。それなりの釣り竿(50DP)、釣り餌一瓶(1DP)を購入。釣り竿が思いの外高くて少しビビる。しかし、ここで予想外の方向から朗報が舞い込んだ。


「なあ、モンスターに釣り竿を持たすにはどうすれば良いんだ? ゴブリン、なぜか持ってくれないんだが……」

「通常モンスターに何か装備させたい場合はですね、対象のアイテムをこの宝箱に入れて、メニューからその種族に設定してみてください。ユニークモンスターである私は直接でも構いませんが、通常モンスターの装備は均一になりますので」

「え、マジで?」


 これ、クリスの言っている事が分かるか? かなり凄い事を言ってんだぞ? 例えばゴブリンが五体いて、その全てに剣を持たせたい。普通であれば剣は人数分の五本が必要になるだろう。だがこのシステムを使えば、剣一本で五体全員に同じ剣が行き渡るんだ。レアな剣を渡してもそう、釣り竿と釣り餌を渡してもそう。つまり、こんな事ができる。


「通常モンスター枠の残り全てを使って、ゴブリンを召喚!」


=====================================

ウィルのダンジョン(ただのイカダ) 残りDP:899


ユニークモンスター(残り枠:0)

・クリス(悪魔の使用人)


通常モンスター(残り枠:0)

・ゴブリン

・ゴブリン

・ゴブリン

・ゴブリン

・ゴブリン


フロア構成

①丸太のイカダ(クリス、ゴブリン×5)

=====================================

ゴブリン

HP :50/50

MP :0/0

筋力 :D--

耐久 :D--

魔力 :F+

魔防 :E

知力 :C-

敏捷 :D-

幸運 :E+

スキル:器用D

スキル:なし

スキル:なし

装備 :普通の釣り竿

    ボロ切れの腰巻き

    釣り餌

=====================================


「お前ら、釣り竿と餌は持ったか!?」

「「「「「ゴッブ!」」」」」

「よし、かかれぇ!」


 このように釣り竿と餌ワンセットで、召喚した全員に行き渡るのだ。自前の『器用』のスキルを持っているので、ゴブリン達は何を教える必要もなく釣りをやってくれる。装備は全部で五つまで持てるそうで、釣り餌も例外ではないのだ。


「わあ、こんな応用ができたんですね。私、ビックリしました……!」

「戦わせるだけがモンスターじゃないって事だな。おっと、バケツを忘れていた。ついでに購入して装備させておこう。5DPで購入っと」


 こんな感じで始まったイカダのプチ漁業。バケツや釣り餌も装備品にできたのは驚きだ。しかもこの釣り餌、装備させると減らないし。ただ、新たな悩みも浮上したり。


「狭いな……」

「狭いですねぇ……」


 そう、ここにきて畳三畳ほどしかないイカダの人口密度がアップ。ゴブリン達はイカダの端に腰掛けて釣りをしているが、それでも大分圧迫感があるのだ。


「ステップ3、いっちゃいます?」

「何となく察した。いっちゃってくれ」


 こうしてチュートリアルその3、ダンジョンを改造しようが始まったのである。まあ簡単に言ってしまえば、DPを使ってダンジョンのフロアを増やしたり、フロアのサイズや装飾を変えたりする事ができる機能だ。限られたDPで、どこまで改造できるのか? これがまた消耗するんだ。


「現段階だとフロア拡大が精一杯でしょう」

「な、今の広さから倍にするだけで500DP!? おいそれとはできないな……」


 丸太で組んだイカダを増築するだけでこの値段である。まあ、ダンジョンであると言っている以上、普通のイカダとは違うのかもしれないが、それでも高い。悩みに悩んだ結果、俺は増築を選択。チュートリアルと銘打っている以上は避けては通れぬ道と考えて、これを決断した。


 ダンジョンの増築は実に不思議なものだった。実行ボタンを押した瞬間、ぐいーんと丸太が伸びていくんだ。で、一瞬のうちに改造は終了した。大金を掛けた割にはあっさりしている。ゴブリン達に釣りを再開させ、さてこれからどうしようかと膝元のクリスと視線を合わせる。


「……いつまでも膝を貸す訳にもいかないよなぁ」


 太陽の光からクリスを護る為、後は雨風から自身を護る為、ショップから最安値の簡易テント(100DP)を購入してイカダの中心に設置。テントは分厚い布でできていて、中心に支柱を立てるとんがり頭な形。結構丈夫そうだ。しかし、イカダにテントか…… アマゾンにこんな家があったような気がする。

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