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プロローグ

4月8日。春の風が気持ちよく吹き抜け、寒かった冬も暑いだろう夏も感じさせない最高の季節。そんな春に起こった、小さな、小さな物語。


「皆さん、着席してください。点呼をとります。」


既に全員が着席している状態にもかかわらずこんなことを言うとは、僕が嫌いなマニュアル人間か。まあ若いし新任なんだろうな、緊張してるっぽいし。

この女教師が全員の名前を読み上げ、それぞれが返事をする読み方確認が終わり、自己紹介が始まる。僕にとって相当憂鬱だ。ダルい。逆にこの時間が好きな人はいるのだろうか。

「では出席番号順でいきましょう。まずは、、、石川くんから、お願いします。」

女教師が頑張って名前を覚えようとしているのがわかる。それより僕は憂鬱で、何言おうかな、みんな趣味とか言ってるな、どうしようかな。

「次、杉浦くん、お願いします。」

重い腰を上げみんなの正面に立った。緊張する。僕は名前と出身中学だけを小声で告げた。真っ赤な顔を誰にも見せまいと自分の席に戻り、座る。ああ、コミュ障って大変だなぁ。その後の自己紹介はあまり聞いてなかった。

「私の自己紹介がまだでしたね。」

そういえばこの女教師の名前も知らない。まあ別に気にならないけど。女教師はチョークで縦に大きく自分の名前と振り仮名を驚くほど綺麗な字で書き上げた。

「これから1年間担任をします。よろしくお願いします。」

綺麗なお辞儀によって、長い髪が垂れる。黒くて艶のある、綺麗な髪。よく見れば顔も整っている。こんな端整な顔で教師をするのはある意味不健全かもしれないな。でもまあ僕はなんとも思わないよ。担任として頼りなさそうだし、なんならマイナスだ。


その後入学式を終え、入学祝いとかなんとかで高そうな飯を食いに行った。美味しかったけど、僕はサイゼリヤでいいのになぁ。そんなこと言っても「何謙虚になってんの!いっぱい食べなさい!」って言われるし、まあいい母ではあるな。


翌日、僕は早めに学校に着いたので自習をしていた。授業に置いていかれることはないと思うけど、将来を見据えると、どうしても勉強はしなきゃダメなようなので、する。今教室には僕1人だ。いや、1人でだった。

「偉いね、えーっと、、」

端整な顔立ちの爽やかな女の人がそこに立っていた。名前が思い出せないのか。別いいけどなんか腹立つな。

「杉浦です。」

「そう!杉浦くんだ!偉いね、勉強なんてして。」

「自分のためなので偉いとかないですよ。」

これは本心だ。

「ちゃんとしてるんだね。そんなちゃんとしてる杉浦くんと、先生、世間話したいなーって。」

距離が近いな。物理的に。健全な男子高校生なので体の一部が反応しそうなのをぐっとこらえて(どうやって?)、

「わ、わかりましたよ。」

と、こう言ってしまった。僕は特定の先生はおろか、特定の人物と仲良くなりたくない。だからこうやって返してしまったのは大誤算だった。

「杉浦くんはクラスで誰が一番可愛いと思う?」

修学旅行の夜じゃないんすよ、先生。と、僕は心の中でツッコミを入れて、

「先生じゃないすか?誰に聞いてもこう答えると思いますけど。」

と言った。これも本心だ。冗談抜きで顔は可愛いと思う。キャラのブレと先生としての能力を重視してる僕としてはもっとちゃんとしてほしい所存だが。

「ほんと!?褒めても何も出ないんだからね?」

昨日の凛とした先生は何処へ。

そんな話をしているときにクラスに石川含む男子3人組が入ってきた。

「うぇ、先生と、、、赤面野郎か?」

「ほんとだ、赤面野郎じゃん!」

「何してんだよ、先生独り占めしたくて早くきたのか?気持ち悪っ。」

三連コンボをしっかりと食らった僕はキョドってどうすればいいかわからなくなった。今思えば教室に美人教師と一生徒が2人っきり。嫉妬含む負の感情を持たれても仕方がないのかもしれない。

そうやってオドオドしている僕を横目に先生は石川たち3人組に近寄り、

「先入観で人を判断しないでください。彼が勉強してたことをあなた達は知らないでしょう。私が話しかけていたことも知らないでしょう。判断に必要な材料が足りていないのに勝手な判断をするのは、なんと愚かなことか、もう、分かりますよね?」

先生を取り巻く雰囲気が変わった。圧倒的なオーラを放つ教師と化していた。

「す、すみません、、、」

石川たちは黙ってしまった。先生は去った。

僕も先生のことを先入観で色々判断していたのかもしれない。クラスが始まって一日しか経っていない今、判断に必要な材料は十分と言えるはずがない。彼女の正しさと強さに僕は少し興味を持ってしまった。

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