本を研ぐ
どうも、ちかーのです。
何故か電子書籍を貶した表現をしてしまいました。
……自分で書いている筈なのに。
それでもどうか、たのしんで下さい。
大学一年生の一人暮らしは目ん玉が飛び出る程に暇だ。どれくらい暇かって?さっき言ったじゃあないか目ん玉が飛び出る程だ。
講義に出て、バイトから帰ったらもう一日やる事がない。……いや、違う。実際にはやる事はあるにはある。掃除やら洗濯、自炊にレポートの作成。新しいバイトも探さなければならない。しかし手につかない。
一人暮らしを始めた当初はこまめに掃除洗濯をし、毎日料理もしていた。しかし、自分だけのために米炊くのもな、洗濯も月一でいいよな、掃除してもまた散らかるしな、と。
家事を怠ける理由は無限に出てくるのだが、張り切る理由は一切出てこない。これじゃあモチベーションは上がらない。無理やりにでも持ち上げようにも、そもそもモチベーションの所在が分からなくなってしまった。だったら探せば良いのだが、その為にすらモチベーションが必要なのだ。
理由が無いと頑張れないのは、俺が弱い人間だからか。いや、きっと大抵の人間がそうだろう。……そうだと良いな。
もはやその考えは願望である事実にそっと蓋をして珈琲メイカーのスイッチを入れる。出来終わるまで手持ち無沙汰になるのだが、LAKEの出番はまだ先だ。珈琲を飲みながら吸うことが大事なのだ。
淹れ終えた珈琲をお気に入りのカップに注ぎ、読みかけの本のページを開く。文字を追いかけ、次のページへ。
しゃり、しゃり、とページを捲る音が鳴る。
米を研ぐ、という表現は個人的に美しいと思う。米と米を擦り合わせて洗うことから、研ぐ、と言うらしい。本にも、捲る、ではなく、ページを研ぐ、と言う表現の仕方があっても良いと思う。ページどページを擦り合わせながら捲る様は、研いでいる様にも見える。
電子書籍より紙の本の方が良いと言われているのは、ページを研ぐことで、より洗練された文章を目にすることが出来るからではないだろうか。……違うか。
数ページ読んだところでようやく珈琲に口を付ける。熱々より少し温度が落ちた方が良い。そしてLAKEを咥えて火をつける。その間もページから目は逸らさない。一口目は吹かして、二口目から煙を肺に入れる。
これさえあれば、より深く本の世界に迷い込める。
本の世界の入り口と出口は常に開いている様だ。せめて出口だけでも閉じていてくれれば、いつまでも迷ったままでいられるのだが。
そんな世界を想いながら、今日もまた一日を溶かしていた。
共感して頂けましたでしょうか?
ありがとうございました。