表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
珈琲とLAKE  作者: ちかーの
2/3

客の来ない珈琲屋


店内は中々にお洒落な店だ。立地も良い。しかし売り上げまでリッチとはならないようだ。


バイトとして働き出して2週間が経ったが、すごく暇だった。客は来るには来るのだが、基本的には身内しか来ない。マスターの知り合いと、俺の知り合いくらいだった。


空いた時間は大体店の掃除をしているのだが、勤務中は客が来ない限りほとんど空いた時間となるので、店内及び店先や看板は常にピカピカに保っている。恐らく、この店は長くは続かないだろう。バイトを雇う余裕があるのかさえ怪しい。てか無いだろう。売り上げが無いのだから。


来月に支払われる筈の給料が心配になってきた。


店が潰れたから給料無し、なんて絶対に困る。聞いてみようと思った。今までも何度か聞こうとしたのだが、流石に気まずくてやめていた。


あいにく客が来ないけど大丈夫ですかなんてストレートに聞ける程、太い神経は持ち合わせていない。


しかし、気まずいなんて気にしている場合ではない。もし給料が出ないなんて事になったら、生活が出来なくなるのだから。意を決して聞いてみる事にした。


言葉を選び、慎重に。


清掃に一段落をつけて、口を開いた。


「いやーそれにしてもお客さん全然来ないですねーあは。これじゃあ潰れる日も近いんじゃないですかーあはは。俺の給料大丈夫かなーなんてあははは。」


……もっと他の言い方があっただろう、と思った時には遅かった。自分の中で考えられる限りのダメな言葉を選りすぐんだまである。


あまりの衝撃に思考が停止したのか、ピタリと動かなくなってしまったマスター。時間は止まることは無いと思っていたのだが、いやはや世界は未知でみっちみちに満ちている。


ともかく一刻も早くこの場から離れなければ、掻いた冷や汗で珈琲が一杯作れそうだ。そんなまずい(気)珈琲なんて客に出せる訳などなく、そもそも出したくても客がいない。


さあ上がる時間だとそそくさ逃亡を図ろうとした時。


「給料は出せるよ」


マスターの時が再び動き出した。


「あ、そうですか〜。てか、さっきのは冗談なんで気にしないで下さいそれじゃお疲れ様です〜」


出せるよって、そんな事は当たり前だろうに。むしろ本気で受け取っているあたり、さらに不安は加速する。ちゃっちゃと着替えて帰路につく。


出せるよってお前……。ギリいけるよ!なんとかね!って言ってるみたいだ。


冗談で済ましてくれたらどれだけ良かったか。


新しいバイト先をボチボチ探そう。そう思いながら、やけに看板の綺麗な珈琲屋を後にしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ