俺はなぜか惚れた彼女に生まれ変わっていた
ゲームにはまった……。
それはいいのだが、問題は俺が男でジャンルが乙女ゲーと呼ばれる物なのだ。
いや、言い訳させてほしいが俺がこのゲームを買ったきっかけはこのゲームに出てくる女の子のキャラクターに一目ぼれしたからだ。
彼女は可憐だった。そしてゲームに出てくる彼女もその容姿に見合った美しき心を持った乙女だった。
まぁ、乙女ゲーなので主人公は女なわけだが、彼女は主人公と恋人とならずなおかつ周回で攻略していないキャラと恋人となるのだ。アフターストリートしてその二人の物語もあり……何というかそれが本当に幸せそうなのだ。
しかし、一部ではこの仕様に発狂するものもいて、彼女にたいしては賛否両論である。
もちろん俺としては彼女が他の男と幸せそうに過ごしていると胸が締め付けられる思いであるが、その姿が本当に幸せそうであり思わずよかったと思ってしまう心もある。
そして俺は最後のルート……逆ハーレムルートに進んでいるわけだが、このルートに入ると彼女は誰とも恋人にならずに一人で佇む一枚絵が手に入るらしい……しかし、それは何というか寂しいと思った。彼女は誰と恋人となっても幸せそうで、もしも、その横に誰もいないなら……俺がその隣にいたいと思ってしまった。
「ははっ、きっもいなぁ……ゲームのキャラクターにこんなこと思うなんてな」
思わず自嘲してしまう。さて、今日も仕事の時間だ。俺は携帯ゲーム機の電源を切り準備していた鞄を持って家を出た。
「と思ったら3歳の幼女になっていた」
意味が分からない……どうしてこんなことになった?
俺の今の名前はマリア・G・ホープ。俺がこうなる前にやっていたゲームに出てくるキャラクターであり俺が惚れたキャラクターと同姓同名である。というよりも彼女であった。
どうやらこうなる前は高熱に浮かされて、生死の境をさまよったらしい。今では体調は万全なのだが……。
マリアの設定を思い出してみる。ホープ公爵家の天才であり、魔法、魔法薬、錬金、戦闘、領地経営といった5つからなる学科の全てで好成績を収めることのできる本物の天才だといわれている。
金の瞳に、金の髪、優しく垂れた目尻に、小柄でありながら出ているところは出ていて……ゲフンゲフン。
主人公が他国との戦争ルートのある戦闘科と領地経営科に所属した場合、援軍として彼女が参戦するのだがアホほど強いのだ……。基本彼女が前線に出れば戦争が終結するレベルである。
しかし、そのときに出てくる戦後の彼女の一枚絵はみんなが勝利に騒ぐ中、憂いの表情を含んでいて物悲しい雰囲気にされたものだ。
「ふう、す~、はぁ」
多く息を吸い深く吐く、感じるのは自分以外の存在……この肉体には彼女の魂がある……なんだでか分からないがそれが分かる。
俺は彼女の代わりに彼女のために生きよう……。俺の惚れた彼女のように!
「マリアちゃ~ん!!!」
「マリア~!!!」
差し当っては……彼女の両親の心配をとくことから始める。
「素晴らしいですお嬢様!」
魔法……彼女のポテンシャルは素晴らしくその口からつむがれる祝詞は神聖さすらある。祝詞を唱えると魔力の多さから漏れでた魔力が体の回りに粒のように浮き派手さもある。まぁ、魔力の粒は意識すれば出ないが……それでも大規模な魔法を使うときはうっかり漏れてしまう。
俺を褒め称えるメイドにお礼をいい、その場を離れる。
「ふぅ……」
その日の終わりには必ず日記を綴る。これはもしも俺が突然彼女の体を離れた時のことを考えてだ。きっと彼女の魂はこの体の中にあるはずだが意識まであるか分からない。だから、常に日記を綴り、俺が彼女の変わりに歩んできた日常を彼女が知れるようになるべく見たもの、やったこと、知ったことなど覚えている限りのものを書き込んでいく。
「さて、寝ましょうか」
目覚めてから3年。この言葉遣いにもなれた。まぁ、心の中は昔のままだが、それは許して欲しい。