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逢魔、討つ  作者: 風船
鍛錬
17/23

みなさま、風船です。

第二章だー!ということでがんばっていきます!

修行回ですので(ネタばれ)設定のまとめ感がいなめなくなりますが、読んで頂けると嬉しいです。

相変わらず時代設定を守っていません。あしからず……。

では、よろしくおねがいします!!

 


 遠く。遠く。

 声がする。




「灯、起きて。灯」




 ゆらゆらとしていた世界がはっきりしてくる。


「灯、おはよう」


 お母さんが私に微笑んで、顔を優しくなでてくれる。

 あったかくて柔らかい手。


「おかあさん、どこに行ってたの?」



 あれ? 私の声はこんなに高かったっけ?



 奇妙な違和感は、目の前のお母さんの悲しげな表情で吹き飛んだ。


「ごめんね。お父さんと二人きりにしてしまって」


 抱きしめてもらうと、咲いた花のいい匂いがする。

 目を開けると、鍛冶場に繋がる戸から、お父さんが出てきた。


「おいおい、それじゃあ私が灯に嫌われているみたいじゃないか」


「お父さん!」


 私は枝から枝に飛び移るように、お母さんからお父さんに飛びつく。

 お父さんからは鉄が焦げた臭いがする。


 でも、この臭いも私は好きだ。


 大きくて広くてごつごつした手の平が、私の頭をなでる。


「おいで、灯。私たちの宝物を見せよう」


 私の背中にお父さんとお母さんが手を添えて、鍛冶場に誘う。

 ふたりに促されて、私はめったに入れないお父さんの仕事場に足を踏み入れる。



 チカリ、と。



 私の目を焼く光があった。


 目を細めながら、光の正体を見る。




 地面に突き刺さって立っているのは、揺らめく炎。

 夕焼けの深い茜色が燃え、火の粉が蛍のように舞っている。



 炎の奥には、色を反射して輝いている一振りの刀。



「あれはなあに?」


 私はお父さんを見上げる。

 お父さんは私に微笑んで、燃える刀に近づいて行った。

 そうして、躊躇うことなく、炎の中に手を入れる。

 あっと私が声をあげるのと同時に、炎は消え去り、お父さんは無骨な手で、柄を握り締めていた。

 炎が消えても、刃は茜色に輝いている。



「これはお前の刀だよ」



 お父さんは優しく、でも、力強く言った。


「私の刀?」


「灯、よく聞いて」


 お母さんに呼ばれて、私は振り返る。

 お母さんの瞳の中に、幼い私の姿が映っている。


「あなたの道はきっと険しいものになる。獣に呼ばれることもあるでしょう」


 肩に触れられ、振り返る。

 今度はお父さんが、私の前に膝を折って、お母さんの後を引き取る。


「けれど、忘れちゃいけない。灯。いつだって人間らしくありなさい。愛と希望を忘れずに」


 約束できるか?と問われ、私は大きく頷いた。

 お父さんとお母さんは顔を見合わせて、微笑んで私を見つめた。


 お父さんが私に、刀を差し出す。

 私はそれを受け取った。




 私の刀。

 お父さんが打ってくれた、私だけの。




「灯。私たちはずっと傍で、あなたを見守っているからね」



 ふたりが私を抱きしめてくれる。




 ありがとう、お父さんお母さん。

 私、がんばるからね。




 目をつぶると、温かいものが頬を流れた。





「さあ。目を開けて」






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