継
みなさま、風船です。
第二章だー!ということでがんばっていきます!
修行回ですので(ネタばれ)設定のまとめ感がいなめなくなりますが、読んで頂けると嬉しいです。
相変わらず時代設定を守っていません。あしからず……。
では、よろしくおねがいします!!
遠く。遠く。
声がする。
「灯、起きて。灯」
ゆらゆらとしていた世界がはっきりしてくる。
「灯、おはよう」
お母さんが私に微笑んで、顔を優しくなでてくれる。
あったかくて柔らかい手。
「おかあさん、どこに行ってたの?」
あれ? 私の声はこんなに高かったっけ?
奇妙な違和感は、目の前のお母さんの悲しげな表情で吹き飛んだ。
「ごめんね。お父さんと二人きりにしてしまって」
抱きしめてもらうと、咲いた花のいい匂いがする。
目を開けると、鍛冶場に繋がる戸から、お父さんが出てきた。
「おいおい、それじゃあ私が灯に嫌われているみたいじゃないか」
「お父さん!」
私は枝から枝に飛び移るように、お母さんからお父さんに飛びつく。
お父さんからは鉄が焦げた臭いがする。
でも、この臭いも私は好きだ。
大きくて広くてごつごつした手の平が、私の頭をなでる。
「おいで、灯。私たちの宝物を見せよう」
私の背中にお父さんとお母さんが手を添えて、鍛冶場に誘う。
ふたりに促されて、私はめったに入れないお父さんの仕事場に足を踏み入れる。
チカリ、と。
私の目を焼く光があった。
目を細めながら、光の正体を見る。
地面に突き刺さって立っているのは、揺らめく炎。
夕焼けの深い茜色が燃え、火の粉が蛍のように舞っている。
炎の奥には、色を反射して輝いている一振りの刀。
「あれはなあに?」
私はお父さんを見上げる。
お父さんは私に微笑んで、燃える刀に近づいて行った。
そうして、躊躇うことなく、炎の中に手を入れる。
あっと私が声をあげるのと同時に、炎は消え去り、お父さんは無骨な手で、柄を握り締めていた。
炎が消えても、刃は茜色に輝いている。
「これはお前の刀だよ」
お父さんは優しく、でも、力強く言った。
「私の刀?」
「灯、よく聞いて」
お母さんに呼ばれて、私は振り返る。
お母さんの瞳の中に、幼い私の姿が映っている。
「あなたの道はきっと険しいものになる。獣に呼ばれることもあるでしょう」
肩に触れられ、振り返る。
今度はお父さんが、私の前に膝を折って、お母さんの後を引き取る。
「けれど、忘れちゃいけない。灯。いつだって人間らしくありなさい。愛と希望を忘れずに」
約束できるか?と問われ、私は大きく頷いた。
お父さんとお母さんは顔を見合わせて、微笑んで私を見つめた。
お父さんが私に、刀を差し出す。
私はそれを受け取った。
私の刀。
お父さんが打ってくれた、私だけの。
「灯。私たちはずっと傍で、あなたを見守っているからね」
ふたりが私を抱きしめてくれる。
ありがとう、お父さんお母さん。
私、がんばるからね。
目をつぶると、温かいものが頬を流れた。
「さあ。目を開けて」