追憶
はじめまして。風船と申します。
拙い文章ですが、精いっぱい書かせていただきたいと思います。
応援のほど、よろしくお願いします。
世界観は明治初期をイメージしていますが、勉強不足ですので、この時代にしてはありえないと思うところが多々あると思いますが、
「まちがえてら、ぷぷ( ̄m ̄〃)」という寛容な心で流してやってください。
こっそり教えてくださると喜びます・・・。
では、よろしくお願いします!
人は皆、心の中に刃を持っている。
だが、それを扱うことが出来るのは、人の心を弄ぶ人でなしだけだ。
もしも、人が、己の心の内に持つ刃を振るうとするならば、必要なのはただひとつ。
火よりも熱く、日よりも輝く、強い心。
だが、その強い心に耐えきることが出来るほど、人の体は強くない。
だから人は、心の内の刃を振るえない。
代わりに、形ある刀を振るって、大切なものを守るのだ。
〇
幼い私にそう語る父の表情を、私は今でも思い出す。
父は人間という生き物を愛していた。
人間には希望があり、未来があり、愛があると、父は私によく語った。
そして、私に、どうか人間らしくあれ、と、願った。
私は、そんな風に、優しく情熱あふれる父が大好きだったし、父が打つ、銀色の刃たちの、世界一優しい輝きが自慢だった。
父は自分が打った刀に、私と同じように接していた。
それが私は気に食わず、やきもちをやくこともあったが、その六振りの刀を前にすると、餅は急速に萎んでいくのだった。
私が初めてその刀たちを見たのは、夕焼けが恐ろしく綺麗だった日。
暇を弄ぶ私を父が鍛冶場に呼んだ。
「お父さんの宝物を見せてあげよう」
私が鍛冶場に入れるのは、そうして父の許可があった時だけだった。
だけど、そんなことは本当に稀で、私は飛び上がって喜びながら、父の元に走っていった。
鍛冶場に入ると、チカリ、と、私の目を焼く光があった。
目を細めながら光の奥に目を凝らして、私は息をのんだ。
作業台にたてかけられた六振りの刀たち。
燃える夕日を反射して赤く輝く刃の光。
恐ろしいのに惹きつけられる。
奇妙な感覚に、私はしばらく開いた口が塞がらなかった。
ようやく、あれは何かと尋ねた私の頭に、父は武骨で大きな手のひらをそっと乗せ、「人の心だ」と答えた。
詳細は忘れてしまったが、人間は七つの徳を生まれ持っているのだそうだ。
そこから取って、七善刀という。
「じゃああと一本、つくるの?」
確か、私はそう父に聞いた。
すると、父は私の前に膝をつき、目線を合わせて言った。
「お前の心の中にある刀。それが最後の一本だ。
私のとっておきだから大切にしておくれ。
そして、もし、それを振るうことがあったなら、他人を傷つけるためではなく、守るために振るっておくれ」
私は父と約束をした。
当時の私は分からなかった。
でも、今の私には、その時の父の表情の意味が分かる。
嬉しそうな。
寂しそうな。
父はきっと知っていた。あるいは、予期していたのだ。
ある晩、父は、六振りの刀と共に姿を消した。
幼い私が眠る間に。
そして、今に至っても、その行方は知れない。
父はきっと知っていた。
これから自分の身に起こること。
そして、母を亡くし、父を失い、ひとり取り残される私の未来を。